藤田喬平氏

先日、陶器製の小物入れを求めて駅前の大きな有名食器店へ行きました。

ここは、

　・1F　日用アイテム

　・2F　高級品

　・3F　美を極めた逸品

大事な人への進物に良いものが欲しかったので、迷わず３階へGo。素晴らしいお皿やカップ、花瓶に置き物などが麗しく並べられています。でも、欲しかった陶器製小物入れは見当たりません。食器じゃないから仕方がないのかなぁと思っていたら、鍵付きショーケースに入ったガラス製の小箱が目に入りました。もうね、それを見た瞬間ビビビビっときて、目が釘付けになった。

具体的に言うと、

・立方体のガラス製小箱（掌に乗るサイズ）。金具不使用。

・蓋は茶筒みたいなハメ込み式。チョンと乗せる蓋ではない。

・ガラスがとても分厚くて重い。中の収納スペースは狭め。

・素材のガラスは無色だが透明ではなく、スリガラスみたいに不透明。

・所々に深紅のガラスが不規則に潜んでいる。
・外側に金箔が貼り付けられている。

言葉ではなかなか説明できないけれど、無色で不透明な分厚いガラス、その奥深い部分にうっすら見える暗い血のような深紅の塊。その塊は心臓なのか、分厚いガラスは肉なのか、それを取り巻く金箔は衣装なのか。この小箱は生きている・・・私はそれに命を感じたのよ。命はガラスのようにもろいのか、しかしこのガラスの分厚さをもってすれば生命とは力強いものかも知れない。駅前の食器店で、ひとつの商品にこんなに感動するとは夢にも思っていなかったわ。

そして店員さんに詳細を尋ねると、ケースを開けて良く見せてくれた。値札は５★万円で、作家名は藤田喬平。知らない作家だった。

「この人は世界的なガラス工芸家ですよ」

そう言われても、手のひらサイズの小箱に５万円。ひと月分以上の食費じゃん。

「展示会用に作られたもので、随分と古いものです」

なるほどね。箱は古く、黄ばんだ説明書にシミがあるのはそのせいね。

「当時の値札のままの５０万円にしています。この作家の同じような作品を今買えば100万円以上しますよ」

えぇ～！　ご、ご、ごじゅうまんえん？

５万円と見間違えた私、トホホ。もちろん有名作家の美術工芸品だからお高いのは当然ですが、５０万円のミニ小物入れ、もらった方も腰ぬかしちゃうわ！

「ただ、これは少し難有り商品なのです。内側にスジや小さな傷があります。なので２０万円にお値下げしています」

うーん、難ありですら２０万かぁ・・・。何カ月食べていけるんだろう。と言うか、現実に買える人は食費との比較なんてしないよね。その場は丁寧にお断りし、「この小箱とご縁があれば良いのですが、お高いものなのでどうぞごゆっくりお考え下さいね」と慰められて帰ってきました。

それでもどうしても忘れられないガラス作家、藤田喬平氏。というわけでグーグル検索。

＜藤田 喬平（ふじた きょうへい）＞

1921年4月28日 - 2004年9月18日。

東京府豊多摩郡大久保町（現・東京都新宿区百人町）生まれ。ガラス工芸家。
東京美術学校（現・東京藝術大学）で彫金を学ぶが、途中でガラス工芸に転向。その後、イタリアで学んだ色ガラスと金箔を混ぜた飾筥（かざりばこ）で独自のガラス工芸分野を確立した。
1989年（平成元年）日本芸術院会員

1997年（平成9年）文化功労者

1999年（平成11年）市川市名誉市民

2002年（平成14年）文化勲章受章
宮城県宮城郡松島町（日本三景・松島）に、藤田喬平ガラス美術館がある。

（出典：Wikipedia）

はぁ、本当に有名な巨匠。知らなかった私が無知でごめんなさいね。このガラスの小箱は「飾筥（かざりばこ）」ってシリーズらしい。お写真載せたいけれど、著作権の問題で載せられない。ご興味ある方は「藤田喬平 飾小筥　飛鳥」でググってみて下さいね。色や雰囲気は違うけれども、小箱の感じは掴めると思います。

偶然にもすばらしい作家さんを知ることができ、何だか嬉しいアテクシなのでした。