(討ち死に。つまらない授業がようやく終わったのかな)
親友の消息(その1)
工業高校に入り、上越線で通学し始めてすぐに小出から通っていた男と友達になった。
いくつかの科がある中で、私と同じ機械科。しかも4クラスあり、クラス替えもあったが、3年間を同じクラスで過ごした。
理数系、文系共にバランスよく優秀で、工業高校だと言うのに理数系に弱い、
決定的な弱点を持った私とは大違いの成績だった。
しかし、一点本が好きだと言う事だけは二人の共通点。互いに家が貧しく、
高校に通わせてもらうだけでも有難いような話で、小遣いなども当然不足がち。
それでも、本が読みたい二人は、毎月交代、交互に「文藝春秋」を買って回し読みなんてしていた。
高校生の分際で、通学途中の列車内で「文藝春秋」を呼んでいるなんて、とんでもない早熟な高校生。
今、電車で見かけたら思わず顔を覗き込むことでしょうが。いや、頭を小突いてしまうかな。
性格的にも容貌的にも古武士を思わせるような男だった。ただ、唯一弱点はと言えば、抜群の運動音痴。
運動、スポーツが苦手だった私よりも格段に何も出来なかった。
(続く)