最初にこの映画を観たのは高校生ぐらいの頃だったか
白黒映画
追い詰められた時に マルレーネ・ディートリッヒが見せる猫のような目の動きと 銃殺場面が印象に残った
晩年の彼女は極端に弧を描く細い眉など独特の妖艶美メイクをしていた
この映画でも妖艶だしメイクも役柄上 重要な小道具ですが 1901年生まれの彼女は この映画の撮影時は30才になるやならずやーと言った年頃
晩年のハスキーヴォイスでなし 意外に声が可愛いのです
1915年 怪しげな者達が暗躍していた
間諜X27
偉大なスパイになったろう
ーもし 女でなかったら
雨の夜のようです
美しい女性の脚が映ります
黒いベール付きの帽子被り喪の装いの女(マルレーネ・ディートリッヒ)
会話によれば 3人目の自殺者が出たとか
オーストリアは希望が持てない状況のようです
敗戦続きで
取り分け美しい黒い ベール付き帽子の女は言います 「私は生きるのが怖くない でも死ぬのも平気よ」
ついてきた傘をさした男に女は答えます 「住めば都よ」
ベールごし 艶やかな笑顔
傘さした男性「入っても」
女 招き入れる
男 部屋にあるピアノを弾く
男「男を手玉にとれる女が必要だ」
女「オーストリアを裏切るのね」
男「そうだ」
女「ワインを買ってくる」
男「わたしが お金を払うべきだろうな」
女は警官を連れて帰ってきた
警官「逮捕する スパイは野放しにできない」
女 激しくピアノを弾いている
男 警官に身分証明書を見せる
警官「失礼しました」 男は警官に 女に「10時に来るように言え」
男はオーストリアの諜報機関の人間でした
売国奴の裏切り者のスパイがいて疑う相手はいるものの 証拠が見つからず 国の秘密はダダ漏れ
作戦は失敗続き
多くの兵隊が死んでいました
男に会いにきた女に取り次ぎの若い兵士が尋ねます「お名前は」
女「出来れば答えたくないわ」
若い兵士「お好きに」
部屋まで案内して「いつまでも あなたと歩いていたい」
若い兵士は歩いただけで 女の魅力にまいったのでした
部屋の中には 昨日の男が待っていました
男「あの後 さんざん苦労して君の素姓を突き止めた
コログラン大尉の女房だな」
男はオーストリア帝国秘密諜報部の責任者
女「夫は戦死したのよ」
女の魅力は男を狂わせる
これ以上 兵隊をむざむざ殺されない為に 男を手玉にとれる女を探していたーと男は言いました
スパイになるよう説得します
昨日はわざと身分を偽り 女の愛国心を試したのでした
女「祖国に仕えるのは 喜びよ」
スパイは下劣な職業だし 死が身近な危険もあるーしかし見返りとして 立派な屋敷 使用人 必要な金を与える
女は 恥辱にまみれ生きてきた (食べていくために娼婦として) 名誉ある死に方が出来れば本望よ
そう 答えるのでした
最初の標的は ヒンダウ大佐
艶やかな衣装 仮面の下から覗くのは 赤い唇だけ 女は大佐に近づき家へ招かれます
最初の仕事は成功しました ヒンダウ大佐の自殺という結果は 「彼にも我々にも最良の結果だ」と 彼女を雇った男も満足
彼女はH14と呼ばれるスパイのロシア軍大佐に近づこうとしますがーこれは彼女の命取りにもなります
黒猫を可愛いがり連れ歩く彼女は 苦心の変装も黒猫ゆえに見破られたり
大佐が変装した彼女の正体に気づいたのは 大佐にも彼女への思いがあったのでしょうか
大佐(ヴィクター・マクラグレン)は彼女の荷物から 手書きの楽譜を見つけ それが暗号だと気づきます
その間 脱出手段を考える彼女の瞳が 猫の目のような動き方をします
朝になったら殺されるのなら それまであなたと過ごしたい
彼女は願います
一緒に過ごしたあと 彼女は薬盛り逃走に成功します
逆に今度は大佐が捕まりました
H14
大物逮捕に色めき立ちます
女は10分くれたら落としてみせる
白状させるーと 大佐を連れてこさせ わざと武器を与え 逃走をさせます
真心見せた女を待つものは 祖国への裏切りによる死と 逃げる男は気づいていたでしょうか
裁判で女は弁明一つしません
逃がした理由は たぶん男を愛したから
結局 誰かを死に追いやることになる諜報活動に嫌気もさしていたのでしょう
死の10時間前 女が欲しいと願ったものは
故国でなく男の為に尽くした時の制服が着たいわ
音のきれいなピアノ
彼女はピアノを弾き続けます
やがて刻(とき)が来て迎えの若い兵士に 女「時間なの?」
最初 間諜となることを引き受けた日に 案内をしてくれ「いつまでもあなたと歩いていたい」と言った兵士でした
若い兵士に彼女は言います 「また一緒に歩くのね」
さらに身支度ととのえながら
「鏡をお持ち?」
若い兵士が鞘から抜いて差し出した剣を 鏡代わりに見ながら 髪形 衣装をととのえます
黒猫を抱いて連れて行きますが
銃持つ兵士達待つ場所へ出る前
聖職者に猫を託します
背筋伸ばし一人毅然と歩いて行きます
死に場所へ向かって
若い兵士は目隠しの黒い布を差し出しますが
彼女はその布で若い兵士の目に溢れる涙を拭いてやります
若い兵士は 彼女を殺す為の号令を下すことができません
彼女は「さあ 早く いいのよ」全て受け止める優しい微笑みを浮かべているのに
彼は叫びます 「女を殺したくない
男を殺すのもウンザリだ これは人殺しだ」
変わって上官が号令を下します
銃声轟き 命の消えた彼女の体は崩れ落ちます
若い兵士役はバリー・ノードン
戦争に夫を奪われ 生活手段なく 生きる為に身を売り 更に国家に利用され
祖国の為にという大義名分の人殺しの手伝い
愛する男の命を守る為 自分の命は捨てた
それは 彼女の人間としての意地だったのでしょうか
ただの一人の女性として 愛する男の命を守り 恋に殉じた
マルレーネ・ディートリッヒは蠱惑的な美女から 聖女 天使の表情 優しい母親のような顔まで見せてくれます