監督 池広一夫
原作 長谷川伸
渡世の義理から六ツ田の三蔵(島田竜三)に一太刀は浴びせるもとどめはさせなかった沓掛の出の時次郎(市川雷蔵)
しかし三蔵の美しい妻おきぬ(新珠三千代)に横恋慕する溜田の助五郎(須賀不二男)が三蔵を斬り殺す
義憤に駆られ おきぬと息子の太郎吉(青木しげる)を助ける時次郎
罪悪感もあったのだ
病弱でしかもお腹に子供がいるおきぬ
親切な桔梗屋の女主人のおろく(杉村春子)に留守を頼み 時次郎は足利の庄へと おきぬの実家を訪ね おきぬの窮状を訴えるが
やくざ者と一緒になり出ていった勘当した娘
そう怒りが解けてない父親の頑なな拒否の言葉に 「自分が無事にお産をさせてみせる」と啖呵を切ってしまう時次郎
脚の早い時次郎は 妻の「孫には罪がない」の言葉におきぬの父親が思い返し 「旅のおひと~」と呼んで探した時には もう遠くに姿を消したあとだった
路銀が心許ない時次郎は通りかかった賭場に寄り 勝つ
そこで沓掛の時次郎と正体を言い当てられるも 別人だと言って去るが そこの親分の聖天の権威(稲葉義男)は 飼っている浪人に後を追わせる
時次郎の脚は早く 足が早い浪人も途中で見失うが大体の居場所の見当をつける
堅気になろうとした時次郎は桔梗屋のおろくに相談し 覚えある喉を生かして門付を始めることに
三味線ができるおきぬが伴奏を引き受ける
その留守中に時次郎に目を付けた聖天の子分と件の浪人が太郎吉をさらおうとした
時次郎が戦って子供を取り返し その場は宿場を縄張りとする八丁畷の徳兵衛(志村喬)があずかる
徳兵衛の縄張りを狙う聖天と おきぬが欲しい助五郎が手を結び 徳兵衛に喧嘩を仕掛けてくる
あちらは50名ばかりか 人数足りない徳兵衛はおろくに時次郎に助っ人を頼みたいと話す
堅気になっているのに悪いがーおきぬさんのことでお金も要ろう 10両じゃ足りないだろうがーと
おろくの話に それだけの金があればーと 一度だけのつもりで助っ人を引き受ける
時次郎の活躍で徳兵衛側の勝利 聖天らは逃げていく
ただで逃げない卑怯者の助五郎は 時次郎のいない隙に おきぬをさらっていこうと桔梗屋に押しかけ おろくを縛り上げ押し込める
「舌を噛んで死にます」と抵抗するおきぬだが 鳩尾に当身を入れられ気を失う
戻ってきた時次郎は 桔梗屋の戸の開け方などから不審を抱き 太郎吉を捕まえた助五郎の子分を見る
おきぬは倒れたままだ 身重の体に当身 まして病み上がり
助五郎の油断をついて人質とし 太郎吉を取り返した時次郎は おろくに太郎吉を預けー助五郎の子分らを片付けていく
助五郎も倒した
だが おきぬは死んでしまった
太郎吉を背負った時次郎は 望みをかけて足利の庄へ おきぬの両親を訪ねる
おきぬが死んだことを伝えた
あれからすぐに後悔して時次郎を追いかけたことを おきぬの父親は話す おきぬの母親は太郎吉を抱きしめる
徳兵衛から貰った金などを「太郎吉のために」と渡す時次郎
太郎吉には 堅気になったら会いにくる そう言って外へ出ていき 戸を閉める
その背中へ建物の中から太郎吉が「開けておくれよ」とすがる声
振り切るように足早に去る時次郎
追いかける太郎吉は時次郎の姿を見ようと木に登る
「おじちゃん おじちゃん」と呼ぶ太郎吉の声 時次郎は泣きながら歩いている
「おじちゃん おじちゃん おとうちゃ~~~~~ん」ひときわ大きく響く声
振り返り笑顔になって また歩き出す時次郎
道の脇には緑の田んぼだろうかが広がっている田舎の風景
映画の中で時々 橋幸夫の歌が流れます
映画で共演してから橋幸夫のことを市川雷蔵さんは可愛がっていたということです
拗ねてなったか性分なのかー
時代劇に歌が入るのがお約束のような頃がありました
登場人物が歌ったり 五月みどりさんなどもよく映画の中で歌ってましたっけ
そういう作品がつくられた時代であったと知らなければ ちょっと違和感を持たれる方もいるかもしれません
ただ ちょっとのんきな橋幸夫さんの歌が無ければ あんまり暗いと創り手側は思ったのかもしれません
水もしたたるーというか 市川雷蔵さんが いい男なんです
新珠三千代さんも美しくて
杉村春子さんもいいし いい親分の志村喬さんもいいです
いい時代のきちんとした時代劇です
変にしめっぽくないところも
しつこい愁嘆場が好きな人には不向きの映画かもしれません
沓掛時次郎は幾度も映像化された作品です 詳しい情報はこちらに↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B2%93%E6%8E%9B%E6%99%82%E6%AC%A1%E9%83%8E
一話完結ドラマ 一時間番組
小沢栄太郎が剣の「声」を演じるシリーズ 一本の剣が人々の手に渡り それぞれのドラマを見ていく
今回は武家の娘が「剣」の厄払いを著名な陰陽師の安倍春秋(佐々木高丸)に依頼する
さてその春秋には出来の悪い息子の安平(藤田まこと)がいた
千に三つも占いが当たらないーという評判である
本業の陰陽道よりも道楽の義太夫が得意という始末
生まれる家を間違えたと周囲も当人も思っている
今日も義太夫の稽古の帰り 安平は大道芸人の占い師に手相を判断されるが
それは生まれるべくして生まれたー「ご家名をあげること間違いなし」という皮肉なもの
そこへ下女のおさき(宮本信子)が迎えにくる
下女のおさきだけは 若先生の義太夫を語る時の顔が楽しそうで好きーと安平に好意をむけてくれている
おさきに迫るもー十七代の父親が倒れたと声が聞こえ 父の春秋の病床へ駆け付ける
春秋は武家娘から持ち込まれた妖刀を厄払い中にー刀の妖力にうたれたーうように見えた
春秋は陰陽道の力で自分の寿命を悟っており 安平にあてるように命じる
当たれば18代の譲る 安心して死ねるとも
だが修行もしている安平なのに なあんにも!浮かばない
と かくなるうえは死ぬのみ!とちょうど置かれていたあの妖刀を取り 死のうとするが
ここで剣の声
「誰か止めに来てくれないかと思っている」
その剣に答えがでた 動く月の様子から 安平は父親の寿命を読む
そして間違っていてはと 気になるおさきの将来を占う
と老女となったおさきはたくさんの孫たちに囲まれている
そのおさきの伴侶をとー見ればー安平だった
春秋にみたてた寿命を「あと三日」と伝え それは春秋のものと同じ答えで めでたく安平は安倍家を継ぐ
が 武家娘が厄払いが終ったはずの刀を取りにきた
そこで安平は刀が己の占いの力のもとだと打ち明ける
武家娘は女の口を閉ざしておくにはーと 安平に迫る
その様子を障子越しに聞いていたおさきは お暇とりたいーと出ていく
泣きながら歩くおさきを呼び留めた大道芸人の占い師は 悩みを打ち明けるようにすすめた
おさきから安平の力の秘密を聞いた占い師は 盗みに入り まんまと刀を盗み出す
だが占い師が剣を見ても何も浮かばない
一方 安平の高名を聞きつけた将軍からお鷹狩の日の天気を占うように使者が来た
だが刀がなくなっており安平は何もわからない
中止がよいーと答えを出す安平 ここで狼藉者が出たらーとひそかに願う安平
そして狼藉者~~~の声が上がる
狼藉者の正体は おさき
おさきは大道芸人の占い師が盗んだ刀を 安平の為に取り返し 打ち首覚悟で届けにきたのだ
自分が迂闊にも大切な秘密を話したために 占うことができず若先生が困っている
どうぞ打ち首にーと おさき
いや自分がーとおさきを庇い死を覚悟する安平
と将軍よりの使者は告げた
占いなどは神の領域 これからは陰陽師の看板を下げ普通に生きるようにと あとはよしなにはからおう
かばい合うその方らの姿に免じて
屋敷から陰陽師の看板を外し 義太夫の看板が掲げられる
安平は必要が無くなった刀を武家娘に届けるように命じた
快晴だったが安平は 妻となったおさきに言う
「雨になりそうだから洗濯物は入れておきなさい」
「こんなに良いお天気なのに」と いぶかるおさき
だが間もなく雨が降ってくる
必要なくなった今 ようやく遅咲きの安平の陰陽師としての才能は開いてきたようだ
その皮肉を剣の声が語る
白黒番組です
若き日の藤田まことさん 宮本信子さんの姿もまた楽しいです
今回はちょっとコメデイ仕立てでした