夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

小野不由美著「営繕かるかや怪異譚」 角川書店

2015-07-19 19:14:38 | 本と雑誌
営繕かるかや怪異譚
小野 不由美
KADOKAWA/角川書店




古い城下町の営繕屋で まだ若い男の尾端(おばな)が怪異ある家を暮せる家へ直していく
家の治療をするーというか

表紙絵は「蟲師」にて人気を博した漫画家の漆原友紀さん

「残穢」「鬼談百景」などにも通じる世界を 救いある物語と変えてどうやらシリーズ化しているようです


「奥庭より」
叔母が死んで暮らしていた家を遺産として受け継いだ祥子 その家には開かずの間があり 塞ぐように箪笥が並べてあった
昔 不幸な死に方をした女性がいたらしい
その家の修理など受け持ってきた工務店の主人から相談を受けた尾端は ある提案をする



「屋根裏に」
リフオームしたのに 何かがいるーと言い募る母親 そして子供たちも何かを見ている
封じてあるモノとは何であったのか



「雨の鈴」
雨の日に喪服姿の女を見た それはこの世のモノではなかったようだ
その女が訪れ挨拶する家には間もなく死が訪れるという
つきあたりの家に住む有扶子には逃げようがないのだろうか



「異形のひと」
父親が祖父の仕事を継ぎ 越してきた家で娘は 不思議な老人に悩まされる
その老人は不幸な死に方をしていた
家族にいじめられていた老人は いじめられないように隠れているー



「潮満ちの井戸」
夫が庭にある祠を壊して 井戸をいじった

井戸水で水やりをした草花は枯れていくー
そして何かが 家に入ろうとしているようだ

井戸から何があらわれようとしているのか


「檻の外」
離婚して実家へ戻ってきた女は厄介者扱いで 親戚筋が持つ家で幼い娘と二人暮らしを始めたが

車の故障が続き 車庫のシャッターにも異変が

聞いてはならない声も聞こえ 生きていない子供の姿も見る

その子供はとても不幸な死に方をした

死んでも出られずにいるのか




古い家は何か怖い
自分の育った家ならば 逆に守られている安心感もあるけれど


そうでなければー
気になりだすと とても神経質になる

その家の記憶
それは人間にはわからない


この世とあの世の端境で 超えてこようとするモノ 戻ってこようとするモノ

人ならぬモノ

その何かは 時には
寂しくて寂しくて 生きている誰かを連れていこうとするかもしれない



入りたい 入りたい
帰りたい 帰りたい



おいで・・・おいで・・・



心弱った時など 人は魅入られる つけこまれる ひきずりこまれる


こわくてたまらないのに




解決がつけられるぶん そう怖くはありません

大丈夫

安心して お読みください


黒川博行著「勁草」 徳間書店

2015-07-19 11:18:45 | 本と雑誌
勁草
黒川博行
徳間書店



装画 智内兄助
装幀 多田和博



{勁草(けいそう)「後漢書」 風に強い草 節操・意志の強固なことのたとえ(広辞苑より)
転じて 本作では 人のしぶとさ、したたかさを表した


橋岡は「名簿屋」の高城に雇われていた
名簿屋とはオレオレ詐欺の標的リストを作る裏稼業だ
橋岡は被害者から金を受け取る「受け子」の手配も任されていた
騙し取った金の大半は高城に入る仕組みで、銀行口座には金がうなっているのだ
賭場で借金を作った橋岡と矢代は高城に金の融通を迫るが・・・

一方で大阪府警特殊詐欺犯の刑事たちも捜査に動き出していた


最新犯罪の手口を描き尽くす問題作!}


{特殊詐欺は組織犯罪
細かい役割分担で狙った標的から金を掠める

名簿屋=標的候補の資産、家族構成、家庭環境までも事細かに調べ上げ「騙し」のリストのデータベースを作り上げる

掛け子=カモ候補の「名簿」を元に、電話で言葉巧みに被害者を誘い出す

受け子=被害者から金を受け取る 金の受け渡しは振り込みよりも直接が主流
     捕まる可能性が高いため、 社会の弱者が駆り出されることが多い

道具屋=詐欺に使う飛ばし携帯、架空名義の銀行口座、印鑑などを調達する

ケツ持ち=問題が起こったときのトラブル解決を担う組織暴力団の構成員など}


本のカバー見返しと帯に このような説明もあります


関西弁を駆使する半グレや極道(やくざさん)-それに刑事さんを描けばピカ一の作家の黒川博行氏

今回は おかあさん助けて詐欺ーとも(なんか間抜けでアホなネーミング^^;だと思いますが)呼ばれるようになった オレオレ詐欺に関わる人間達と それを追う刑事たちを描きます


最初にカモ(詐欺の犠牲者)から金を受け取ろうとする犯人側
次に追う刑事側

だいたい交互に描かれつつ 物語は進んでいきます


橋岡が仕事で組まされた相手の矢代はギャンブル狂で 賭場で多額のトイチの借金をし その借金に勝手に橋岡の名前を使い 借金に巻き込んでいました

返済に困った矢代は 彼らを使う高城から金を借りると言って 橋岡を同行させて 突如高城に襲いかかり殺してしまいます
驚く橋岡ですが 無茶苦茶な矢代とどうにか一緒に高城の死体を埋めるのです
それから高城の持つ貯金や株券を現金化することに苦心するのですがー


高城の不在を怪しむ道具屋の女や ケツ持ちの男達の出現で 矢代が更に無茶をしてまた一人殺します

これも埋める橋岡と矢代ですが
現金は中々手に入らず

警察の捜査の手は彼等に迫っていました

殺した男の下の男達に襲われて 逃げ切る橋岡
矢代はつかまりリンチを受けます


その後 警察に救出されますがー
矢代は言います 男達を殺したのは橋岡だ


逃げ続ける橋岡は遂に追い詰められてー




橋岡はずるいところもありますが そこまで悪い人間ではありません
暴走する矢代の為に どんどん悪い坂を転がり落ちてー



事件を追う刑事たち 佐竹と湯川のやりとり 



読みだしたら一気に読み終えたくて 翌日が休日の日を選んで夜中の三時までー読了するまで読み続けました


どっぷりと黒川博行の世界に浸って 読んで下さい


関西弁と どこかおもろい刑事たちを がめついくせにツキのない男達が お嫌いでなければー



そして「騙されない」ようにー気をつけて生きていきましょう♪