レイダンド王ディスタンは前もってベルナーに言われたように とびきり豪華で威厳あるように見える椅子に腰かけ無言のままアクシナティの兵達と皇帝コキンタクを見下ろしている
「他の事を考えていても思惑ありげに睥睨しているように見えたらよろしいのです」
とベルナーは言った
遅れてやって来たカズール・シャンデ将軍は ディスタン王に一礼してからレイダンドの軍人達の端に立つ
少しして姿を現したベルナーはロズモンドと一緒だった
ベルナーもディスタン王に対し優雅な一礼をしアクシナティの兵達へと体の向きを変えると 城中に響く声で話し始めた
「リシュウライ将軍と名乗る魔法使いログサールは死んだ
今 かの領域の掟に従い火葬にしてきたところだ
愚かにもお前達はログサールの術にかかっていたのだ
皇帝コキンタクはログサールに操られ あろうことか皇女ファナクをログサールに与える約束をした
ゆえに賢明なる皇女ファナクは同じ魔法使いであるわたしに光栄にも助力を求められた
父上を正気に戻さんが為に
皇女ファナクだけが・・・ログサールの企みに気付いていた
聡明なる皇女ファナクはレイダンド王の保護の下にある
皇女ファナクはこれからは こちらの大陸と同盟を結び その交換条件としてアクシナティの兵達が無事に国へ帰ることを希望しておられる
反対する者はいるか?!
おらるるならば名乗り出られるが良い」
激昂している状況が分からない馬鹿がいた「誰に向かって物を言うか!アクシナティの皇帝コキンタクこそが物事を決める」
「この状況下でも それを言われるか
アクシナティの兵士達よ わたしには皇帝コキンタクのみが 死せるログサールの術から覚めていないように見えるが・・・・・
いかがか?」
国へ帰りたくない人間など居ない
皇帝コキンタクはログサールにかけられた術が解けていない 正気ではない
この考えは彼等には受け入れやすかった
ベルナーが魔法使いアスタリオンとしての力を言葉に混ぜ込んでいる為もあるのだが
「ならば わたしは皇帝コキンタクがアクシナティで皇后シュランサイに会われるまで 帰りの船の中では幽閉されることを提案する
正気であられない皇帝は如何なる奇妙な命(めい)を出すやもしれず危険だからである
アクシナティの勇敢なる兵士達よ
あなた方は今後 お優しくて眩しいほど美しい皇女ファナク様に従われるように
このレイダンドへの旅で皇女ファナク様は御自分の素晴らしい資質にお目覚めになられた
近い将来ご立派な女皇帝になられるであろう」
声の魔法 その抑揚でかける術
確かに こんな術が使えるなんて狡いかもしれない
見た目良し 声良し そしてその魔法使いとしての力たるや・・・・・
底無しーであるのかもしれない
「うん あれはズルいなー」とリトアールは言った
兄弟達も無言で頷く
その声一つでアクシナティの兵を操り皇帝コキンタクを封じ込めていく魔法使いアスタリオン
「では・・・いま皇女ファナク様がお出ましになる
ファナク様はレイダンドの姫君達とも御姉妹のように仲良くなられた
この絆こそが平和をもたらす
アクシナティの兵士達よ 国への土産に麗しきレイダンドの姫様方のお姿も眺められると良い」
今日ばかりは生きた宝石の如く豪華に着飾ったレイダンドの姫達と皇女ファナク
何しろ「できるだけ思いっきり派手にお願いします」とベルナーから頼まれていた
まだ・・・夜は明けていないが太陽が登ったような眩い美しさ
いっそ美の暴力と呼ぶべきか
姫君達の姿は夢のよう
艶やかに装った姫様方とは逆に濃い紫色の衣装のみの女官長メリサンドも凜として美しい
四人の姫のこれぞお姫様といういでたちは その美しさに慣れた筈の四人の王子達にも爆弾を落とす
アンドールはマルレーネの女王そのものの威厳ある美しさに ロブレインはエルディーヌの美以外の何物でもないその気高い姿に
リトアールはアシュレインの浮世離れした透明感と愛らしさに ダンスタンは珍しく豪華極まりない姿のリザヴェートに見惚れ
それぞれ心を掴まれる
アクシナティの兵達は皇女ファナクのあるべき姿での素晴らしい美しさにひれ伏した
この皇女が リシュウライ将軍の謀(はかりごと)を見抜き 自分達を国に無事に返す為に動いてくれたと言う
一人の兵が叫ぶ「皇女ファナク様の為に! ファナク様 万歳!」
他の兵達も後に続いた
ベルナーはアクシナティの兵達の様子を観察していたが 皇女ファナクの為に兵を選び護衛の任に就ける
皇女ファナクはベルナーのしてくれた事に感動しきりだった
頼りになる人間というものは・・・・
帰国するまでの限られた時間でベルナーの一挙手一投足をファナクは追い続ける
欲しい物が手に入るわけではないことはこの旅で学んだ
優しい眼の金色の髪の魔法使い
素晴らしく美しい声を持つ
まるで王のようなその佇まい
沙漠の砂の一粒までが従いそうな
ベルナー ベルナー
心の中で呼んでみる ベルナー
皇女ファナクが安全に国に帰れるように心を砕いてくれている
ーアクシナティに帰っても・・・きっと一生忘れない
その海のような瞳 どんな黄金よりも美しく輝く髪
「他の事を考えていても思惑ありげに睥睨しているように見えたらよろしいのです」
とベルナーは言った
遅れてやって来たカズール・シャンデ将軍は ディスタン王に一礼してからレイダンドの軍人達の端に立つ
少しして姿を現したベルナーはロズモンドと一緒だった
ベルナーもディスタン王に対し優雅な一礼をしアクシナティの兵達へと体の向きを変えると 城中に響く声で話し始めた
「リシュウライ将軍と名乗る魔法使いログサールは死んだ
今 かの領域の掟に従い火葬にしてきたところだ
愚かにもお前達はログサールの術にかかっていたのだ
皇帝コキンタクはログサールに操られ あろうことか皇女ファナクをログサールに与える約束をした
ゆえに賢明なる皇女ファナクは同じ魔法使いであるわたしに光栄にも助力を求められた
父上を正気に戻さんが為に
皇女ファナクだけが・・・ログサールの企みに気付いていた
聡明なる皇女ファナクはレイダンド王の保護の下にある
皇女ファナクはこれからは こちらの大陸と同盟を結び その交換条件としてアクシナティの兵達が無事に国へ帰ることを希望しておられる
反対する者はいるか?!
おらるるならば名乗り出られるが良い」
激昂している状況が分からない馬鹿がいた「誰に向かって物を言うか!アクシナティの皇帝コキンタクこそが物事を決める」
「この状況下でも それを言われるか
アクシナティの兵士達よ わたしには皇帝コキンタクのみが 死せるログサールの術から覚めていないように見えるが・・・・・
いかがか?」
国へ帰りたくない人間など居ない
皇帝コキンタクはログサールにかけられた術が解けていない 正気ではない
この考えは彼等には受け入れやすかった
ベルナーが魔法使いアスタリオンとしての力を言葉に混ぜ込んでいる為もあるのだが
「ならば わたしは皇帝コキンタクがアクシナティで皇后シュランサイに会われるまで 帰りの船の中では幽閉されることを提案する
正気であられない皇帝は如何なる奇妙な命(めい)を出すやもしれず危険だからである
アクシナティの勇敢なる兵士達よ
あなた方は今後 お優しくて眩しいほど美しい皇女ファナク様に従われるように
このレイダンドへの旅で皇女ファナク様は御自分の素晴らしい資質にお目覚めになられた
近い将来ご立派な女皇帝になられるであろう」
声の魔法 その抑揚でかける術
確かに こんな術が使えるなんて狡いかもしれない
見た目良し 声良し そしてその魔法使いとしての力たるや・・・・・
底無しーであるのかもしれない
「うん あれはズルいなー」とリトアールは言った
兄弟達も無言で頷く
その声一つでアクシナティの兵を操り皇帝コキンタクを封じ込めていく魔法使いアスタリオン
「では・・・いま皇女ファナク様がお出ましになる
ファナク様はレイダンドの姫君達とも御姉妹のように仲良くなられた
この絆こそが平和をもたらす
アクシナティの兵士達よ 国への土産に麗しきレイダンドの姫様方のお姿も眺められると良い」
今日ばかりは生きた宝石の如く豪華に着飾ったレイダンドの姫達と皇女ファナク
何しろ「できるだけ思いっきり派手にお願いします」とベルナーから頼まれていた
まだ・・・夜は明けていないが太陽が登ったような眩い美しさ
いっそ美の暴力と呼ぶべきか
姫君達の姿は夢のよう
艶やかに装った姫様方とは逆に濃い紫色の衣装のみの女官長メリサンドも凜として美しい
四人の姫のこれぞお姫様といういでたちは その美しさに慣れた筈の四人の王子達にも爆弾を落とす
アンドールはマルレーネの女王そのものの威厳ある美しさに ロブレインはエルディーヌの美以外の何物でもないその気高い姿に
リトアールはアシュレインの浮世離れした透明感と愛らしさに ダンスタンは珍しく豪華極まりない姿のリザヴェートに見惚れ
それぞれ心を掴まれる
アクシナティの兵達は皇女ファナクのあるべき姿での素晴らしい美しさにひれ伏した
この皇女が リシュウライ将軍の謀(はかりごと)を見抜き 自分達を国に無事に返す為に動いてくれたと言う
一人の兵が叫ぶ「皇女ファナク様の為に! ファナク様 万歳!」
他の兵達も後に続いた
ベルナーはアクシナティの兵達の様子を観察していたが 皇女ファナクの為に兵を選び護衛の任に就ける
皇女ファナクはベルナーのしてくれた事に感動しきりだった
頼りになる人間というものは・・・・
帰国するまでの限られた時間でベルナーの一挙手一投足をファナクは追い続ける
欲しい物が手に入るわけではないことはこの旅で学んだ
優しい眼の金色の髪の魔法使い
素晴らしく美しい声を持つ
まるで王のようなその佇まい
沙漠の砂の一粒までが従いそうな
ベルナー ベルナー
心の中で呼んでみる ベルナー
皇女ファナクが安全に国に帰れるように心を砕いてくれている
ーアクシナティに帰っても・・・きっと一生忘れない
その海のような瞳 どんな黄金よりも美しく輝く髪