姉二人がそれぞれ求愛を受け入れたことは アシュレインとリザヴェートに焦りを与えた
それによりそれぞれの相手の王子の求愛を受けるとブロディルで暮らすことが決まったから
ー遠いと思っていた現実
ずうっとレイダンドで暮らせるとは思っていなかった
王子様
いつか出会う運命
それはリトーアル様 そうなの?
アクシナティの兵が城に襲撃をかけた日の戦(いくさ)仕度の姿・・・・・
漂っていた血の匂い
戦いに行く前の厳しい表情
夢を追って生きてはいけないことは分かっている
戦いで傷ついた兵士達
私に何ができるだろう
知らない国でー
食事も進まないアシュレインをリトアールが見ている
テーブルの向こう側からアシュレインの視線をとらえると微笑んだ
何が起きても 何があっても大丈夫なのだと心落ち着かせる深い眼差し
ひとかけらの勇気が自分にあるだろうかとアシュレインは自分に問う
ーマルレーネお姉さま エルディーヌお姉さま どうか私にもその勇気を出させて下さいー
アシュレインが食事の席を離れると リトアールが「お部屋まで送らせていただいてもー」と申し出た
従者のゲイルドにはついてこなくていいと声をかけている
「楽しい時間には終わりが来るようです」とリトアールはアシュレインに言った
「兄達がブロディルから戻ってきたら 僕はブロディルに帰らねばなりません」
夜に咲く花の香りが窓から流れてくる
途中に見晴台のある螺旋階段でリトアールはアシュレインを外へと誘った
「僕は夢の王子ではないけれど これから続くブロディルでの生活で 貴女が傍にいてくれたらと望んでいます」
好きだとか愛しているとか そんな甘い告白はリトアールはしなかった
返事も求めずアシュレインを部屋まで送ると身を翻した
静かな夜 長い夜
アシュレインの心は不思議なほどにリトアールで充たされていく
末のリザヴェートはロズモンドを案じていた
皇女ファナクの世話もあり いつも以上に忙しいロズモンド
心に悩みもあるようで ひどく痩せた
ーなのだがーという男言葉もしばらく聞かない
「ロズ・・・・大丈夫なの?」
たまりかねて声をかける
ロズモンドは皇女ファナク用に仕立てた衣装を運んでいた
「はい 」少し翳りある表情でロズモンドが微笑む
「ねえ ロズ・・・ 手が空いたらお話しましょ」
「はい そうですね ご相談もありますし」
ロズモンドのご相談というのは マルレーネ姫とエルディーヌ姫がブロディル国へ旅立つ前に「集まる」というものだった
「それでロズ・・・」ベルナーとはどうなってるのか 尋ねようとしてリザヴェートは思いとどまる
自分だってダンスタンをどう思っているのかーなんて聞かれたくはない
聞かれたくはないがー
「姫様 恋というのは難しいものですね
これが恋とも言い切れないのにー
気がつけば相手のことを考えてしまっている
自分がどう思われているのか それを知るのすらおそろしい
ましてや自分はどうとも思われてもいなかったらーと
おそろしくて切なくてーひどく馬鹿な振舞いをしそうになります
そこにその人がいる
それだけで嬉しいのに
それなのに
自分だけの思いをおしつけているのではないかとか
あれこれ考えて 思い悩んで身動きがとれなくなります
ごく普通の自分でいることすらできなくなってしまって
ー気が付けば あなたへの想いに囚われて閉じ込められて
あなた どうか あなた わたしをこの恋の牢獄から救い出してくださいな
わたしはあなたを想わずにはいられないのですー
まるで この歌のように」
もしも そういう思いがあれば それが恋に落ちているということだとロズモンドは言いたかったのだ
「リザヴェート様 お幸せになって下さいね」
そう言ったロズモンドがひどく儚げで寂しそうで かける言葉をリザヴェートは見つけられなかった
ー優しいロズモンド 自分も何かに苦しんでいるようなのに わたしの迷いに気付いて助けになればと言葉をくれた
メリサンドが厳しく躾けるものだから小さな頃から 年が同じわたしばかりか自分より年上の姉たちのこともいつも大切にー
でもねロズ・・・
わたしはあなたにも幸せになってほしい
幸せでいてほしいのよ
あなたがわたしを大切に思ってくれるように
わたしもあなたが大切だわ
人の心は思うようにならないものだけれどー
リザヴェートは無理にも忙しく動いているようにもみえるロズモンドが案じられてならない
野暮でもなんでも余計なおせっかいがしたくなる
皇女ファナクが乗るアクシナティの船の出航準備にかかりきりに見える魔法使いのアスタリオン
彼に一言言ってやろうとしていたリザヴェートは とうとうディスタン王の部屋から出てきたアスタリオンを捕まえた
「アスタリオン殿 お話があります」
「どうか ベルナーと呼んで下さい」
魔法使いのアスタリオンにして歌うたいのベルナーは答える
「レイダンドの姫としてではなく ロズモンドの友として・・・あなたに言いたいのです
ロズモンドはひどく苦しんでいます
ずっと小さな頃からロズモンドは自分のことなど後回しにして いつもわたしたちの事ばかり
いつもいつも誰かの為に動いています
それは一生懸命に
どれほど傷ついても他人に助けは求めない人間です」
「リザヴェート姫 僕はかの領域の人間です
今度の事が片付けば 戻ると約束して出てきました」
「歯がゆい方ね
それではロズモンドを何とも思ってないと言ってご覧なさい
塔から叫べばいいわ
そうしたら わたしは世界中の男をロズモンドに紹介するから」
らしくなく血相変えて思いつめた表情のリザヴェートの様子を心配し彼女を見守っていたダンスタンは このやりとりを聞いて
新たな一面を見る思いだった
逆上して無茶な事も言っているが・・・・・
ー世界中の男を紹介するって何て脅し文句だ
ベルナーは「有難う」と言葉を残してリザヴェートから離れる
ダンスタンが近寄るとリザヴェートは「悔しいわ」と言った
「ロズモンドは色んなことをしてくれたのに わたしは何もしてあげられない」
「世界中の男を紹介してあげるんだろ」
「何の意味もないわ たった一人の心が得られないのなら」
「知ってるかい ずっと前から僕はあなたのたった一人になりたいと思っている」
それによりそれぞれの相手の王子の求愛を受けるとブロディルで暮らすことが決まったから
ー遠いと思っていた現実
ずうっとレイダンドで暮らせるとは思っていなかった
王子様
いつか出会う運命
それはリトーアル様 そうなの?
アクシナティの兵が城に襲撃をかけた日の戦(いくさ)仕度の姿・・・・・
漂っていた血の匂い
戦いに行く前の厳しい表情
夢を追って生きてはいけないことは分かっている
戦いで傷ついた兵士達
私に何ができるだろう
知らない国でー
食事も進まないアシュレインをリトアールが見ている
テーブルの向こう側からアシュレインの視線をとらえると微笑んだ
何が起きても 何があっても大丈夫なのだと心落ち着かせる深い眼差し
ひとかけらの勇気が自分にあるだろうかとアシュレインは自分に問う
ーマルレーネお姉さま エルディーヌお姉さま どうか私にもその勇気を出させて下さいー
アシュレインが食事の席を離れると リトアールが「お部屋まで送らせていただいてもー」と申し出た
従者のゲイルドにはついてこなくていいと声をかけている
「楽しい時間には終わりが来るようです」とリトアールはアシュレインに言った
「兄達がブロディルから戻ってきたら 僕はブロディルに帰らねばなりません」
夜に咲く花の香りが窓から流れてくる
途中に見晴台のある螺旋階段でリトアールはアシュレインを外へと誘った
「僕は夢の王子ではないけれど これから続くブロディルでの生活で 貴女が傍にいてくれたらと望んでいます」
好きだとか愛しているとか そんな甘い告白はリトアールはしなかった
返事も求めずアシュレインを部屋まで送ると身を翻した
静かな夜 長い夜
アシュレインの心は不思議なほどにリトアールで充たされていく
末のリザヴェートはロズモンドを案じていた
皇女ファナクの世話もあり いつも以上に忙しいロズモンド
心に悩みもあるようで ひどく痩せた
ーなのだがーという男言葉もしばらく聞かない
「ロズ・・・・大丈夫なの?」
たまりかねて声をかける
ロズモンドは皇女ファナク用に仕立てた衣装を運んでいた
「はい 」少し翳りある表情でロズモンドが微笑む
「ねえ ロズ・・・ 手が空いたらお話しましょ」
「はい そうですね ご相談もありますし」
ロズモンドのご相談というのは マルレーネ姫とエルディーヌ姫がブロディル国へ旅立つ前に「集まる」というものだった
「それでロズ・・・」ベルナーとはどうなってるのか 尋ねようとしてリザヴェートは思いとどまる
自分だってダンスタンをどう思っているのかーなんて聞かれたくはない
聞かれたくはないがー
「姫様 恋というのは難しいものですね
これが恋とも言い切れないのにー
気がつけば相手のことを考えてしまっている
自分がどう思われているのか それを知るのすらおそろしい
ましてや自分はどうとも思われてもいなかったらーと
おそろしくて切なくてーひどく馬鹿な振舞いをしそうになります
そこにその人がいる
それだけで嬉しいのに
それなのに
自分だけの思いをおしつけているのではないかとか
あれこれ考えて 思い悩んで身動きがとれなくなります
ごく普通の自分でいることすらできなくなってしまって
ー気が付けば あなたへの想いに囚われて閉じ込められて
あなた どうか あなた わたしをこの恋の牢獄から救い出してくださいな
わたしはあなたを想わずにはいられないのですー
まるで この歌のように」
もしも そういう思いがあれば それが恋に落ちているということだとロズモンドは言いたかったのだ
「リザヴェート様 お幸せになって下さいね」
そう言ったロズモンドがひどく儚げで寂しそうで かける言葉をリザヴェートは見つけられなかった
ー優しいロズモンド 自分も何かに苦しんでいるようなのに わたしの迷いに気付いて助けになればと言葉をくれた
メリサンドが厳しく躾けるものだから小さな頃から 年が同じわたしばかりか自分より年上の姉たちのこともいつも大切にー
でもねロズ・・・
わたしはあなたにも幸せになってほしい
幸せでいてほしいのよ
あなたがわたしを大切に思ってくれるように
わたしもあなたが大切だわ
人の心は思うようにならないものだけれどー
リザヴェートは無理にも忙しく動いているようにもみえるロズモンドが案じられてならない
野暮でもなんでも余計なおせっかいがしたくなる
皇女ファナクが乗るアクシナティの船の出航準備にかかりきりに見える魔法使いのアスタリオン
彼に一言言ってやろうとしていたリザヴェートは とうとうディスタン王の部屋から出てきたアスタリオンを捕まえた
「アスタリオン殿 お話があります」
「どうか ベルナーと呼んで下さい」
魔法使いのアスタリオンにして歌うたいのベルナーは答える
「レイダンドの姫としてではなく ロズモンドの友として・・・あなたに言いたいのです
ロズモンドはひどく苦しんでいます
ずっと小さな頃からロズモンドは自分のことなど後回しにして いつもわたしたちの事ばかり
いつもいつも誰かの為に動いています
それは一生懸命に
どれほど傷ついても他人に助けは求めない人間です」
「リザヴェート姫 僕はかの領域の人間です
今度の事が片付けば 戻ると約束して出てきました」
「歯がゆい方ね
それではロズモンドを何とも思ってないと言ってご覧なさい
塔から叫べばいいわ
そうしたら わたしは世界中の男をロズモンドに紹介するから」
らしくなく血相変えて思いつめた表情のリザヴェートの様子を心配し彼女を見守っていたダンスタンは このやりとりを聞いて
新たな一面を見る思いだった
逆上して無茶な事も言っているが・・・・・
ー世界中の男を紹介するって何て脅し文句だ
ベルナーは「有難う」と言葉を残してリザヴェートから離れる
ダンスタンが近寄るとリザヴェートは「悔しいわ」と言った
「ロズモンドは色んなことをしてくれたのに わたしは何もしてあげられない」
「世界中の男を紹介してあげるんだろ」
「何の意味もないわ たった一人の心が得られないのなら」
「知ってるかい ずっと前から僕はあなたのたった一人になりたいと思っている」