夢見るババアの雑談室

たまに読んだ本や観た映画やドラマの感想も入ります
ほぼ身辺雑記です

「誓い」-遠い約束・過去・4-

2017-09-05 19:07:26 | 自作の小説
その少女の言う事は当たるのでいつかムラでは人々が少女に様々な事柄を尋ねるようになった
争いの多い時代 いつかの焼き討ちで少女の両親(ふたおや)もとうに亡くー
少女はムラのおばばに育てられていた
少女ミユラの噂を聞き付け攫おうとやって来る者達も居て ムラの腕の立つ若者ヤヒコがミユラの護りをしている
ミユラが十歳になった時 都からの迎えが来た
都からではムラには逆らえず・・・・・大女王(おおひめみこ)に仕える者としてミユラはムラを出ていくことになる

ヤヒコは一人ムラを離れ都へ行くミユラを案じた
ミユラを護ることこそ自分の存在価値とまで信じるヤヒコは都でミユラを護る兵になろうとムラを離れ ミユラの後を追った


更に自分を鍛えたヤヒコは望み通り大女王の身辺を守護する兵の一人に選ばれる
大女王は重い病気で神の声が聴けなくなっており ミユラが影巫女(かげみこ)として神の言葉を伝えていた
大女王は噂では絶世の美女とも年経た老婆とも言われており その素顔を見た者はいない

大女王は滅多に人前に出ることは無く 姿を現す時もその身は布で包まれていた
顔も薄布で覆われている

ただその言葉が外れる事は無く 故に人々は大女王を崇める

ミユラが都へ行き七年目 大女王は快癒した
とうに死んでもおかしくない病を退けたのだ

大女王が神の声を聴けるようになれば影巫女は不要だ

大女王はミユラを労(ねぎら)いムラへ戻る許可を与えた


だがー都の男達はそれを良しとはしなかった
大女王の事や都の仕組みが外へ漏れる事を嫌ったのだ
大いなる役目を終えた神の声を聴く者は神へ返す
その命を神に捧げるべきだと

ミユラは最後の役目として山の神に祈りを捧げよと燃える山へ連れて行かれる
これが終わればムラへ帰って良いと・・・・

知らずにミユラの護りの任に就いていたヤヒコの目の前で ミユラは火口の中へ突き落された

「火の神よ あなたが娘を返します」

骨も焼く恐ろしい滾る炎
恐らく娘の命はその熱気で落ちる前に消えていただろう

火の中へ消えるミユラをヤヒコも追った
救いようなどないのに躊躇うことなく飛び込んだ


遠い遠い昔

神の声聴くと言われた穢れなき娘と勇敢な若者は死んだ

その身が此の世を消えた後も魂のみとなったヤヒコは護るべき娘を捜し続けた
その魂を

破片(かけら)でも良い 何処かに残っていないかと
もしや生まれ変わってはいないかと


神の声を聴く力
それは予知能力のようなものであったろうか
ならばミユラは自分の運命は分からなかったのか
その身を襲う残酷な未来は

それとも心の清い者は敢えて自分の未来などは知ろうとしなかったのか


大女王を擁する都もとうに滅んだ
既に遠い時の彼方だ

ミユラとヤヒコと 此の世でのその身は一片の骨すら残らず

ヤヒコのミユラを護らねばという魂の誓いのみが遺った

それは守れなかった誓いの 果たせなかった約束の
悔恨 無念さ

命を賭して

ー何があろうとお前は俺が守るー
次の世でこそは・・・・・
この誓いを果たすのだと
いつか必ず

「情」-遠い約束・過去・3-

2017-09-05 08:29:54 | 自作の小説
夢鬼にとってその娘は最初はただの獲物に過ぎなかった
その娘の護り手との攻守のやりとりが退屈しのぎで楽しくなり その娘に執着することはちょっとした気晴らしとしてちょっかいをかけているものに変わっていった
不本意ながら逆に狙うその娘を護る側に回ることになり

ただの獲物 ただの退屈しのぎのはずが

娘が持つ「魔」に力を与える極上の血
その血ゆえに狙われる娘

時に気紛れのように生まれる魔好みの血を持つ人間

そうした人間は魔に堕ちる者もいる
魔によってばらばらに引き裂かれる者も

娘の成長と共に夢鬼の心は もしも夢鬼に心があったとして・・・変化していき
娘の血への執着は恋に転じる


奪う対象から守護したい存在に

娘の護り手との張り合いも夢鬼の愉しみ

娘との不思議な友情

魂の共鳴

娘の護り手が娘と娘の子の為に全存在を賭けた{護り}を張った時に 夢鬼も又彼等の存在を守り抜く為に術を施した
のみならず娘の子を護るモノもつけた

夢鬼が自分にあると思わぬ「情」が娘と娘の護り手との奇妙な交流の中で生まれていたのだ

夢鬼は夢の中で生き眠る

夢の奥底
夢鬼はどんな夢を視(み)るのだろう