子供の頃からずっとずっと姉が好きだった
ただ一人の姉 姉は誰よりも美しく優しかった
両親が事故死したあとは 姉と古く大きな家に二人きり
他に目を向けようと学生時代は努力もしてみた
コンパにも出た
馬鹿だった
恋人に近い相手はできた
だが この身を委ねることは 全てを託すことは 出来なかった
恋愛しようなど この身体では無理だったのだ
しかも相手の男は姉に目を付けた
姉は 世間慣れしていない姉はー甘く優しい男の言葉を信じ 一途に愛した
姉が幸せなら 良かった
我慢も出来た
そうだ 幸福でいてくれ
姉を幸せにしてくれ
だがー
あの男は 竹丘康三は
たった二年で 姉を捨てた
金が自由にならなかたからだ
私は あの男を信用していなかった
手は打っておいた
他の女と暮らしながら 籍は抜かなかった狡い男
金の切れ目が縁の切れ目 女は康三を捨て他の男へ走ろうとする
プライドだけは高い康三は 自分を捨てようとする女が許せず
心中
いや あれは互いに殺し合った結果
自堕落な男と女の地獄への道行き
そんな康三を 姉は狂った身で恋しがり きょうだいである私を康三と 自分の愛する夫と間違えた
入浴や着替えの世話をする私を
ああ 私は自分に負けた
姉を愛する自分の心に負けた
姉は 私の子供を産んで死んだ
姉に似た女性が その子供を 真を世話し育ててくれている
私は 真と彼女とを守ろう
この私に何があろうと 二人が安心して暮らせるようにしておこう
真には絶対に誰が父親か 悟られてはならない
罪は私にある
まともでは 普通ではないこの身体
私は 生きながら地獄の色に染まっている
加佐矢の母は 養母の晶(あき)は保育園を経営していた
晶は 父親の転勤で 一時 鹿児島で暮らし その時にわたし達を産んだ母マツエと友達になった
一学期だけの同級生
「こぉんな田舎に!ってね びっくりするくらいの大人びた美少女だった」
まだ保母として働いていた晶は 子供を預けにきたマツエと再会する
それからマツエと夫が何かから逃げて故郷を出てきたことが 分かってくる
2人は ひっそりと生きていた
いよいよ危ないとなった時
マツエの夫の真太郎の友人の藤見とに 子供達が分けて託された
一体 何が故郷から追いかけて来ていたのか 両親はソレに殺されたのだと 晶は信じていた
藤見夫妻もソレらに殺され とうとう晶も見つけられー
逃げなさい 生き延びなさい
晶は言った
育ててくれた人は
わたしにとって 母と お母さんと呼べるのは 晶一人
今後の生き方がわからなくなっていた時に目に留まった新聞広告
それは私を藤見の家へ導いた
恐らくわたしのきょうだいに
真 わたしの姉の子供 わたしの甥
わたしは玲(あきら)に 自分の素姓を隠したままでいる
秘密を抱いたままでいる
言えば何かが 悪いことが起きそうな気がするから
晶は わたしの両親のことを その死を話した為に 教えた為に何かに捕らえられた気がする
晶を母を わたしは守りきれなかった
だから玲と真は 守るのだ
敵は分からないけれど
わたしは 戦おう
両親の故郷から来る何かと
運命は その為に わたしを この藤見の家に導いたのだと信じたい
赤ん坊の命と引き換えに姉は死んだ
男の子だった
姉ー その死は私には打撃だった
しかし泣いている暇はない
私には姉の産んだ赤ん坊に対し責任がある
何とかしてー育てなくてはならない
家は古いが部屋数はある
一人で育てる自信はなく 住み込みの人間を雇うことにした
新聞に広告出すと幾つか反応があり 家族が無い相手と会ってみた
やむを得ず仕事で会う人間以外には 出来るだけ会わないようにして 暮らしてきた
それでも姉は 結婚し未亡人になってしまったのだ
待ち合わせ場所に先に来ていた娘はー何処か亡くなった姉に似ていた
姉より意志が強そうか
ひどく思い詰めたような表情で 随分緊張しているらしかった
彼女は 私には他人とは思えなかった
これはひどく危険なことだ
私は出来る限り彼女とは距離を置こうとした
彼女は使用人の立場を崩そうとせず 外出もごくごく必要な物を買いに出る以外は殆どしなかった
そのひどく孤独な生い立ち 住む場所がない理由を知るのは 随分経ってからの事だった
姉の子の真が育つことは 楽しみではあったが 私は愛する姉を失い寂しかったのだ
昭和から平成に年号が変わり 徐々に携帯電話が普及し 時代は大きく変わっていく
コンビニも増えた
少しずつ町内の個人の商店が姿を消していく
子供が大きくなるのは早い
その旺盛な好奇心は つかず離れずの同居人達の距離さえ埋めていく
それは幸運な偶然だったのだろうか
それとも不幸な運命だったのだろうか
時々考える
この身にあった出来事から人と余り会いたくない気分であったが 生きていくためには どうしてもこの仕事は必要だった
住み込みの家政婦なら 必要以上に知らない人間と出会うこともない
家政婦としての経験は無いが 保母と調理師の資格が 雇い主側の目に留まったらしかった
面接に現れたのは肩までの髪を首あたりで緩く縛った人間
一見では男性とも女性とも見分け難かった
どちらともとれる美形なのだ
黒ずくめなので 余計細く見える
「はじめまして 藤見玲(あきら)です
姉が 出産と引き換えに亡くなり
赤ん坊の世話をしてくれる人間が必要となりました
失礼ですが あなたは若く魅力的だ
恋人はおられますか」
約束の場所に座るや まだ店の人間が注文も取りに来ないうちに そう言った
「姉の忘れ形見は 私にとり大切な存在です
だから疎かにされては困るのです
あなたは 何より一番に世話出来るだろうか
無理なら どうか断って下さい」
やっと店の人間が来て注文を聞いていった
わたしは落ち着こうとしていた
この仕事を逃してはならない
わたしに恋人はいない
恋愛をする予定はない
住む場所が 必要だ
「有り難うございます 加佐矢優希と申します はじめまして
恋人はおりませんし 住む場所が出来るのは有り難いです
もしクビにされる時は 暮らす場所など捜さなくてはいけないので その余裕を見ていただけたら 有り難いです
宜しくお願い致します」
「他に何か質問は?」 と藤見玲は尋ね
報酬 休日などの ざっとした取り決め
簡単な食事を済ませると
藤見の家に案内された
自治会など隣近所の付き合いは寄付金で免除して貰っているらしい
「姉は ずっと病気だった」
両親は既に死去
死んだ姉も未亡人であったこと
仕事があるから 1日は赤ん坊に付きっきりでいられないこと
葬儀関係済むまで 赤ん坊は病院に預かって貰っていること
赤ん坊に必要と思われる品を買い揃えながら そうしたことの説明を受けた
大体の準備が終わるとーわたしは寝泊まりしていた宿と駅のコインロッカーに預けていた荷物を取りに行った
何かひどく忙しい思いをしながら 妙に楽しかった
これから始まる生活
やっと根を下ろして安心して暮らせるかもしれない思い
企みというなら わたしにはわたしの事情があり この仕事を必要としていた
誰にも事情がある 藤見玲もそうなのだろう
赤ん坊の名前は 竹丘真(たけおか まこと)と言った
初めて真を抱いた時 わたしは この子の親になろう
そう思った
誰にだって事情はある
それでも人は生きていかなくてはならない
飛びこまないと 道は開けないこともある
それならば
わたしは この藤見の家で生きていこう
許される限りー
韓国は 共同付託の提案を 「一顧の価値もない 」と拒否する声明を発表
ー歴史的 地理的 国際法的に明白な韓国固有の領土であり 領土紛争自体が存在しないー
と韓国政府従来の立場を強調
日本の領有権主張について
「いかなる挑発にも断固対処する」
のだそうだ
盗っ人猛々しいとは このことである
後ろ暗いことがなければ きっちり解決出来る土俵に立てば宜しい
公的場所で 歴史的 地理的 国際法的に 明白にカタをつければいいのだ
第一 よその国の領土を欲しがり
「そこボクの島ァ」と駄々っ子よろしく勝手に騒ぎお馬鹿泥棒パフォーマンスを広げているのはー韓国である
勝手に恥を曝しておいて 「恥をかかせたな」と逆恨みするヤクザ国家
もはや国や国家を名乗るも おこがましい
いや おぞましい
国家としての誇り よく韓流で 誇り高い民族ーとあるらしいが
あれは ドラマだけにツクリモノの世迷い言か(笑)
ロンドン五輪テレビ観戦で 日頃観る番組は録画していた
閉会式後も高校野球と ドラマのまとめレンタル観たりで 普通の番組を観ていなかった
ぼつぼつ観ている
「主に泣いています」某週刊誌の記事によれば 視聴率が悲惨なことになっているらしい
主演女優が大根すぎると ひどい事も書いてある
最初の頃の脚本が余りにドタバタしすぎ悲惨だったせいがあるかと思うのだがー
今夜などは随分よくなってきた
中丸雄一さん演じる赤松に片思いのつね(草刈麻有)の恋心
素直になれない しかも赤松は絶世の美女の泉(菜々緒)に惹かれている
勝てるはずない
泉は妻(安達祐実)ある画家(風間トオル)を愛している
泉にのぼせ流血事件まで起こした寿司屋の跡取り
バタバタしていたキャラも人間味が出てきた
やっとこれから面白くなるんじゃないかと思う
安達祐実の突き抜けた怪演も もっと観たいし
ドラマは途中で化けることがある
筋にどんな仕掛けがあるのか
仕掛けられるのか
片思いは切ない
十代の片恋は純粋だ
精一杯背伸びして大人ぶっている つねの想い
少し見守っていたい気がする
じーじー鳴くのはアブラゼミ
かなかな鳴くのはヒグラシ
それからツクツクボーシ ツクツクボーシと鳴くツクツクボウシ
草の中ではキリギリスが鳴いている
夏 子供の頃は どれも聞き分けられた
今は異界にいるように鳴き声を聞き分けられない
あれは 蝉の声か
奥では鳥も鳴いている
さすがにカラスの声は分かるが
麓に車を置き 半時間ばかし歩いて代々の墓に辿り着く
墓地の中央には泉があるが その水は 墓参り以外に使ってはいけない
決して飲んではいけない
生きながら亡者になってしまうのだと言う
生きながらの亡者が どういうものかは よく分からない
墓地の中の泉は死者のもの
盗んではいけないということか
死者の穢れが生きた人間に入ったら
昼だというのに 夏だというのに寒気がする
ぞくり ぞくり
禁忌
もしおかしたら どうなる
後悔するに違いない好奇心
泉の澄んだ水
それは うまそうだ
招くように光っている
鳥だか虫だかの鳴き声がうるさい
ああ 喉が渇く
ひと口 どんな味がするのか ほんのひと口
ダメだ ひと口では足りない
もう少し
ああ 飲んでも平気じゃないか
普通に冷たく うまいぞ
この水は
ーダメだって言ったのにー
ーあんなに大声で注意したのにー
ー・・・に なってしまうってー
気がつくと 虫が寄ってきていた
泉に映るのは 蟋蟀
人としての形は失われ
ああ そうなのか
そうなってしまうのか
納得し
じきに
人であったことも 忘れた
一階の洋間と和室は仕切りの建具を外せば ひと部屋のようになる
テレビのある和室に長男 洋間に娘
それぞれ自分のパソコンいじって過ごしている
今夜9時から「土曜プレミアム ほんとにあった怖い話 夏の特別編2012」
娘が和室のテレビで「お兄ちゃんと観るのを楽しみにしてる」ってと 長男に言ったら
長男「絶対いやや そうなったら 自分の部屋に閉じこもる」
と言った
長男はホラーが嫌いで お化け屋敷にすら 絶対に入らない
たいてい こちらのテレビで一緒に娘も観ることになるのだけど
ちょっとからかうと長男は面白い反応をしてくれます