自分が指揮者を務めるオーケストラのオーナーの娘でありチェリストでもあるスヨンと婚約し、前途洋々に思えたソンジンに突然降りかかる婚約者スヨンの失踪。当初母であるオーナーは、「自分は結婚に向かない」という動画を残して姿を消した気分屋の娘の行動を気にも留めない。しかし、クレジットカードを使った形跡もなく何日も姿を消している事に次第に胸騒ぎを覚えて未来の婿であるソンジンを呼び出すものの、解決の糸口は見つからない。しかし、スヨンの後釜として若いミジュが選ばれた事で、様々なバランスが少しずつ崩れていくようになる。
オーナーの娘と婚約した事で夢に見た家と指揮者としての未来を手に入れたものの、食堂の息子という自分の出自故、人には言えない違和感に苛まれる日々を過ごしていたソンジンの前に、スヨンの替わりのチェリストとして若いミジュが現れた事からソンジンに少しずつ変化が現れる。他人には明かせなかった自分のコンプレックスを彼女には自然に打ち明け、「シューベルトが好きなのは、曲が悲しければ悲しい程、自分自身は悲しくないと思えるから」という思いを共感しあう二人。
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家の中のあらゆる所にさりげなく設置されている鏡と、重厚な本棚。そしてその本棚をバックにして、ヒドゥンフェイスというタイトルが浮かび上がるオープニング。
スヨンが姿を消した後、ソンジンの心の隙に驚く程自然に入っていくミジュ。スヨンが居なくなった事で、隠されていたソンジンの心の闇が表に現れていく事を描いたドラマだと思っていたのだが、後半に入るとストーリーは全く違った色を見せる。鏡に映った姿は本当の姿の様にも思えるが、左右が逆に見えるのが常。どんなに頑張っても鏡越しに見えるのは本来の姿とは違うものだ。更に鏡越しに見る姿に手出しは出来ない故、歯がゆく、鏡に映った姿はどんどん違った姿に変化していく。
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せっかくこの映画を観る為に渡韓した為、11/21と11/22と2回鑑賞。展開を分かっているのに、2度目の方が何倍も面白く映画見る事が出来た。
1回目はチョ・ヨジョンが演じる婚約者スヨンの行動に翻弄されるスンホン演じるソンジンの姿に、この映画はスンホン演じるソンジンの映画ではなく、チョ・ヨジョン演じる婚約者と彼女の後釜となったパク・ジヒョン演じるミジュの映画だと思って鑑賞。ただ、全てを知った上で再び見ると、人の奥底にある支配感情や、どうやっても打ち消す事の出来ない強い所有欲など、人の心の奥底にある感情を驚く程冷静にしかし熱く見つめた映画であると感じる。ラストシーン前、たった一つの何気ない一つの動作に、自分ではコントロール出来ない感情の強さ、恐ろしさ、残酷さを感じる。スンホン演じるソンジンはその残酷さをどんな風に受け入れているのか・・・なんとも不思議な感情を残す映画だ。
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ミジュを演じたパク・ジヒョン。身体もキレイだが、上気した顔が驚く程生々しい。又、場面によってその生々しさ具合にハッキリした差があるのだ。映画の宣伝としてスンホンと一緒に出演していたラジオ番組で見せていた顔からは全く想像もつかない。