休日の昼頃、タバコを買うために立ち寄ったコンビニで偶然マックに出会った。
マックは以前僕がボーカルを務めていたバンドのメンバーで、ゴツイ体格に無精髭、黒の革ジャン、ダメージジーンズにエンジニアブーツという出で立ちで愛車ハーレーを乗り回しているワイルドな男だ。
普段は無口なのだが、ライブの時になると自慢のレスポールをヘビーな音でかき鳴らし、客席の男達を狂乱の世界へと導いてしまうという男の中の男である。
そんなマックがバイクチームの友人と2台の悪そうなハーレーでバッチリ決め、爆音を響かせならが現れた。
「ユタカさん。お久しぶりッス」
「お、久しぶりだねぇ。元気?」
「ぼちぼちッス。それより、いつになったらバンド再開するんですか?」
「ごめん、ごめん。ここのところDJの方にハマってたからさー」
「だめっすよ!そんなナンパじゃ。もっとヘビーな事しましょうよ」
「だな。そろそろガツンといかないとね」
マックは以前から僕の事をHard Rockのボーカリストとして一目置いてくれているらしく、会う度にバンドへ誘ってくる。
しかしそれを始めるには、僕自身もそのアウトローな世界を突っ走らなければいけなくなる為か、なかなか重い腰が上がらないのだ。
「まぁ、気が向いたらいつでも連絡して下さいよ。ユタカさんとだったら、いつでも集合しますから」
そんな台詞を吐きながら、黒いメットと細めのサングラスを掛け直したマックは、愛車のハーレーにまたがりながら笑みを浮かべ軽く会釈をした。
形はどうあれ慕ってくれる後輩の気持ちは、心から嬉しく思うものだ。
僕はそんな別れ際に、彼に対して挨拶代わりにと何気ない質問を投げかけた。
「また連絡するよ。ところでマック、今からどこ行くの?」
マックは力強いキックでエンジンに火を入れ、軽くアクセルを噴かしながら鋭い目つきで、こう答えた。
「わんわん動物園」
さすがマックだ。実に男らしい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます