自民党の安倍派など主要派閥における政治資金パーティー収入を巡る問題が急速に深刻化している。
岸田首相は14日に安倍派に属する閣僚と副大臣を交代させた。また、安倍派に属する主要な党役員が相次いで辞意を表明している。政局は年末に大きく変動しており、来年の政治シナリオについて再考せざるを得ない状況だと、SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏。
11月14日に岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。松野官房長官の後任には林前外相(岸田派)、西村経産相の後任には斎藤前法相(無派閥)、鈴木総務相の後任には松本前総務相(麻生派)、宮下農相の後任には坂本元地方創生相(森山派)を起用した。4名とも閣僚経験者で、うち3名は岸田内閣での経験者。
安倍派の萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長が相次いで辞表を提出。
安倍派の排除と受け止められても仕方のない展開となった。安倍派は岸田首相に対する不満を強めているだろう。
今後の政局を見る上で、安倍派の帰趨が注目されると、宮前氏。
安倍派が影響力を持つためには、会長などリーダーを据えてまとまる必要がある。
安倍派5人衆の中では、派閥の事務総長を経験していない衆院議員である萩生田氏が会長候補となる可能性がある。
岸田首相は安倍派の主要メンバーを内閣及び党役員から排除したが、政治資金問題は収束していない。
また、岸田派を巡る問題も浮上している。仮に司直の手が岸田派に及ぶような展開となれば、直近まで派閥会長を務めていた岸田首相の責任が問われる可能性はあると、宮前氏。
一方、岸田政権が来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性も十分にあるとも。
ダメージが相対的に軽微であれば、内閣支持率が低迷、もしくは低下傾向を辿っても、政権は意外と安定するかもしれないと。
衆院議員任期満了及び参院議員通常選挙とも2025年で、まだ先の話だ。
政治資金問題に対する世論の関心が高まり、長らく安定していた政党支持率が遂に下がり始めた状況下では、自民党は派閥による権力闘争を当面控えるのではないか。
安倍派がまとまれば、反主流派として影響力を持つことになる。だが、安倍派は現在まさに政治資金問題に直面している最中であり、当面「岸田おろし」のような政局を仕掛ける余裕はないだろうと、宮前氏。
年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性があるが、そこを乗り切れば来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高まる。両極端のシナリオだが、どちらの可能性が高いかは、政治資金問題の展開次第だと。
政治資金問題による、「ポスト岸田」の行方を宮前氏が予測。
安倍派が岸田政権を支える立場から、反主流派へ転じることで、自民党内の勢力は大まかに3つの陣営に分かれる見込みだ。主流派は、岸田派、麻生派、茂木派から構成され、谷垣グループも加わると。
非主流派は二階派、森山派から構成され、菅グループや石破グループも近いと考えられる。反主流派は党内第1派閥の安倍派。
早期の総辞職を免れることができれば、岸田政権は基本的に来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高そうだ。この場合、総裁選には3陣営からそれぞれ候補が出馬するのではないかと。
主流派の候補は内閣支持率次第。
仮に支持率が持ち直しているようであれば、岸田首相が続投を目指して出馬する可能性が高まるが、支持率が低迷、ないしは一段と低下するようであれば、茂木幹事長や林官房長官、上川外相、鈴木財務相の名が上がりそうだと、宮前氏。
政治資金問題が浮上したことで、それを打開するための脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められうる。その場合、初の女性首相の候補として、上川外相が選ばれる可能性がありそうだと。
非主流派の候補として、石破元幹事長や小泉元環境相、麻生派所属ながら河野デジタル相が取り沙汰されている。加えて、菅前首相が出馬する可能性もあると。
反主流派の安倍派は、政治資金問題が直撃したこともあり、独自の候補を出しづらい。主流派の候補を推す可能性も低そうだ。非主流派を推すか否かは、候補次第となる。
菅前首相なら推しやすいが、長らく安倍元首相と対立してきた石破元幹事長などであれば推しづらい。消去法的ともなるが、政策的に親和性のある高市経済安保相を推す可能性が出てくると。
政局が経済政策に与える影響はどうか。
2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。政治情勢は金融政策に基本的に影響しないと、宮前氏。
財政政策は首相次第。
次の首相が主流派から選ばれれば、基本的に財政健全化路線が継続されよう。対して、高市氏の場合は、財政拡張路線へ転じる見通しだ。非主流派の場合は、各候補で政策スタンスの隔たりが大きく、不透明だと、宮前氏。
今後の自民党は、主流派と、非主流派と、反主流派に別れるとの宮前氏。
反主流派がリーダーを選べて団結出来るのか、分裂崩壊するのかで、自民党やその中から選出される総裁・総理が定まってくるのですね。
女性総裁・総理の誕生はあるのでしょうか。
安倍氏が野党に転落後、総裁・総理に復活した様に、無派閥の非主流派で、安倍氏の葬儀の送辞で見直された菅氏の復活があるのでしょうか。
# 冒頭の画像は、岸田首相
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岸田首相は14日に安倍派に属する閣僚と副大臣を交代させた。また、安倍派に属する主要な党役員が相次いで辞意を表明している。政局は年末に大きく変動しており、来年の政治シナリオについて再考せざるを得ない状況だと、SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミストの宮前耕也氏。
絞られる次期首相の条件、「ポスト岸田」の一番手は初の女性首相か 今の混乱を乗り切れば、9月の総裁選まで岸田首相が延命する目も | JBpress (ジェイビープレス) 2023.12.16(土)
・派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。安倍派に属する主要な党役員も相次いで辞意を表明している。
・岸田政権がいつまで続くのか、先を見通すのは難しいが、足もとの混乱を乗り切れば、来年9月の総裁選まで延命する可能性も出てきた。
・「ポスト岸田」には、岸田派、麻生派、茂木派からなる主流派、二階派、森山派、菅グループや石破グループなどの非主流派、安倍派からなる反主流派がそれぞれ候補を出すことになる。その中でも可能性の高い一番手は誰か?
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
自民党の安倍派など主要派閥における政治資金パーティー収入を巡る問題が急速に深刻化している。
岸田首相は14日に安倍派に属する閣僚と副大臣を交代させた。また、安倍派に属する主要な党役員が相次いで辞意を表明している。政局は年末に大きく変動しており、来年の政治シナリオについて再考せざるを得ない状況だ。
従来、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、政治資金問題により、岸田政権がいつまで続くか予想が難しくなっている。一方で、「ポスト岸田」に求められる条件はある程度絞られそうだ。
【安倍派の排除】
<閣僚交代、党役員辞任>
11月14日に岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。松野官房長官の後任には林前外相(岸田派)、西村経産相の後任には斎藤前法相(無派閥)、鈴木総務相の後任には松本前総務相(麻生派)、宮下農相の後任には坂本元地方創生相(森山派)を起用した。4名とも閣僚経験者で、うち3名は岸田内閣での経験者だ。
また、安倍派の萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長が相次いで辞表を提出した。2024年度当初予算が閣議決定されると目される22日までは任にとどまり、その後交代する模様だ。
一時は、党役員や大臣のみならず、副大臣と政務官全ての安倍派メンバーを交代する案が取り沙汰された。結局、副大臣は交代となるも、政務官は留任で落ち着いた。
ただ、13日の国会で立憲民主党の泉代表が「この危機的状況の中で裏金議員の一掃よりも、安倍派一掃を画策しているよう」と指摘したように、安倍派の排除と受け止められても仕方のない展開となった。安倍派は岸田首相に対する不満を強めているだろう。
<安倍派の帰趨が重要に>
今後の政局を見る上で、安倍派の帰趨が注目される。これまで安倍派は岸田政権を支える立場であったが、反主流派とでも呼ぶべき立ち位置に転じそうだ。ただ、反主流派として安倍派が自民党内で影響力を持つか否かは不透明だ。
安倍派が影響力を持つためには、会長などリーダーを据えてまとまる必要がある。今後の政治資金問題の展開次第となるが、いわゆる安倍派5人衆の中では、派閥の事務総長を経験していない衆院議員である萩生田氏が会長候補となる可能性がある。
会長などリーダーを据えることができない状況では、派閥が分裂する危機に直面するか、もしくは分裂せずともまとまらず、総裁選で草刈り場となるかもしれない。
9月の総裁選まで岸田首相は持ち堪える?
【岸田政権の継続性】
<予想が難しいが、意外と持ち堪える可能性>
政治資金問題が深刻化する前までは、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、現段階では、岸田政権がいつまで継続するか予想が難しくなっている。
政治資金問題の展開次第では、年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性が出てきた。岸田首相は安倍派の主要メンバーを内閣及び党役員から排除したが、政治資金問題は収束していない。
岸田派を巡る問題も浮上している。仮に司直の手が岸田派に及ぶような展開となれば、直近まで派閥会長を務めていた岸田首相の責任が問われる可能性はある。司直による捜査等は国会の閉会中に進むとみられる。来年1月に通常国会が開会するまでの約1カ月間、予断を許さない状況だ。
一方で、岸田政権が来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性も十分にある。政治資金問題で岸田派など主流派におけるダメージが相対的に軽微であれば、内閣支持率が低迷、もしくは低下傾向を辿っても、政権は意外と安定するかもしれない。
12月7日の拙稿でも指摘したように、内閣支持率は危険水域に入っており、過去の例を見れば危険水域からの挽回も難しいと目されるが、危険水域にあるからただちに政権退陣に至るとは限らない。
国政選挙を間近に控えていれば、与党内で「○○おろし」のような足を引っ張る動きが生じて総辞職に至る可能性が高まるが、衆院議員任期満了及び参院議員通常選挙とも2025年で、まだ先の話だ。
政治資金問題に対する世論の関心が高まり、長らく安定していた政党支持率が遂に下がり始めた状況下では、自民党は派閥による権力闘争を当面控えるのではないか。
無論、上述の通り、安倍派がまとまれば、反主流派として影響力を持つことになる。だが、安倍派は現在まさに政治資金問題に直面している最中であり、当面「岸田おろし」のような政局を仕掛ける余裕はないだろう。
岸田政権の安定と安倍派の“反乱”
派閥としてまとまったとしても、影響力を持つのは来年秋の総裁公選であろう。仮に安倍派がまとまらなければ、岸田政権の安定につながりやすい。
以上まとめると、政治資金問題が深刻化する前までは、メインシナリオとして予算成立や国賓訪米を終えた来年春から夏に掛けて内閣総辞職に至ると予想していたが、その可能性は低くなっているように思われる。
年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性があるが、そこを乗り切れば来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高まる。両極端のシナリオだが、どちらの可能性が高いかは、政治資金問題の展開次第であり、想定する確率の提示は難しい。
ポスト岸田候補の「一番手」
【「ポスト岸田」の行方】
<3つの陣営に分かれる>
政治資金問題により、「ポスト岸田」の行方はどうなるであろうか。
安倍派が岸田政権を支える立場から、反主流派へ転じることで、自民党内の勢力は大まかに3つの陣営に分かれる見込みだ。主流派は、岸田派、麻生派、茂木派から構成され、谷垣グループも加わる。
非主流派は二階派、森山派から構成され、菅グループや石破グループも近いと考えられる。反主流派は党内第1派閥の安倍派だ。
<脱派閥などが政治テーマに>
早期の総辞職を免れることができれば、岸田政権は基本的に来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高そうだ。この場合、総裁選には3陣営からそれぞれ候補が出馬するのではないか。
主流派の候補は内閣支持率次第だ。仮に支持率が持ち直しているようであれば、岸田首相が続投を目指して出馬する可能性が高まるが、支持率が低迷、ないしは一段と低下するようであれば、別の後継候補が模索されよう。その場合は茂木幹事長や林官房長官、上川外相、鈴木財務相の名が上がりそうだ。
従来型の派閥の論理から言えば、茂木幹事長や林官房長官が有力視されるが、政治資金問題が浮上したことで、それを打開するための脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められうる。初の女性首相の候補として、上川外相が選ばれる可能性がありそうだ。
非主流派の候補として、石破元幹事長や小泉元環境相、麻生派所属ながら河野デジタル相が取り沙汰されている。加えて、菅前首相が出馬する可能性もある。
反主流派の安倍派は、政治資金問題が直撃したこともあり、独自の候補を出しづらい。主流派の候補を推す可能性も低そうだ。非主流派を推すか否かは、候補次第となる。
例えば、菅前首相なら推しやすいが、長らく安倍元首相と対立してきた石破元幹事長などであれば推しづらい。消去法的ともなるが、政策的に親和性のある高市経済安保相を推す可能性が出てくる。
様々な組み合わせが考えられ、最終的に誰が出馬するかを現時点で予想するのは難しい。ただ、脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められやすい中で、女性候補が複数出馬し、総理総裁に選出される可能性は政治資金問題発生前よりも高まっていよう。
政局が経済政策に与える影響
【経済政策への影響は?】
<金融政策、財政>
政局が経済政策に当たる影響はどうか。2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。4月にも日本銀行が物価目標達成と判断し、金融政策運営の正常化を図る可能性が高そうだ。政治情勢は金融政策に基本的に影響しないと予想する。
財政政策は首相次第だ。誰が政権を担うかで変わってこよう。2025年度にはプライマリーバランス黒字化の財政健全化目標の期限を迎える。2024年中に財政健全化目標期限を先延ばしするのか、目標自体をどうするのかを決断する必要があろう。
次の首相が主流派から選ばれれば、基本的に財政健全化路線が継続されよう。対して、高市氏の場合は、財政拡張路線へ転じる見通しだ。非主流派の場合は、各候補で政策スタンスの隔たりが大きく、不透明だ。
-----------------------------------------
【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
・派閥の政治資金パーティーを巡る問題で、岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。安倍派に属する主要な党役員も相次いで辞意を表明している。
・岸田政権がいつまで続くのか、先を見通すのは難しいが、足もとの混乱を乗り切れば、来年9月の総裁選まで延命する可能性も出てきた。
・「ポスト岸田」には、岸田派、麻生派、茂木派からなる主流派、二階派、森山派、菅グループや石破グループなどの非主流派、安倍派からなる反主流派がそれぞれ候補を出すことになる。その中でも可能性の高い一番手は誰か?
(宮前 耕也:SMBC日興証券 日本担当シニアエコノミスト)
自民党の安倍派など主要派閥における政治資金パーティー収入を巡る問題が急速に深刻化している。
岸田首相は14日に安倍派に属する閣僚と副大臣を交代させた。また、安倍派に属する主要な党役員が相次いで辞意を表明している。政局は年末に大きく変動しており、来年の政治シナリオについて再考せざるを得ない状況だ。
従来、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、政治資金問題により、岸田政権がいつまで続くか予想が難しくなっている。一方で、「ポスト岸田」に求められる条件はある程度絞られそうだ。
【安倍派の排除】
<閣僚交代、党役員辞任>
11月14日に岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。松野官房長官の後任には林前外相(岸田派)、西村経産相の後任には斎藤前法相(無派閥)、鈴木総務相の後任には松本前総務相(麻生派)、宮下農相の後任には坂本元地方創生相(森山派)を起用した。4名とも閣僚経験者で、うち3名は岸田内閣での経験者だ。
また、安倍派の萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長が相次いで辞表を提出した。2024年度当初予算が閣議決定されると目される22日までは任にとどまり、その後交代する模様だ。
一時は、党役員や大臣のみならず、副大臣と政務官全ての安倍派メンバーを交代する案が取り沙汰された。結局、副大臣は交代となるも、政務官は留任で落ち着いた。
ただ、13日の国会で立憲民主党の泉代表が「この危機的状況の中で裏金議員の一掃よりも、安倍派一掃を画策しているよう」と指摘したように、安倍派の排除と受け止められても仕方のない展開となった。安倍派は岸田首相に対する不満を強めているだろう。
<安倍派の帰趨が重要に>
今後の政局を見る上で、安倍派の帰趨が注目される。これまで安倍派は岸田政権を支える立場であったが、反主流派とでも呼ぶべき立ち位置に転じそうだ。ただ、反主流派として安倍派が自民党内で影響力を持つか否かは不透明だ。
安倍派が影響力を持つためには、会長などリーダーを据えてまとまる必要がある。今後の政治資金問題の展開次第となるが、いわゆる安倍派5人衆の中では、派閥の事務総長を経験していない衆院議員である萩生田氏が会長候補となる可能性がある。
会長などリーダーを据えることができない状況では、派閥が分裂する危機に直面するか、もしくは分裂せずともまとまらず、総裁選で草刈り場となるかもしれない。
9月の総裁選まで岸田首相は持ち堪える?
【岸田政権の継続性】
<予想が難しいが、意外と持ち堪える可能性>
政治資金問題が深刻化する前までは、来年の春から夏に掛けての内閣総辞職をメインシナリオに考えていた。だが、現段階では、岸田政権がいつまで継続するか予想が難しくなっている。
政治資金問題の展開次第では、年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性が出てきた。岸田首相は安倍派の主要メンバーを内閣及び党役員から排除したが、政治資金問題は収束していない。
岸田派を巡る問題も浮上している。仮に司直の手が岸田派に及ぶような展開となれば、直近まで派閥会長を務めていた岸田首相の責任が問われる可能性はある。司直による捜査等は国会の閉会中に進むとみられる。来年1月に通常国会が開会するまでの約1カ月間、予断を許さない状況だ。
一方で、岸田政権が来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性も十分にある。政治資金問題で岸田派など主流派におけるダメージが相対的に軽微であれば、内閣支持率が低迷、もしくは低下傾向を辿っても、政権は意外と安定するかもしれない。
12月7日の拙稿でも指摘したように、内閣支持率は危険水域に入っており、過去の例を見れば危険水域からの挽回も難しいと目されるが、危険水域にあるからただちに政権退陣に至るとは限らない。
国政選挙を間近に控えていれば、与党内で「○○おろし」のような足を引っ張る動きが生じて総辞職に至る可能性が高まるが、衆院議員任期満了及び参院議員通常選挙とも2025年で、まだ先の話だ。
政治資金問題に対する世論の関心が高まり、長らく安定していた政党支持率が遂に下がり始めた状況下では、自民党は派閥による権力闘争を当面控えるのではないか。
無論、上述の通り、安倍派がまとまれば、反主流派として影響力を持つことになる。だが、安倍派は現在まさに政治資金問題に直面している最中であり、当面「岸田おろし」のような政局を仕掛ける余裕はないだろう。
岸田政権の安定と安倍派の“反乱”
派閥としてまとまったとしても、影響力を持つのは来年秋の総裁公選であろう。仮に安倍派がまとまらなければ、岸田政権の安定につながりやすい。
以上まとめると、政治資金問題が深刻化する前までは、メインシナリオとして予算成立や国賓訪米を終えた来年春から夏に掛けて内閣総辞職に至ると予想していたが、その可能性は低くなっているように思われる。
年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性があるが、そこを乗り切れば来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高まる。両極端のシナリオだが、どちらの可能性が高いかは、政治資金問題の展開次第であり、想定する確率の提示は難しい。
ポスト岸田候補の「一番手」
【「ポスト岸田」の行方】
<3つの陣営に分かれる>
政治資金問題により、「ポスト岸田」の行方はどうなるであろうか。
安倍派が岸田政権を支える立場から、反主流派へ転じることで、自民党内の勢力は大まかに3つの陣営に分かれる見込みだ。主流派は、岸田派、麻生派、茂木派から構成され、谷垣グループも加わる。
非主流派は二階派、森山派から構成され、菅グループや石破グループも近いと考えられる。反主流派は党内第1派閥の安倍派だ。
<脱派閥などが政治テーマに>
早期の総辞職を免れることができれば、岸田政権は基本的に来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高そうだ。この場合、総裁選には3陣営からそれぞれ候補が出馬するのではないか。
主流派の候補は内閣支持率次第だ。仮に支持率が持ち直しているようであれば、岸田首相が続投を目指して出馬する可能性が高まるが、支持率が低迷、ないしは一段と低下するようであれば、別の後継候補が模索されよう。その場合は茂木幹事長や林官房長官、上川外相、鈴木財務相の名が上がりそうだ。
従来型の派閥の論理から言えば、茂木幹事長や林官房長官が有力視されるが、政治資金問題が浮上したことで、それを打開するための脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められうる。初の女性首相の候補として、上川外相が選ばれる可能性がありそうだ。
非主流派の候補として、石破元幹事長や小泉元環境相、麻生派所属ながら河野デジタル相が取り沙汰されている。加えて、菅前首相が出馬する可能性もある。
反主流派の安倍派は、政治資金問題が直撃したこともあり、独自の候補を出しづらい。主流派の候補を推す可能性も低そうだ。非主流派を推すか否かは、候補次第となる。
例えば、菅前首相なら推しやすいが、長らく安倍元首相と対立してきた石破元幹事長などであれば推しづらい。消去法的ともなるが、政策的に親和性のある高市経済安保相を推す可能性が出てくる。
様々な組み合わせが考えられ、最終的に誰が出馬するかを現時点で予想するのは難しい。ただ、脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められやすい中で、女性候補が複数出馬し、総理総裁に選出される可能性は政治資金問題発生前よりも高まっていよう。
政局が経済政策に与える影響
【経済政策への影響は?】
<金融政策、財政>
政局が経済政策に当たる影響はどうか。2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。4月にも日本銀行が物価目標達成と判断し、金融政策運営の正常化を図る可能性が高そうだ。政治情勢は金融政策に基本的に影響しないと予想する。
財政政策は首相次第だ。誰が政権を担うかで変わってこよう。2025年度にはプライマリーバランス黒字化の財政健全化目標の期限を迎える。2024年中に財政健全化目標期限を先延ばしするのか、目標自体をどうするのかを決断する必要があろう。
次の首相が主流派から選ばれれば、基本的に財政健全化路線が継続されよう。対して、高市氏の場合は、財政拡張路線へ転じる見通しだ。非主流派の場合は、各候補で政策スタンスの隔たりが大きく、不透明だ。
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【宮前 耕也(みやまえ こうや)】
SMBC日興証券㈱日本担当シニアエコノミスト
1979年生まれ、大阪府出身。1997年に私立清風南海高等学校を卒業。2002年に東京大学経済学部を卒業後、大阪ガス㈱入社。2006年に財務省へ出向、大臣官房総合政策課調査員として日本経済、財政、エネルギー市場の分析に従事。2008年に野村證券㈱入社、債券アナリスト兼エコノミストとして日本経済、金融政策の分析に従事。2011年にSMBC日興証券㈱入社。エコノミスト、シニア財政アナリスト等を経て現職。
11月14日に岸田首相は安倍派の4閣僚を交代させた。松野官房長官の後任には林前外相(岸田派)、西村経産相の後任には斎藤前法相(無派閥)、鈴木総務相の後任には松本前総務相(麻生派)、宮下農相の後任には坂本元地方創生相(森山派)を起用した。4名とも閣僚経験者で、うち3名は岸田内閣での経験者。
安倍派の萩生田政調会長や高木国対委員長、世耕参院幹事長が相次いで辞表を提出。
安倍派の排除と受け止められても仕方のない展開となった。安倍派は岸田首相に対する不満を強めているだろう。
今後の政局を見る上で、安倍派の帰趨が注目されると、宮前氏。
安倍派が影響力を持つためには、会長などリーダーを据えてまとまる必要がある。
安倍派5人衆の中では、派閥の事務総長を経験していない衆院議員である萩生田氏が会長候補となる可能性がある。
岸田首相は安倍派の主要メンバーを内閣及び党役員から排除したが、政治資金問題は収束していない。
また、岸田派を巡る問題も浮上している。仮に司直の手が岸田派に及ぶような展開となれば、直近まで派閥会長を務めていた岸田首相の責任が問われる可能性はあると、宮前氏。
一方、岸田政権が来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性も十分にあるとも。
ダメージが相対的に軽微であれば、内閣支持率が低迷、もしくは低下傾向を辿っても、政権は意外と安定するかもしれないと。
衆院議員任期満了及び参院議員通常選挙とも2025年で、まだ先の話だ。
政治資金問題に対する世論の関心が高まり、長らく安定していた政党支持率が遂に下がり始めた状況下では、自民党は派閥による権力闘争を当面控えるのではないか。
安倍派がまとまれば、反主流派として影響力を持つことになる。だが、安倍派は現在まさに政治資金問題に直面している最中であり、当面「岸田おろし」のような政局を仕掛ける余裕はないだろうと、宮前氏。
年内を含め、早期に総辞職へ至る可能性があるが、そこを乗り切れば来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高まる。両極端のシナリオだが、どちらの可能性が高いかは、政治資金問題の展開次第だと。
政治資金問題による、「ポスト岸田」の行方を宮前氏が予測。
安倍派が岸田政権を支える立場から、反主流派へ転じることで、自民党内の勢力は大まかに3つの陣営に分かれる見込みだ。主流派は、岸田派、麻生派、茂木派から構成され、谷垣グループも加わると。
非主流派は二階派、森山派から構成され、菅グループや石破グループも近いと考えられる。反主流派は党内第1派閥の安倍派。
早期の総辞職を免れることができれば、岸田政権は基本的に来年9月の自民党総裁選まで持ち堪える可能性が高そうだ。この場合、総裁選には3陣営からそれぞれ候補が出馬するのではないかと。
主流派の候補は内閣支持率次第。
仮に支持率が持ち直しているようであれば、岸田首相が続投を目指して出馬する可能性が高まるが、支持率が低迷、ないしは一段と低下するようであれば、茂木幹事長や林官房長官、上川外相、鈴木財務相の名が上がりそうだと、宮前氏。
政治資金問題が浮上したことで、それを打開するための脱派閥やクリーン、新鮮なイメージを持つ候補が求められうる。その場合、初の女性首相の候補として、上川外相が選ばれる可能性がありそうだと。
非主流派の候補として、石破元幹事長や小泉元環境相、麻生派所属ながら河野デジタル相が取り沙汰されている。加えて、菅前首相が出馬する可能性もあると。
反主流派の安倍派は、政治資金問題が直撃したこともあり、独自の候補を出しづらい。主流派の候補を推す可能性も低そうだ。非主流派を推すか否かは、候補次第となる。
菅前首相なら推しやすいが、長らく安倍元首相と対立してきた石破元幹事長などであれば推しづらい。消去法的ともなるが、政策的に親和性のある高市経済安保相を推す可能性が出てくると。
政局が経済政策に与える影響はどうか。
2024年に任期満了を迎える日本銀行の政策委員はおらず、現行の体制が続く。政治情勢は金融政策に基本的に影響しないと、宮前氏。
財政政策は首相次第。
次の首相が主流派から選ばれれば、基本的に財政健全化路線が継続されよう。対して、高市氏の場合は、財政拡張路線へ転じる見通しだ。非主流派の場合は、各候補で政策スタンスの隔たりが大きく、不透明だと、宮前氏。
今後の自民党は、主流派と、非主流派と、反主流派に別れるとの宮前氏。
反主流派がリーダーを選べて団結出来るのか、分裂崩壊するのかで、自民党やその中から選出される総裁・総理が定まってくるのですね。
女性総裁・総理の誕生はあるのでしょうか。
安倍氏が野党に転落後、総裁・総理に復活した様に、無派閥の非主流派で、安倍氏の葬儀の送辞で見直された菅氏の復活があるのでしょうか。
# 冒頭の画像は、岸田首相
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