土偶は胎児と共に死んだ母体に とり憑いていた悪霊の姿を現した焼き物の人形だと思う。
女性のお産は昭和の前半ごろまでは命がけの一大事だったようで、胎児がおなかに入ったまま母体が死ぬこともあったらしい。
そんな時は胎児がしばらくお腹の中で生きている場合もあるという。そんな事態になった時、縄文時代ならどうしたか。
胎児が生きているかもしれないと考え、死んだ母体のお腹を切り裂いて、取り出すこともあったようだ。その切った跡が、土偶の胸からへそまでの
太い線だという。
残された身内の人たちはどうしたか。当時の人たちの一般的な考え方に従ったか、あるいはシャーマンに聞いたか、それはわからないがシャーマンは
いたようだ。シャーマンは
「悪霊のしわざで死んだのだから、母体がまた生まれかわるためには、とり憑いていた悪霊を退治しなければならない。そのためには土人形を作
って、そして足や手や首をもいで二度と人間界に現れないようにしなさい。」と言ったかもしれない。
だから土偶は必ず女性であり、お腹を切り裂いた跡があり、顔は悪霊で人間の顔をしていない。むしろ恐ろしいくらい異形なのである。しかも数千
年の縄文時代の間に色々な人々が、色々様々な悪霊の顔を創造したのである。しかも必ず壊れている。
地域によっては、もいだ手・足・首は元の土偶にもどらないようにバラバラにして、遠くへ捨てていたかもしれない。それで欠損部分がみつからな
いのだろう。
つまり、若い女性と共にお腹の赤ちゃんが、同時に死ぬという、当時ではこの原因不明の謎に満ちた大きな不幸は、その女性に悪霊がとり憑いていた
からと考えられていたと思う。そして体は死んでも魂は生きており、また生まれかわると信じられていたので、死んだ女性の魂と悪霊が一緒に死の世界
に行ってしまっては困るし、生まれかわる時までいたのでは更に困る。悪霊がまた悪いことをするだろうから、退治しなければならないと考えたと思う。
その退治の方法は、悪霊の土人形を作って、二度と人間界に現れないように、手足首をもぎ取ってバラバラにして土に埋めたというわけである。
母体の墓に土偶が副葬されていたという記事はまだ見たことがないので、母体とは別々に埋められたのだろう。
特別な土偶
縄文のビーナス 仮面の女神
長野県茅野市の尖石(とがりいし)の国宝二体の土偶「縄文のビーナス」と「仮面の女神」 これらは普通の土偶ではなく、全く別の物で、シャーマン
の姿をした土偶と思われる。
女性であるが、お腹に切った跡がない。二体とも仮面をつけている。ビーナスの方もよく見ると、あごから自然に顔になってなく、明らかに仮面をつけ
ているようになっている。この顔は壺などにもよく使われている顔で、目がつりあがっている。そして手足首いずれも壊されてない。
出土した時は完全な形だったという。二体とも足が太くちゃんと立つ。悪霊の土偶は立たない。もう一つ、「仮面の女神」は墓に副葬されていたという。
悪霊ではないからだろう。悪霊の土偶だったら副葬はしないようである。 おなかに切り裂いたあとのある土偶とは全く別として考えなければならないようだ。
長野県泉水遺跡出土の仮面土偶 山梨県後田遺跡出土の仮面土偶
この二体は長野県茅野市の国宝「仮面の女神」と同じで、シャーマンの姿をした土偶だろう。作者が同じかと思うくらい様式がそっくり。
山形県西ノ前遺跡 「縄文の女神」 群馬県東吾妻町 「ハート形土偶」
この二体も共通点がある。女性。お腹に線がある。仮面をつけているようだ。しっかり立つ。壊れてはいるが部品が全部ある。
「縄文の女神」の方は、出土した時はバラバラに壊れていたが、近くで部品が全て見つかったらしい。シャーマンにとり憑いた悪霊
の姿だが、壊れた部品が全て見つかった例かもしれない。