マーク・ラッペ氏が書いた『皮膚 美と健康の最前線』(川口啓明・菊地昌子:訳、大月書店:1999年刊)という本をご紹介しています。今回は第6回目です。
◆皮膚病
この本によると、人間の皮膚病の歴史は、まちがいなく人類の歴史と同じくらいに古いそうです。
西洋医学には古い歴史がありますが、実は、非科学的で時には有害な治療が皮膚病に対して長く行なわれていたそうで、19世紀になってやっと西洋医学は東洋の医学を超え始めたそうです。
20世紀初頭には、皮膚科は西洋医学で最も人気のある最先端の学科となり、皮膚科医は今では想像もつかないくらい尊敬されていたそうです。しかし、強力なX線管を用いた放射線療法や水銀軟膏などの有害な治療はまだ続いていたそうです。
そういえば、私が子どもの頃によく使っていた「赤チン」という消毒薬にも水銀が入っていて、日本では1973年ごろに製造中止になったそうですが、急に見かけなくなったのを不思議に思った記憶があります。
1950年代になると、副腎皮質ホルモンのひとつであるコルチゾンの利用によって、ほとんどどのような皮膚病も表面的には治療できるようになったそうです。(これには、抗生物質の寄与もありそうですね。)
そのため、1980年代以降は、水虫、ニキビ、乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑などが主要な皮膚病となったそうです。
アトピー性皮膚炎は、皮膚病というよりは全身性の免疫系の病気だそうで、患者の8割は家族にも同じ病気の経験者がいて、遺伝的素因があるようです。
また、アトピー性皮膚炎の患者の皮膚には、通常は存在しないはれものの原因菌が生息していて、体の防御機能が大きく破綻しているそうです。
なお、アトピー性皮膚炎に対する通常の治療法では、コルチコステロイド(副腎皮質ホルモン)を繰り返し塗りますが、コルチコステロイドは免疫抑制作用があるので、患部の微生物汚染を悪化させる危険があるそうです。
乾癬(かんせん)は、白色人種に多い皮膚病で、伝染性はなく、命にかかわることもないのですが、とても治りにくい病気だそうです。
症状は、激しいかゆみと、ボロボロとはがれ落ちる鱗屑(りんせつ)を伴う紅斑で、しばしば痛みを伴うそうです。重症の場合は容貌が損なわれることもあり、精神的にもつらい病気だそうです。
次回は、皮膚病の続きで、ニキビについてのお話です。