「戦国自衛隊」 1979年 日本

監督 斉藤光正
出演 千葉真一 中康治 江藤潤 速水亮 にしきのあきら
三浦洋一 かまやつひろし 渡瀬恒彦 小野みゆき
竜雷太 三上真一郎 田中浩 岡田奈々 夏木勲
小池朝雄 薬師丸ひろ子 真田広之
ストーリー
伊庭三尉(千葉真一)を隊長とする21名の自衛隊員は、日本海側で行なわれる大演習に参加するために目的地に向かっているとき“時空連続体の歪み”によって400年前の戦国時代にタイム・スリップしてしまった。
東海には織田信長が勢力を伸ばし、上杉、武田、浅井、朝倉らが覇を競いあい、京へ出て天下を取ろうと機をうかがっていた時代。
成行きから彼等は、のちの上杉謙信となる長尾平三景虎(夏木勲)に加担することになり、近代兵器の威力で勝利をもたらした。
戦いの中で、伊庭と景虎は心が通じあうなにかを感ずる。
隊員のひとり菊池(にしきのあきら)は、恋人和子(岡田奈々)と駈け落ちすることになっていたが戦国時代にスリップ、和子は約束の地で菊池を待ち続けた。
三村(中康治)は農家の娘みわ(小野みゆき)に出会い、恋に落ちていく。
そんな中で、矢野(渡瀬恒彦)は、自分たちだけで天下を取ろうと、加納(河原崎建三)や島田(三上真一郎)を誘って反逆を起こして魚村を襲い、手あたりしだいに女を犯すが、伊庭たちの銃撃のはてに殺される。
近代兵器を味方につけた景虎は、主君小泉越後守(小池朝雄)の卑怯さに我慢がならず、春日山城で斬り殺し、天守閣からヘリコプターにぶら下がって脱出する。
そして戦車が春日山城を陥落させた。
その勢いで景虎と伊庭は京へ攻め上がろうとする。
景虎は浅井・朝倉の連合軍と戦い、伊庭は川中島で武田信玄(田中浩)と戦闘をまじえることになった。
「歴史がなんだっていうんだ。俺たちが歴史を書きかえるんだ」と、自衛隊員と二万人の戦いが始まった。
戦車、ジープ、ヘリを駆使しての互角の勝負、そして目指す武田信玄の首を取ることにも成功するが、その激しい戦いの中で、伊庭たち隊員も死んでいった。
隊員の中で生き残ったのは、農夫となってその時代に生きようと決意した根本(かまやつひろし)だけであった。
寸評
自衛隊が戦国時代にタイムスリップして戦うと言う奇想天外な物語である。
最新兵器を誇る自衛隊が戦国武将と戦えば楽勝の筈だが、そこには自虐的とも思える不安が読み取れる。
自衛隊は専守防衛、戦ったことない集団なのだ。
実践となれば歴戦の戦国武将に勝てるのか、自衛隊はいざとなれば戦えるのか。
そんな疑問を読み解くのは、うがった見方なのだろうか。
制作年度もこの映画には影響が大きかったと思う。
この映画の自衛官たちの姿は、全共闘運動の夢に破れた若者たちの姿にシンクロする。
天下を取ると公言する伊庭三尉などは連合赤軍の生き残りのようだ。
自衛隊の装備で戦うが、彼らがやっている戦いでは、やがて実弾は尽きるし燃料だって尽きる補給のない戦いなのだ。
公開された時は、勝ち誇っているようでも敗北した挫折を味わった世代が世の中に出た時代だった、
だから、続編の「戦国自衛隊1549」は面白くなかった。
理屈など置いて映画を見れば、自衛隊が上杉謙信に味方して戦う内容は、角川映画らしく製作費をつぎ込んだだけあって楽しめる。
千葉真一や真田広之のJACメンバーがスタントマンを使わずに活躍するし、薬師丸ひろが竜雷太と刺し違えるシーンがあったり、真田昌幸に扮した角川春樹が機関銃で撃たれて悶死するシーンや、岡田奈々が相馬の馬追を見ながら菊池が来るのを待ち続けるなど見せ場を随所に盛り込んでいる。
面白いのは武田軍の人海戦術によって自衛隊が敗けてしまう展開だ。
ヘリコプターは低空ホバリングの際に忍び込んできた武田勝頼によって墜落させられる。
戦車は人海戦術で動きを封じられるし、装甲車は落とし穴にはまって動けなくなってしまう。
人海戦術によって敗北するのは、ベトナム戦争における米軍と同じだ。
日本が仮想敵国とする中国などもそれが可能な人口を誇っている。
タイムスリップの決め事として歴史を変えないことがあると思うので、武田軍が史実と違う滅び方をしても歴史を変えたことにはならない。
「自衛隊と戦国武将、どっちが強い?」という子供じみた疑問へトライする作品となっている。