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時限病棟 / 知念実希人

2024年05月15日 | 読んだ小説
                    


目が覚めたら見知らぬ廃病院のクローズドフロアに拉致監禁されていた、男性外科医2人、
女性麻酔医1人、オペ室の看護師2人の計5人。 
5人はクラウンと名乗る謎の人物から、6時間という制限時間内に廃病院から脱出するリアル脱出ゲーム
を強いられ、それと同時に、過去のある事件の真相を究明する事も迫られる。 
そして5人は全員、その事件の重要人物との繋がりがあった。 もし制限時間内に脱出できなかったら、
1階の待合ロビーに仕掛けられているガソリンに引火させ病院ごと大爆発する事になるらしい。

本作は、前作「仮面病棟」と同じ病院が舞台だが、前作の登場人物は出てこない。
最初のページに舞台の廃病院の見取り図があるが、これを見るといろいろとツッコミ所が多過ぎる。
まず病院の1階に受付がなく、事務所もなく、トイレもない。 同じく1階にオペ室があるが、
この病院は透析施設だったので、患者のシャントのオペやバイブトなんかも行われていたと推察するが、
オペが終わってストレッチャーもしくは車椅子で病棟へ戻る時に、ぐるっと待合ロビーから回らないと
エレベーターに乗れないは、不便と云うか不自然な作りだ。

2階は主に透析室だが、この病院は療養型透析施設だったので、多分外来の透析患者はなくて患者更衣室
がないのは分かるが、透析室内に準備室がないし、患者の血液を検査する検査室もない。
他に病院スタッフの休憩室も見当たらない。 

3階4階の病棟の各部屋にトイレがないのにフロアにトイレが1つもないし患者の浴室もない。
前作で65人の入院患者がいたが、患者の食事を作る調理室がどこにもない。(食事は外部からの搬入
だったか?)、大きな病院ではなかったので、デイルームがないのは、それほど不自然ではないか。

前作で、この病院は闇の腎臓移植手術を行っていたが、MRIやCTどころか、まともなレントゲン設備
やエコー室があった後も見当たらない。 とにかくこんな病院、国からの認可が下りるわけないし、
絶対にありえない。 この作家は医師免許を持っているらしいが本当なんだろうか。
医療に素人のモグリなんじゃないのか。

そして5人は、クラウンから与えられる謎を解きながら他のフロアへ行くための鍵を入手していくが、
そんなに難しい所に鍵が隠されている訳でもないので、謎を解いているより、みんなで手分けして探した
方が早いような気がしないでもない。  おそらく多くの読者が、54~54ページの大人しいはずの
ある人物の咄嗟の叫びで、きっとこいつが犯人なのではと目星をつけるだろうけど、その後の展開でも、
その人物だけこの場に拉致される明確な理由がなく、最後の謎解きの前に、この人物以外に犯人は見当た
らないという事になってしまいミステリー的には思慮が足りずちょっと残念な所だ。

そして、犯人の更に上にいる真の黒幕は、同じく廃病院内に居たにも拘わらず、ずっと眠らされていたは
ずと思っていたので除外していて完全に見落としていた。これは作者にまんまと騙されてしまった。 
でも、犯人の目的が過去の事件を究明する事なら、犯人の思惑通りに事が進むとは限らないこんな不確実
で面倒な脱出ゲームなんかをするより、容疑者を拉致して拷問でもして白状させた方が、よっぽど手っ取
り早くて簡単で確実だと思うのだが。


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