会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝旧経営陣5人に3億円賠償命令、不正会計巡り東京地裁(日経より)

東芝旧経営陣5人に3億円賠償命令、不正会計巡り東京地裁

東芝の巨額粉飾事件で旧経営陣が訴えられていた民事裁判の判決が出たという記事。15人が訴えられていましたが、判決では、5人に対し計約3億円の賠償が命じられました。会社からの訴訟で、株主代表訴訟により株主もいっしょに訴えていました。

「判決はインフラ工事での損失引当金の過少計上などを米国会計基準に反する違法な会計処理だったと認定。田中元社長や佐々木則夫元社長ら5人は「違法な処理を認識でき、是正する義務を怠った」などと結論付けた。

東芝が主張していたパソコン事業での利益のかさ上げなどは会計基準違反に当たらないと判断。西田厚聡元社長=17年に死去=らの賠償責任は認めなかった。東芝は同日、「今後の対応は判決内容を精査し、代理人と協議のうえ決定する」とのコメントを出した。」

工事損失の引当の方は、見積りが入るので、不正だと判断するのは難しく、パソコン事業の方は、明らかな利益操作なので、不正という判断は容易なのかと思いましたが、この判決では逆だったようです。

今回の裁判は、会社が元役員を訴えていたものですが、そのほかに、投資家が会社を訴えている裁判がいくつもあり、続いているそうです。

「不正会計問題を巡っては、株価の下落で損害を被ったなどとする株主らが東芝に対して損害賠償を求める民事訴訟も相次ぎ、現在も全国で20件超の訴訟が係争中既に終結した訴訟も含めると、同社への請求額は約1800億円に上る。」

東芝不正会計、会社側の主張一部認めず 東京地裁判決(日経)(記事冒頭のみ)

「東芝が設置した外部委員会が注目していた、部品を売った時点で利益を計上して完成品を買う「バイセル取引」も「米国および日本の会計基準違反に当たらない」とした。」

「テレビ事業での経費計上の先送りも「前提となる事実を認める証拠がない」と退けた。」

パソコン事業での有償支給取引を使った利益操作は、会社の報告書における月次利益推移のグラフで、四半期の決算月に大きな利益が計上され、翌月が大赤字(しかもその振幅がだんだん大きくなっている)というのが示され、なぜこんな異常な状況を見逃したのかと、監査人(新日本)がひどく責められました。しかし、そもそも、判決のとおり、会計基準違反でないのなら、騒ぐ必要はなかった、この利益操作については、監査人も無罪だということになります。

東芝不正会計問題 旧経営陣5人に賠償命じる判決 東京地裁(NHK)

「28日の判決で、東京地方裁判所の朝倉佳秀裁判長は、アメリカの地下鉄に使う電気機器の納入や、高速道路のETCの更新工事、それにアメリカの原子力プラントの建設工事の3件について、会計処理が違法だったと認定しました。

その上で、これらの工事に関して会計処理を認識する立場にあったとして、会社が訴えていたうち、田中久雄 元社長と、佐々木則夫 元副会長、久保誠 元副社長の3人と、株主が訴えていたうち、北村秀夫 元副社長と真崎俊雄 元副社長の2人の、あわせて5人について「違法な会計処理を中止させたり是正させたりする義務を怠った」と責任を認め、総額で3億円余りの支払いを命じました。」

株主側の弁護団のコメント。

「株主側の弁護団は、東芝が訴えの対象としなかった2人について「株主代表訴訟で請求が認められたことに意義がある」とした上で、「東芝による被告の選定をけん制し、監督する株主の役割を果たせた。請求が認められなかった被告に対する対応は、判決を確認して検討したい」とコメントしています。」

金融庁が新日本を処分したときのプレスリリース。

新日本有限責任監査法人による財務書類の虚偽証明に対する課徴金納付命令の決定について(平成28年)(金融庁)

「一般に公正妥当と認められる監査に関する基準及び慣行に照らして相当の注意を怠った事実の主な内容

1パソコン事業について(平成24年3月期及び平成25年3月期)

被審人の監査補助者は、パソコン事業毎四半期末月の製造利益が他月に比べ大きくなっている状況や四半期末月の製造原価が非常に低い水準からマイナスとなる異常値を認識し、また、その理由について、東芝から、部品メーカーからの多額のキャッシュバックがあったためである旨の回答まで受けていたにもかかわらず、監査調書に記載する以上に監査チーム(チーム内に業務執行社員を含む。以下同じ。)内で情報共有をしなかった。

また、被審人の業務執行社員も、監査チーム内において不正の兆候を把握した場合の適切な指示、指導及び監督を十分に行っていなかった結果、必要な監査手続が実施されず、自己の意見を形成するに足る基礎を持たなかった。

(2以下は省略)」

そもそも、判決のいうとおり、会計基準違反でないのなら、これは全く的外れな指摘ということになります。

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