会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

IFRSの影響と中小企業の会計(季刊会計基準より)

財務会計基準機構が発行している季刊「会計基準」の2010年6月号に、企業会計審議会会長の安藤英義・専修大学教授による「IFRSの影響と中小企業の会計」という論説が掲載されていました。

IFRS導入やそれに影響を受けている中小企業会計をめぐる動きを紹介したあとで、混乱の原因は会社法にあると結論付けています。

「中小企業の会計ルールをめぐる今日の混乱の基因は、本来の会社法会計の不在にある。会社法は、金融商品取引法会計との融合を優先し、会計の原則として、「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」(第431条)と定めた。この結果、上場企業等の金融商品取引法適用会社ないし会計監査人設置会社の会計については、法的安定性(確実性)が飛躍的に向上した。しかし、その反面、中小企業の会計については、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」の解釈に委ねられ、法的に不安定(不確実)となってしまった。」

「・・・会社法の下で設立される殆どの株式会社の会計が法的に不安定な状態に置かれているというのは、明らかに問題である。国策を誤っているのではなかろうか。」

先月開催された企業会計審議会の総会でも、IFRS導入にあたって、個別決算をどうするのかが議論されています。ただし、中小企業の議論というよりは、日本経団連に所属しているような大企業の個別決算を念頭に置いた議論のようです。

企業会計審議会総会議事録(6月8日)

議事録を読んでも方向性がはっきりしませんが、審議会の中でも連単分離論(産業界と一部の学者)とそれへの反対論(そもそもIFRSのようなけしからん会計基準にアドプションするのがおかしいという意見(おもに学者)やメガバンクからの委員の連単分離は面倒という意見など)があるようです。

日本の会計は、会計、税法、商法(会社法)のトライアングル体制だといわれてきましたが、それに、上場会社とそうでない会社の区別(あるいは大企業と中小企業の区別)や、連結と個別の区別まで加わって、どうにも収拾がつかなくなりつつあるようです。

安藤教授のリーダーシップに期待したいものです。

(企業会計審議会の方は7月8日(木)に開催されるようです。何か決まるのでしょうか。)

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