日本公認会計士協会は、監査・保証実務委員会研究報告「年金資産に対する監査手続に関する研究報告」の公開草案を、2013年2月1日に公表しました。
昨年公表された「退職給付に関する会計基準」や同適用指針で年金資産の内訳開示が求められることになったことや、年金資産の消失事案等を受けて、年金資産に対する監査手続や残高確認書様式について検討したとのことです。
概ね、以下のような構成となっています。
・本研究報告の目的
・企業年金の運営形態と運用の仕組みの理解
・本研究報告の対象範囲
・年金資産に対する監査手続
・年金資産の内訳開示に係る監査手続
付録として、年金資産に関する残高確認書の様式例が掲げられています。
30ページ以上ある報告書です。「年金資産に対する監査手続」や「年金資産の内訳開示に係る監査手続」が中心となっています。監査人は、退職給付に関する監査手続の再点検が必要になりそうです。
特に、この報告書では「実在性及び評価の妥当性の観点から監査リスクが高いと思われる運用対象」(高監査リスク資産)について問題意識を持っているようです。
「国内外の上場株式や債券など、市場が存在し流動性が高く、評価も容易に可能な資産への投資に対し、いわゆるオルタナティブ投資(代替投資)と呼ばれる資産運用においては、ハイリターンの可能性はあるものの、運用リスクが高く、運用される資産の流動性が低く、客観的な時価による評価が容易でない場合がある。すなわち、ヘッジ・ファンド、非上場株式やそのファンドなど(これらのシングルファンドのみならず、ファンド・オブ・ファンズの場合もある。)を投資対象とし各種デリバティブを活用する等によりリターンの向上が期待できる一方で、投資スキームが複層的になる等複雑で流動性や換金性に乏しく、客観的な時価による評価が容易でなくなり、一般に運用リスクは高くなる等の傾向がある。また、私募投資信託の仕組みを利用するなど、運用対象に係る情報入手が困難な場合も考えられる。」(「本研究報告の対象範囲」より)
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