会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ヤオコー監査人変更問題第4回

会計監査人の変更に関する補足について(PDFファイル)
監査法人の異動に関するお知らせ(PDFファイル)

関連記事:第1回第2回第3回

ヤオコーの2005年3月期の有価証券報告書が提出されました。

そのコーポレート・ガバナンスの状況には以下のように記載されています。

「当社が監査法人エイ・アイ・シーと締結した監査契約に基づく監査証明に係る報酬は10百万円であります。なお、解任した東日本監査法人と締結した監査契約に基づく監査証明に係る報酬は15百万円で、そのうち解任時までに11百万円支払っております。これらの監査報酬は、公認会計士法(昭和23年法律第103号)第2条第1項に規定する業務に基づく報酬であります。それ以外の業務にかかる報酬はありません。」

これによると解任された監査人は、解任時点で4百万円の監査報酬が未払となっていたようです(4百万円=15百万円-11百万円)。その後、支払われたのかはわかりませんが、会社側はあれだけひどく前任監査人を批判していたので、たぶん払っていないのでしょう。会社に会計上の指摘をしたがために、経済的にも(もちろん監査法人として評判が傷ついたという意味でも)大きな損害を被ったことになります。

また、後任監査人は、前任監査人が「会計監査人として、公正を欠き、その職務、責任を果たすことがもはや期待出来ない」(会社のプレスリリースより)という状況で、東証1部上場会社の初度監査を、10百万円という非常に格安の報酬で請け負ったわけです。十分な監査ができたとすれば、きわめて優秀な監査人です。

ところで、有報で監査人の解任についてふれているのは、この箇所だけです。しかし、これでは、監査人交代の事情や、前任監査人の言い分はまったくわかりません。

有報のほかに、監査人が財務局に提出する監査概要書という書類がありますが、これは監査報告書を提出した監査人が提出するので、この場合は、後任の監査人が提出することになります。

つまり、現行の証取法のルール上は、監査人の解任の事実やその背景が一般に開示されることもなく、また、当局がそれらを正式の報告書上で知る方法もないのです。

監査人の交代を非常に軽く見ているルールであるといわざるを得ません。
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