会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

新日本、”正月休み返上”会議の気になる中身 遅すぎる対応に、企業や市場は冷めた視線(東洋経済より)

新日本、”正月休み返上”会議の気になる中身
遅すぎる対応に、企業や市場は冷めた視線


昨年東芝粉飾事件関連で行政処分を受けた新日本監査法人を取り上げた記事。同監査法人では、新年早々、パートナーの会議をやるそうです。

「同社(新日本の監査先のある大手製造業)に入った情報によると、新日本は2015年12月29日、年が明けた2016年1月3日、4日と半ば正月休み返上で、上級社員であるパートナーを集めた会議を開催。12月29日には執行部から今回の事態に関する説明がなされ、さらに1月3日には執行部が策定した再発防止策案が示される。そして、4日までに執行部案を叩き台にした議論が行なわれるようだ。」

同法人のクライアントの反応は...

「メディアで報じられた情報を元に判断するしかない状況が続いていたなかで、金融庁から突然、極めて重い行政処分が下ったことに、監査先の企業では「新日本にはきちんとした説明責任を果たしてもらいたい」という苛立ったムードが広がっている。

ある大手製造企業の役員は新日本の処分がメディアで騒がれるようになったため「取締役会で新日本問題はどうかという話になったとき、担当部門からの報告では新日本の担当者からは説明らしきものはないということだった」と漏らす。

その後、現在に至るまで、ほとんどの監査先企業は新日本から事態の説明を公式にはもちろん、非公式にも受けてはいない。」

「ある東証一部上場の非製造業の関係者は、「監査の品質管理のこと、今回の経緯を見聞きすると、新日本は法人としての危機管理が備わっていたのかどうかと思いたくなる」と、自浄能力を発揮できるかどうか、懐疑的な視線を送っている。」

金融庁の方は、思いどおりに、監査法人の不備内容や処分予定をどんどん事前にリークできるわけですが、処分を受ける側は、こういう処分になるが、こういう対策をとるので大丈夫、というような説明を事前にやるわけにはいかなかっかたのでしょう。しかし、それでも、公認会計士・監査審査会の処分勧告が出たタイミングでは、クライアントへの説明をいっせいにやるべきだったのでしょう。(まったくやっていないということは考えられないのですが)

金融庁の宣伝みたいなことも書いています。

「金融庁が過去に厳格な行政処分を打ち出したケースでは、みずほ銀行の反社会的勢力への融資問題や野村証券のインサイダー事件にみられるように、経営陣の大幅な刷新を伴う経営改革にまで及んでいる。それによって、みずほフィナンシャルグループも野村ホールディングスも再生の糸口を得た。」

こういう比較はほとんど無意味だと思います。金融機関が厳しい処分を受けても、その金融機関から金を借りている企業が、処分を受けたような金融機関とはつきあえないといって、カネをかえすことはありません。預金者も手間をかけてわざわざ預金先を変えることはないでしょう。万一、処分をきっかけに急激な預金引き出しが発生すれば、破綻しないように、日銀がカネを貸してくれます。

他方、監査法人の場合は、処分と並行して、こんな監査法人はつぶれてしまえ的なリークが当局から継続すれば、経営改革うんぬんの前に、実際にクライアント離脱でつぶれてしまう可能性は大いにあります。中央青山の例を見ても、金融庁は、監査法人の一つや二つつぶれても、何の痛痒も感じないというのが実態です。新日本の経営陣も、そんなことは十分わかっているはずですが、さまざまな報道を読む限りでは、対応が後手に回っているようです。

それにしても、いつのまにか、報道のターゲットが、粉飾の張本人である東芝から、新日本にシフトしてしまったようです。
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