三菱UFJ、老舗の粉飾20年も見逃す 金融庁が全銀行の融資点検へ(日経ビジネス配信)
金融庁が、銀行融資の点検作業を急ピッチで進めているという記事。金融庁の審議官にインタビューしています。
「融資の審査手続きが妥当か、経営陣がリスクを認識できているか。メガバンクを入口にして、より高度な体制を構築するための対話を重ねつつ、立ち入り検査も辞さない構えでチェックに臨んでいる。
「日本銀行に預けると金利がマイナスになる環境が長引いたことで、潤沢な資金を取引先に貸し付けてきた銀行の融資規律が緩んでいた蓋然性は相応に高い」。こう説明するのは、金融庁で金融機関のモニタリング責任者を務める屋敷利紀総合政策局審議官だ。
日銀がマイナス金利を解除し、金利には上昇圧力がかかる。低金利下では顕在化しなかった不良債権問題が、再び首をもたげる恐れは無視できない。新型コロナウイルス禍を受けた実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)で債務を過剰に抱えた企業が多数あると見られる中で、貸出先の確保に苦戦する金融機関がルールを度外視した融資をいとわない可能性もある。」
当サイトでも何回か取り上げた堀正工業という専門商社の粉飾(→当サイトの関連記事)がきっかけだそうです(「ある老舗企業が起こした前代未聞の倒産劇」)。
同社について経緯を少し説明しています。金融庁や三菱UFJにも話を聞いています。
「金融庁幹部は「堀正工業のメインバンクが三菱UFJ銀行だったことも、発覚が遅れる要因となった」と見る。邦銀トップが寄り添い続けたという事実が、他の金融機関の審査部門にとって格好の安心材料として機能したことは想像に難くない。多くの金融機関が堀正工業の債務者区分を「正常先」と分類し、無担保・無保証で融資したケースもあったという。
三菱UFJ銀行は問題が発覚した後に、堀正工業から届いた過去の決算書を細かく分析した。適正なデータがない中で作業は難航したが、確かに不自然な数字は見つかった。例えば損益計算書では、利益率が長期にわたって変動していなかった。
三菱UFJ銀行の融資審査関係者は「細かい改ざんを重ねられて気付きにくかったが、メインバンクという関係性の影響で甘く見てしまった側面もある」とうなだれる。抜本的な再発防止策を打ち出すことは難しく、「健全な猜疑(さいぎ)心でチェックする」という従来通りの姿勢を徹底するよう現場に周知するしかなかった。」
「金融庁の屋敷氏は「終了する時期を決めず、継続的に点検していく」と語る。」
銀行を締め付けるのも必要なのかもしれませんが、金融庁は企業開示を監督する立場なのですから、管轄外などといわずに、中小企業の財務情報信頼性確保のための仕組み作りを考えるべきなのでは。例えば、会社登記と同じように、計算書類を登録する制度を設けて(任意でもよい)、銀行はその登録された計算書類を入手した上でなければ融資しないというルールにすれば、堀正工業のように、銀行ごとに異なる決算書を作り提出していたというようなことはなくなるでしょう。追加的コストもわずかでしょう。