会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

ソフトバンク、アリババ株一部売却へ 8700億円相当(ロイターより)

ソフトバンク、アリババ株一部売却へ 8700億円相当

ソフトバンクが、保有するアリババ・グループ・ホールディング株の一部を売却するという記事。

「ソフトバンクグループ(9984.T)は31日、中国の電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディング(BABA.N)株を少なくとも79億ドル相当(約8700億円)を売却すると発表した。売却により調達した資金は、有利子負債の返済や一般事業に充てる。売却後のアリババ株の持ち株比率は約28%となる。

今回の株式売却による連結業績への影響については、確定後に必要に応じて発表するとしている。」

アリババ株売却で約8700億円の売却収入が得られるように読めますが、別の報道によると、債券発行のための担保に供する部分が多くを占めるようです。

ソフトバンク、「アリババ株4%売却」の舞台裏
なぜ、このタイミングで初の売却を行うのか
(東洋経済)

「まずは29億ドル分の売却。このうち20億ドル分はアリババが買い取る。4億ドル分はアリババのパートナー(アリババの取締役指名権の過半を有する28人で構成される)に、5億ドル分は大手政府系ファンド(どの国の政府系ファンドかは非開示)に売却される。売却予定日は、アリババと政府系ファンドが6月10日、パートナーが6月1日から約45日後だ。

次に50億ドル分の担保提供である。担保提供先は某金融機関で、会社名は非開示。50億ドルのアリババ株は3年後に償還を迎える仕組み債の担保として提供する。この金融商品を買った投資家は、償還を迎える3年後に、現金か、アリババ株か、現金とアリババ株の組み合わせか、のいずれかの方法を選ぶことができる。

この償還に備えるため、ソフトバンクは50億ドル分のアリババ株を担保として提供する。ちなみに、この金融商品に人気が殺到すれば、金融機関は追加で10億ドル分のアリババ株の担保提供をソフトバンクに依頼することができる(この権利を金融の専門用語でグリーンシューオプションと言う)。」

「また今回、ソフトバンクは合計79億ドルのキャッシュを手にするが、売却益が立つのは29億ドル分のみ。担保提供した50億ドル分は3年後に売却益が実現する。」

少なくとも50億ドル分については、アリババ株の売却による資金ではなく、債券発行による資金なのではないでしょうか。非常にミスリーディングな発表だと思います。

ただし、50億ドル分についても、オフバランスにして売却収益を計上するスキームなのかもしれません。その場合は、売却ということになりますが、会計処理としてはしっくりこないものがあります。

Alibaba Group との協力に基づく当社保有 Alibaba 株式の一部資金化(79 億米ドル以上)に関するお知らせ(ソフトバンクグループ)(PDF)

ソフトバンクのプレスリリースでは、アリババ株の資金化となっていますが、単なる担保提供であれば、それは、債券発行による収入にすぎないように思われます。

「当社は、100%子会社である SB CHINA HOLDINGS PTE LTD(以下「SB China」)が保有するAlibaba Group Holding Limited(以下「アリババ」)の普通株式の一部を資金化する一連の資金調達取引(以下「本取引」)を実施することについて、下記のとおりお知らせいたします。

具体的には、本取引は、(i)20 億米ドル相当のアリババ普通株式のアリババへの売却、(ii)米国証券法 4(a)(7)条の届出書提出義務免除に基づく、4 億米ドル相当の同社普通株式のアリババのパートナーからなるグループへの売却、および 5 億米ドル相当の同社普通株式の大手政府系ファンドへの売却、(iii) 新設された Mandatory Exchangeable Trust(以下「Trust」)による総額 50 億米ドルの他社株強制転換証券(Mandatory Exchangeable Trust Securities、以下「Trust Securities」)の発行、の 3 つで構成されています。

Trust Securities は、アリババの米国預託株式(以下「アリババ ADS」)に強制転換される証券であり、米国証券法の Rule 144A に基づく適格機関購入者(QIB)に対して販売されます。発行条件は、市場環境およびその他の条件に基づき最終的に決定されます。Trust は、引受会社である Trust Securities の当初買付人に対して、上記に加え、総額 10 億米ドルの Trust Securities を追加で取得する権利(グリーンシューオプション)を付与することを予定しています。」(プレスリリースより)

このMandatory Exchangeable Trustがオフバランスになるかどうかが問題となるのでしょう。

ちなみに、このプレスリリースによると、アリババ株はソフトバンクの海外子会社が保有しているようなので、売却による利益に対して、日本の税金は全くかからないということになりそうです。

【インサイト】ソフトバンクのアリババ株売却、幕開けにすぎない(ブルームバーグ)
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