会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

北越紀州、大王製紙側の調査結果に「疑義あり」と反論 元大王系企業の北越株取得問題で(産経より)

北越紀州、大王製紙側の調査結果に「疑義あり」と反論 元大王系企業の北越株取得問題で

北越紀州製紙が大王製紙の外部調査委員会の報告に対して批判的な見解を表明したという記事。

「北越紀州製紙は28日、大王製紙の元グループ会社による北越紀州株の取得について、大王製紙が外部調査委員会の検証を受け、「取引に問題はなかった」と結論づけた問題で、結論の妥当性・合理性に疑義があるとして、「説明責任を果たすものとは到底いえない」とする見解を発表した。」

大王製紙の外部委員会による検証に係る報告書の公表に対する当社の見解及び対応に関するお知らせ(5月28日)(PDFファイル)

大王製紙が設置した外部委員会には第1と第2があるようです。第1はインサイダー取引疑惑などのガバナンスやコンプライアンスの問題を調査し、第2は内部告発があった会計上の問題などを中心として調査しています。

北越紀州の発表の数日前には大王製紙の記者会見がありました。

大王製紙社長が北越紀州を批判 「企業価値傷つけた」(産経)

「大王製紙の佐光正義社長は24日、資本提携している北越紀州製紙が、大王の元グループ会社が北越紀州の株式約2%を取得したことに関して外部委員会による調査を求めたことに対し「企業価値を傷つけ、誠に遺憾だ」と強い口調で批判した。」

大王製紙が公表した報告書

外部委員会による検証に係る報告書の受領に関するお知らせ(5月13日)(PDFファイル)

内部告発の内容も明らかにされています。告発自体は不審に思うのももっともだとという個所もあります。報告書も一部は不備を認めています(在庫評価損の計上時期、海外子会社の監査が未了だったこと(1年遅れで限定付適正)、販促費の処理が厳密な発生主義でなかったことなど)。ただ、全体としては、具体性に欠ける印象があり、また、不正というより実務上やむを得なかったのではないかと思われる部分もあります。

「一般に、品質低下、又は陳腐化による会計上の棚卸資産評価損の計上時期の決定は、極めて難しい問題ではあるが、当委員会は、平成24年3月に約25百万円、5月に約66百万円、7月に約32百万円を処理する必要があったと判断する。」(報告書より)

(タイ現地法人について)「平成23年12月期決算においては、証憑の整理が不十分であったため、会計監査人が必要とする証憑を適時に提出することができず、平成24年4月の株主総会では、監査未了の決算書が承認された。しかし、監査に必要とされる証憑が不足もしくは紛失されていたわけではなく、平成24年12月までに監査は終了し、限定付ではあるが適正意見を得ている。」(同上)

(タイ現地法人について)「平成24年12月期中までは告発者の指摘通りK社から不定期にくるインボイスによる支払を実施した都度、費用として計上していた。しかし、それは、販促費の請求は小売店の都合により不定期に行われるという商慣習によるもので、決算調整又は債務隠しを疑わせるものではなかった。また、平成24年12月末より発生主義にて費用計上しているため、平成24年12月期の年度決算では改善されている。」(同上)

他方、外部委員会による調査結果も、要約版ということもあるのかもしれませんが、根拠を明確に示さずに結論だけを書いている箇所が多く、どこまで信頼できるのかは判断がつきません。

なお、委員は公認会計士・税理士3名です。

第1外部委員会による検証に係る報告書の受領に関するお知らせ(5月20日)(PDFファイル)

こちらの委員は弁護士3名、公認会計士1名(宇澤亜弓氏)です。

同姓同名の別人でなければこの方ですが・・・

不正会計―早期発見の視点と実務対応不正会計―早期発見の視点と実務対応
宇澤 亜弓

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どうせなら、会計問題も宇澤氏に加わってもらい、厳しく調査してもらえば、報告書の信頼性も高まったことでしょう。
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