会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

司法試験合格者「1500人程度を維持」 政府案(朝日より)

司法試験合格者「1500人程度を維持」 政府案

政府が今後の司法試験の合格者を「1500人程度」とする案を「法曹養成制度改革顧問会議」に提出したという記事。

「法曹人口をめぐっては、政府は2002年、司法試験の合格者を「年間3千人」とする目標を掲げ、04年度に法科大学院を新設した。だが、修了者の司法試験の合格率が低迷するなどしたため、13年に目標を撤回し、法曹人口のあり方の検討を続けていた。」

「法科大学院制度が始まる前の合格者は1500人程度だった」そうですから、振出しに戻った感じです。

法曹養成制度改革顧問会議(内閣官房)

法科大学院、強制閉校も 政府案、司法試験の低迷校を(朝日)

こちらも「法曹養成制度改革顧問会議」に提出された政府案です。

「司法試験の合格率が低迷している法科大学院について、政府は28日、今後は強制的に閉校させることも含めて対応する方針を示した。法曹界を志願する人の減少を食い止めるためには、各校の教育レベルの上昇も不可欠と判断した。すでに文部科学省が低迷校への補助金削減を決め、自主的に募集停止する大学院が相次いでいるが、いっそうの淘汰(とうた)が進むとみられる。」

データで検証!「弁護士は食えない」のウソ 「就職難」と「貧困化」は裏付けられるのか(東洋経済)

一方、こちらは、司法試験合格者の就職難は言われているほどひどくはないという記事です。

ところで、司法試験の合格者数をどうするかというのは、専門職への人材供給の話ということになり、会計士の方の人材供給はどうなのかということにもつながります。

先週、日本公認会計士協会から、「監査品質の枠組み」という報告書が公表され、その中で「人材」についてもふれています。

「監査は、事業、財務報告及び監査に関する知識に加え、的確な判断力と探求心を必要とする知的活動である。監査には、専門知識と適切な倫理観の両方が不可欠である。

監査人としての資質を備えた人材の確保は、監査品質にとって極めて重要であり、そのような人材を誘致するためには、監査が魅力ある職業として社会において認知されている必要がある。監査専門職の魅力は、監査専門職に対する社会の信頼や地位などの要因のほか、より直接的には相対的な給与水準ワークライフバランスなどの就業環境によっても影響を受ける。 」(108項)

人材を需要する業界側の条件を挙げていますが、人材を供給する側についてはふれていないようです。

さらに、この報告書のもととなったIAASBの“A Framework for Audit Quality”をみてみると、日本の「枠組み」には書いていない人材供給側の話にもふれています(5.9 Attracting Talent)。

While the profession endeavors to equip auditors with the necessary competence, the effectiveness of this will inevitably be influenced by the caliber of recruits. (パラグラフ130の一部)(監査プロフェッションは必要なコンピテンスを監査人に備えるよう努力しているが、それが有効であるかは、必然的に、志願者の質に影響される。)

In many countries university graduates are an important source of recruits and many of these will have specialized in accounting and business. This background can provide both relevant knowledge and appropriate ethical attitudes. (パラグラフ131)(多くの国では、大学卒業者が志願者の重要な供給源となっており、それらの多くは会計やビジネスを専攻している。このようなバックグラウンドがあることによって、関連する知識と適切な倫理的態度が得られる。)

If there is a shortage of suitably educated potential recruits, it can be difficult to recruit the right quality of candidate. (パラグラフ132の一部)(適切に教育を受けた潜在的な志願者が不足する場合には、適切な質を有する候補者を確保することが難しくなるおそれがある。)

日本の「枠組み」でなぜ省略されたのかはよくわかりません。たぶん深い意味はないのでしょう。あるいは、つい最近まで試験合格者の就職難が問題になっていた状況で、質的・量的に十分な志願者を供給してくれということは書きにくかったのかもしれません。しかし、中長期的には重要な課題のように思われます。(もちろん、「枠組み」でふれていなくても、協会はいろいろやっているようです。)

当サイトの関連記事(「監査品質の枠組み」公表について)
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