会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

複雑でない企業の財務諸表監査に関する国際監査基準の公開草案の翻訳の公表(日本公認会計士協会)

複雑でない企業の財務諸表監査に関する国際監査基準の公開草案の翻訳の公表について

日本公認会計士協会は、国際監査・保証基準審議会(IAASB)「公開草案 複雑でない企業の財務諸表監査に関する国際監査基準」(2021年7月23日公表)の翻訳を公表しました。

(以下、LCE:複雑でない企業)

複雑でない企業の監査のための自己完結型の監査基準とのことです。他の基準を参照しなくてもよいということですが、他の基準を継ぎ足して使うこともできません。

「IAASBは、LCEのための ISA(案)を、独立した「自己完結型の」基準として開発した。基準案は、ISA とは別個のものであり、その適用において ISA の要求事項や適用指針を直接参照する必要性は意図されていない。これは、基準案の規範性(パート A)で示されている、LCE のための ISA(案)の設計上考慮されていない状況がある場合、当該状況に対応するために、関連する ISAの要求事項を LCEのための ISA(案)に「継ぎ足して」使用することはできないということである。」(14ページ)

保証水準は普通の監査と同じです。

「IAASB の利害関係者からは、別個の基準には、合理的な保証に基づく意見につながる要求事項が含まれるべきであり、この意見は監査意見の形を取るべきであるとの強い推奨があった。したがって、IAASB は、ISA 監査において既に使用されている概念や原則を用いて(ISA は既に監査人が合理的な保証水準を得られるように設計されている)、合理的な保証に基づく意見を提供する別個の監査基準を開発することをその目的としている。」(15ページ)

この監査基準を使えるかどうかを判定するフローチャート(18ページ)。



「関連する各国・地域の取組みの要約」(50~51ページ)という付録を見ると、ベルギー、フランス、ドイツ、インドなどで、別個の監査基準を使用中であったり、案を作成中あるいは公開中だそうです。

それ以外にも、監査基準の柔軟適用のための指針や、小規模監査向けのITツールを作成している国があるようです。

「別個の基準の策定に加えて、世界各国は、ISA の柔軟な適用に関する国別ガイダンスを作成したり(オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、ハンガリー、イタリア、スロバキア共和国、スイスなど)、また、小規模企業又は複雑でない企業の監査のために国がサポートするIT ツールを作成したりしている(米国、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、ラトビア、オランダ、ノルウェー、スイスなど)。」

基準案自体は、簡便なものとはいえ、100ページ超あります。

以下のような構成となっています(目次(56~58ページ)より)。

趣意書 ‒ LCE のためのISA(案)

A. 複雑でない企業の財務諸表監査に関する ISA(案)の規範性

1. 基本概念、一般原則及び包括的規定

2. 監査証拠及び文書化

3. 監査業務の品質マネジメント

4. 監査契約の新規の締結又は更新及び初年度監査

5. 計画

6. リスクの識別及び評価

7. 評価された重要な虚偽表示リスクへの対応

8. 結論

9. 意見の形成及び報告

<付録>
付録 1 - 用語集
付録 2 - 重要な虚偽表示リスクの識別と評価(パート 6)
付録 3 - 不正リスク要因
付録 4 - アサーション
付録 5 - 監査契約書の例
付録 6 - 経営者確認書の例

日本の場合は、監査の裾野が狭く、法定監査は、多くが相当規模の大きな会社が対象なので、簡便な基準といっても、ニーズはあまりないのかもしれません。また、金融庁の監査基準があるので、完全な自己完結にはならないでしょう。

日本の協会は、どういうふうに考えているのでしょうか。
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