東電の資産査定を行う政府の「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が、報告書を提出したという記事。
賠償費用などは以下のとおり。賠償金は2年分しかみていません。
「賠償額について報告書は、農林漁業や観光業などへの風評被害など一過性の損害を2兆6184億円、避難や営業損害など事故収束までかかる損害額を初年度1兆246億円、2年度目8972億円と推計した。これだけで4.5兆円に上るが、営業損害などが長期化したり、除染などの費用負担が上乗せされれば、さらに増える。また、1~4号機の廃炉費用を1兆1500億円と見積もった。」
下記「・・・概要」の注書によれば、「本試算はあくまでマクロ推計値であり、東電の会計上の引当の要否とは何ら無関係に検討がなされているもの」だそうです。会計上は、保守的にもっと厳しく見るべきでしょう。
報告書はこちら
↓
東京電力に関する経営・財務調査委員会報告の概要(PDFファイル)
委員会報告(PDFファイル)
報告書の84ページに東電純資産の調整表(2011年3月末)が示されています。含み損益を調整後、資産超過となっています。
ただし、そのあとに注意書きが書かれています。
「1) 支援機構設立後、東電が実施する損害賠償債務の支払に充てるための資金は、支援機構法第 41 条第 1 項第 1 号の支援機構が東電に対して資金交付により援助を行うことで、同額の収益認識が行われるとの前提を置いた上で、調整後連結純資産には、既に発生した原子力損害賠償費(第 1 四半期3,977 億円)の他今後計上すべき原子力損害賠償引当金についても反映をさせない前提で作成している。
2) 支援機構法第 52 条第 1 項に基づく特別負担金額は、東電の今後の収支の状況に照らし、電気の安定供給等に係る事業の円滑な運営の確保に支障が生じない限度において、主務省令で定める基準に基づき定められることとされているため、会計上は、将来にわたって東電が負担する費用と位置づけられることから、上記実態純資産の把握にあたっては考慮していない。」
まず、1)の前提は、2011年9月現在では、そもそも支援機構への支援の申請すら行われていないので、資金の交付について収益認識することは会計上できないと思われます。したがって、理屈から言うと、損害賠償の引当金のみが計上されるべきです。
2)の特別負担金については、特別負担金を支払わなければならない直接の原因は、支援機構からの資金交付ですから、資金交付の収益計上と同時に、特別負担金の引当て計上を行うのが筋でしょう。
報告書では、あくまで、こういう前提で実態純資産を計算したといっているだけなので、今後の実際の会計処理と開示は会社の責任において行われることになります。この前提のとおり会計処理を行ったからといって、政府が責任をとってくれるわけではないと思われます。
仮に、4兆円もの引当不足があれば、金融庁が見逃さないはずですが・・・。
東電・広瀬直己常務 賠償総額さらに増加も(産経)
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