会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

IASB OCI表示、受配の利益認識を容認、リサイクリングは禁止へ2009.10.26

IASB OCI表示、受配の利益認識を容認、リサイクリングは禁止へ2009.10.26

先々週号(10月26日号)の経営財務にIASBの金融商品会計基準改訂に関する記事が出ていました。当サイトでも取り上げたとおり、いわゆる持ち合い株の時価変動をその他包括利益(OCI)に計上する場合の受取配当金の計上区分については、公開草案の処理を変更して、損益に計上することが決まりました。

「日本企業にとって、配当の損益処理が容認される公算大になったことは“朗報”といえよう。」

たしかに、銀行業界などが主張していたとおりの結果になったので「朗報」といえますが、純利益の前で計上するかどうかという非常に重要な論点であるはずなのに、まるで、経常損益と特別損益の区分の問題のように、簡単に決まってしまったことは気になります。IASBは、純利益の前か後かはそれほど重要な論点ではないと考えているのかもしれません。

また、OCI計上を選択した場合に、売却時のリサイクリングを認めるかどうかも論点となっていましたが、この点は公開草案から変わらず、リサイクリングは禁止となっています。このこととの関係で、いわゆる株式の減損処理もなくなります。この点も「朗報」といえるでしょう。

ただし、(IFRSが将来的に導入された場合の話ですが)減損処理がなくなれば、税務上も株式の評価損の損金算入がなくなることになるでしょう。せっかく税務当局がQ&Aを出して、会計監査人がちゃんと監査している場合の株式評価減の損金算入要件を緩和してくれたのに、それと全く逆行して、実質的に増税になってしまうわけです。(売却損益はさすがに税務調整で益金または損金として加減算すると思います。)

当サイトの関連記事 その2

ASBJ 「繰延資産」を廃止へ2009.10.26

同じ号には、ASBJの無形資産専門委員会で、「繰延資産」に関する実務対応報告を廃止するという記事もありました。従来繰延資産とされていたもののうち、創立費、開業費、開発費は、無形(固定)資産として整理するようです。

大昔の財務諸表論の試験では、繰延資産と引当金が重要テーマとなっていました。しかし、繰延資産は区分自体がなくなり、引当金も、実務上重要な貸倒引当金や退職区給付引当金は別の基準で規定され、修繕引当金も廃止の方向ですから、引当金独自の基準の範囲は非常に狭くなります。試験に出す中身はほとんどなくなってしまうことでしょう。

「実務対応報告第19号の廃止を打ち出し、現行の繰延資産について、それぞれIFRSの取扱いと整合するよう検討することを提案する。IFRSとコンバージェンスを図った場合には、その多くが発生時に費用処理することになりそうだ。」

「発生時に費用処理」であれば、実務的にはあまり影響なさそうです(任意で資産計上している例はまれ)。しかし、一方で、IASに合わせて、一定の開発費について資産計上を強制する動きもあります。

「社内開発費」資産計上へ2009.11.02
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