会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

2020 年3月期決算発表の遅延理由および今後の決算開示に関するお知らせ(ユニデンホールディングス)

2020 年3月期決算発表の遅延理由および今後の決算開示に関するお知らせ(PDFファイル)

ユニデンホールディングス(東証1部)のプレスリリース。

同社は、2020 年3月期の監査の過程において、米国子会社の監査人から十分な監査証拠が入手できないことを理由に監査契約を解除され、それを受けて、連結を監査している日本の監査法人も期中退任したため、9月初旬に監査人が交代していました。しかし、ひとつ下の記事のハイアス・アンド・カンパニーの例と異なり、意見不表明ではない監査意見(EDINETをみると限定付適正)をもらって、延期されていた決算発表と有価証券報告書提出を9月30日にできたようです。(もし意見不表明だと上場廃止に直結します。)

「決算短信の開示が決算期末後 50 日を超えた理由

...米国テキサス州でのコロナウィルス感染拡大の影響もあり、第3四半期における不適切な会計処理に伴う調査、訂正処理に⻑い時間を要したこと、及び、その後の期末決算における会計監査人の期中交代による監査のやり直しにより、決算短信の開示が決算期末後 50 日を大幅に超えることとなりました。」

2020年3月期監査報告書(連結)より。

「限定付適正意見の根拠

追加情報(連結子会社Uniden America Corporationでの未払Chargebackの見積計上について)に記載のとおり、会社は、米国連結子会社Uniden America Corporation(以下、UAC社と言う)において前連結会計年度(2019年3月期)に計上すべきChargebackが概算124百万円程度不足していると試算したが、UAC社では関連証憑の保管不備等が生じており、遡っての検証が困難であることなどから、前連結会計年度(2019年3月期)の数値に反映していない。当監査法人は、当該事項について検討したものの、上記の制約が生じている上、当時のUAC社監査人の監査協力も得ることができず、十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった。

当監査法人は、上記がUAC社の売上高、売掛金、未払費用等の特定の勘定科目に限定されるもので、連結財務諸表全体に及ぼす影響が限定的であり、連結財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要であるが広範ではないと判断したため、当連結会計年度の連結財務諸表に対して限定付適正意見を表明することとした。

当監査法人は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行った。監査の基準における当監査法人の責任は、「連結財務諸表監査における監査人の責任」に記載されている。当監査法人は、我が国における職業倫理に関する規定に従って、会社及び連結子会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている。

当監査法人は、限定付適正意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断している。」

追加情報注記によると、Chargebackというのは売上高のマイナス項目で、BS上は未払費用に計上後売掛金と相殺するのだそうです。前連結会計年度(2019年3月期)に概算124百万円程度不足していることが試算されているのなら、それを過年度数値に反映したうえで、監査意見としては証拠未入手で限定付とする方がわかりやすいと思うのですが...。過年度訂正を避けたのでしょうか。

現地監査人の監査協力を得られなかったというのも気になります。そもそも、子会社監査人との関係について、監査報告書でふれてよいのかどうか...。

財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備に関するお知らせ (PDFファイル)(←内部統制だけでなく連結財務諸表への限定付意見についてもふれています。)

2020年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) (PDFファイル)

2020 年 3 月期通期連結業績と前期実績の差異および特別損失計上に関するお知らせ (PDFファイル)

不正会計関連で多額の特別損失が計上されています。

「親会社株主に帰属する当期純利益は、第3四半期における不適切な会計処理にまつわる決算訂正に関連する調査費用・追加の監査報酬等を特別調査費用として716百万円、また、以前から、車載用製品の広告宣伝を目的に保有していた車両の遊休化に伴い当該車両を減損処理し、55 百万円を特別損失として計上した結果、463 百万円の当期純損失となりました。 」(連結)

「 UAC 社の会計監査人であった BDO USA, LLP の監査打ち切りに伴い発生した追加の監査報酬等を特別調査費用として、特別損失 79 百万円を計上しています。また、以前から、車載用製品の広告宣伝を目的に保有していた車両の遊休化に伴い当該車両を減損処理し、55 百万円を特別損失として計上しています。」(個別)

監査人交代は決算日後なので、次期の費用なのでは。決算日までに発生した分もあったのでしょうか。
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