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監査報告書における限定付適正意見及び 過年度の監査報告書の訂正に関するお知らせ(サムティ)

監査報告書における限定付適正意見及び過年度の監査報告書の訂正に関するお知らせ(PDFファイル)

サムティ(東証プライム)のプレスリリース(2023年3月31日)。

2022 年 11 月期の連結財務諸表において、限定付適正意見のついた独立監査人の監査報告書を受領したとのことです。あわせて、過年度の監査報告書も限定付に訂正されています。監査人は、新日本監査法人です。

会社は、3月6日のプレスリリースで、過去の決算における連結対象の範囲の判断について調べていた特別調査委員会の報告書を公表しました。そこでは、問題となっていた取引先が子会社・関連会社・関連当事者に該当するとの認定には至らなかったという結論が示され、過年度決算訂正は不要とされていましたが、監査人は納得しなかったようです。

プレスリリースによると「限定付適正意見の根拠」は以下のとおり(非常に長いので一部抜粋)。

「会社は、特定の取引先(以下「A社」という。)との取引に関連し、過年度決算における会計上の連結対象範囲の判断等についての疑義が判明したことを受けて、外部の弁護士及び公認会計士による特別調査委員会を設置して調査を進め、特別調査委員会より 2023 年3 月 6 日付で調査報告書を受領した。

...

会社は、この調査報告書の内容を踏まえ、2014 年 9 月 29 日までの期間については、A社は会社の子会社に該当する可能性があると判断する一方で、2014 年 9 月 30 日以降の期間については、A社は会社の子会社に該当せず連結対象範囲に含める必要はないと判断している。

しかしながら、2014 年 9 月 30 日に当時緊密者であるG社及びH社からA社の代表取締役c氏がA社の全株式を取得したことを契機としてA社が会社の子会社に該当しなくなるという判断については、その直前までA社が子会社に該当していた可能性を踏まえると殊更慎重に検討する必要がある。連結財務諸表に関する会計基準や関連する適用指針等によれば、仮にc氏が会社の緊密者又は同意者に該当する場合には、会社が自己の計算において所有している議決権(0%)と、緊密者又は同意者たるc氏が所有している議決権(100%)とを合わせて、会社がA社の議決権の過半数を所有することとなり、さらに、会社が支配要件を満たす場合には、会社はA社の意思決定機関を支配している企業と評価され、A社が会社の子会社となる可能性があるからである。

そこで当監査法人は、2014 年 9 月 30 日以降の期間について、会社がA社の意思決定機関を実質的に支配しているかどうかを判断するための要件、すなわち①c氏の緊密者該当性、及び②c氏の同意者該当性、並びに③支配要件充足性に関する会社の主張に対して慎重に批判的検討を加えた結果、以下のとおり、会社の主張と異なりA社を子会社とすべきとする見解が存在する可能性があると判断した。

...

上記の検討の結果、当監査法人は、会社とA社の親密な関係性に関し、緊密者該当性及び支配要件充足性の判定に与える影響が軽微であると評価するためには、より強い証拠力を持つ監査証拠が必要となると考える。しかしながら、当監査法人は、会社が利用する特別調査委員会の調査結果の基礎となる関係者から提供された関係資料やヒアリング供述内容の真偽及び完全性並びに網羅性の検証を含む、支配の有無を一義的に判断するに至るまでの客観的かつ十分な記録や証憑を入手できなかった

このため、当監査法人は、主として、過年度におけるA社への以下の販売用不動産の売却取引に係る売却益に関してA社を子会社として連結の範囲に含めて未実現利益が消去されるべきであったか否か、そして、その未実現利益の消去に伴い前連結会計年度及び当連結会計年度における販売用不動産、繰延税金資産、利益剰余金について修正が必要となるかどうかについて、判断するための十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった

物件名 売却時期 売却額(百万円)
ホテル「物件①」 2016 年 11 月 2,900
ホテル「物件③」 2019 年 2 月 4,300 

(以下省略)」(注:売却取引は、プレスリリースでは表になっていますが、ここでは、テキストで表示しています。)

引用を省略した部分では、「c氏の緊密者該当性」、「c氏の同意者該当性」、「支配要件充足性」といった論点を立てて、表の形式で、会社の主張と監査人の見解を対比させ、かなりくわしく説明しています。過年度における2件の販売用不動産売却で、かなりの売上を上げているので、この売上と利益が消去されるかどうかは、重要な事項であり、無視することはできなかったのでしょう。

限定付意見の根拠の長さという点では、史上最長かもしれません。

また、過年度有報・四半期報告書で、監査報告書・四半期レビュー報告書だけ訂正というのも、事務的な表記ミスの訂正などを除けば、珍しいのでは。(今のルールでは必要?)

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