会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「第三者委員会ビジネス」で誰が利益を得ているか(東洋経済より)

「第三者委員会ビジネス」で誰が利益を得ているか
5億円増額に19億円の調査費用かけるケースも
(全文読むには要登録)

企業不祥事の際の「第三者委員会ビジネス」で弁護士や会計士が荒稼ぎしているのではないかという記事。

「企業で不正や不祥事が発生すると、今や必ずと言っていいほど外部有識者からなる「第三者委員会」が設置される。委員に就任するのはたいてい弁護士や会計士で、彼らに会社側が支払う報酬は多くの場合、億円単位になる。平時に監査法人に支払っている年間の監査報酬の数倍から十数倍の金額だ。」

「第三者委員会が経営者には責任がないとする報告書を書いてくれれば、その報告書が「免罪符」となって、経営責任をとらずに済む。企業や経営者のそんな思惑に沿った報告書を書き、荒稼ぎする弁護士や会計士は、もはや「第三者委員会ビジネス」を展開しているといっていいかもしれない。」

サクサホールディングスの例を詳しく取り上げています。

「同社では2020年6月に仕掛品の過大計上が発覚した。約3カ月に及ぶ調査の結果、過去5期分の決算を修正したが、修正によって営業利益の額は減るどころか増えた。その額は5期合計で5億3900万円である。純資産は下方修正されたが、修正前の純資産総額のわずか5.4%に当たる13億円分が過大だったというだけだ。

これだけの結果を得るために、サクサは調査委員に10億円の報酬を払い、受け取った調査報告書は実に400ページを超える「超大作」となった。

このほか、過年度修正のために発生した追加監査で9億円をEY新日本監査法人(以下、EY新日本)に払った。2020年3月期の監査報酬は5500万円だったため、5年分の追加監査で平時の16年分の監査報酬を一気に請求された計算になる。」

記事の後半部分では、会社が決算説明資料などで示した不正のいきさつを紹介しています。

2016年に基幹システムを新しいものに変えた際、実地棚卸高とシステム上の残高との不一致があきらかになり、ずっと調べていましたが、原因不明なままでした(そのことは監査法人も知っていた)。

「不一致の原因は結局システムの不具合だったのだが、それがわかったのは特別調査委員会による調査が入ってから。毎期数字が合わず、原価計算の担当者がプレッシャーに負け、システム上の帳簿残高と実地棚卸上の金額の差額を加工費の水増しで処理していたのだ。

だが、2022年3月期の第1四半期に滞留仕掛品5億円を処理しようとしたところ、監査法人が「事前に報告を受けていなかった」と問題視。過年度にさかのぼり、大掛かりな調査をせざるをえなくなった。

...

不正な処理をした社員の告白の裏付けをとってから報告したら、それが悪質な隠蔽だと判断されたことが心外でならない。2021年11月に公表した2021年3月期決算説明資料掲載の経緯書の行間はそう語っているように読める。」

この記事を読むと、監査法人側が理不尽な要求をしたため、多大な費用がかかってしまったように感じられますが、もちろん、監査法人側にも言い分はあるのでしょう。

記事ではふれていませんが、結局、監査法人は昨年交代しています(新日本が契約更新を辞退)。

こちらも同じ記者による記事ですが、さらに新日本に焦点を当てています。

「第三者委員会」に群れ集う専門家たちの正体(東洋経済)(要登録)

「もっとも注目に値するのは、EY新日本の監査先で調査委を設置した17社のうち、半数以上にあたる9社で公認会計士の井上寅喜氏が委員に就任している事実だ。「『第三者委員会ビジネス』で誰が利益を得ているか」で紹介したUMC、サクサ、OKKはいずれもEY新日本の監査先で、井上氏が委員に就任している。

井上氏は2018~2019年にもEY新日本の監査先である日鉄鉱業とファルテックで調査委員を務めている。」

「不適切会計が疑われて外部有識者による調査委員会を設置。井上氏が調査委員に就任した会社側の言い分は次の通りだ。

不適切な会計処理の存在が判明すると、まずEY新日本の本部の幹部が、外部有識者からなる調査委員会を設置したうえでの全面的な調査を求めてくる。それを拒否すれば「監査を降りる」とEY新日本から通告される。

さらに、「誰に調査委員を頼めばよいかわからない」と言うと、EY新日本が井上氏を紹介。井上氏を選ぶと、他の調査委員や調査補助者に誰を選ぶかは井上氏がすべて差配したという。

不適切会計のケースでは監査法人は利害関係者だ。その監査法人からの紹介で調査委員に就任することに問題はないのか。」

これはもっともな懸念です。
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事