物憂げにひとみをそらし背を向ける君の心が壁にとけゆく
ひとりねのさみしき腕にあがつまのかろきおもみを思ふ長き夜
薄紅のさうび咲き群れ風に揺れこひのうらみは忘れよといふ
逃げることを自分に許し混沌の谷を落ちゆく魂の闇
春の野に身をよこたへてわれを呼ぶ母の声をぞ空耳に聞く
ゆりかごの中に二匹のてふを入れしづかに揺らすまぼろしの家
あひたきとちひさく語ることのはを風をたのみてささやき放つ
花を見てとほきちぎりを思ひ出し君を探して野をさまよひぬ
あしひきの山路の端に咲く花の見る人なきに風にうなづく
飛ぶ鳥のよぎる窓辺を振り向きて身によみがへるとほき思ひ出
やがて散るものと思ひて花を見ぬ人はこの世のまことを知らず
月影にまなこを濡らしかたこひの憂きを清めてしばし忘れむ
花野ゆきあきらめきれぬかたこひの人を恨みてなづなをちぎる
野にありて青空を浴み草笛を吹きつつ君のおとづれを待つ
日をさして飛行機雲がのびてゆくまよはずゆけといふがごとくに
背を向けていひたきことをとぢこめて一つの指でピアノをたたく
野の端に光るひなげし風に揺れものいひたげにわれを見上ぐる
咲く花の心も知らずかろがろと摘みて捨てにしあやまちの春
在野の無名歌人です。当ブログの管理人は幽霊です。ばかなことをしたら、たたりますよ。
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