離島暮らしと黒曜石(オブシディアン)

神津オブシディアンラボ活動誌

黒曜石の島 ~神津島にはどれだけ黒曜石があるの?~ その4 砂糠崎編

2020-06-22 17:28:29 | 黒曜石
このところ雨続きで外で石の加工作業ができず悶々としている黒曜石マニアです。
早くマクラメ用ルースとか大型彫刻とかやりたいのにー!
新しい道具の調子も試したいのにぃー!!


・・・うだうだしててもしょうがないのでこんな時はブログだ!

というわけで、今回もシリーズものでございます。未読の場合はこちら見てからの方が楽しめるかも。
神津島内の各黒曜石産地を紹介していく第三弾!

今回は、島で一番目立つ黒曜石!
誰でも見れるけど誰もが行けない場所、砂糠崎です!
ダイナミックな露頭が観光客に人気!

砂糠崎は、島の東側、三浦漁港のある多幸湾の北側の岬を覆っている巨大な黒曜石層です。
漁港の桟橋や湧水のある場所などからこの層を一望することができ、島外からの船がこの港に着いた場合、観光客を最初に出迎える観光スポットでもあります。
島を巡回する観光用のクルーズ船に乗ると、この層を間近で見ることができます。
近くでみるとより圧倒的!日が出てると、反射による黒曜石の煌めきも見れたりします

さて、そんな砂糠崎ですが、少し古い地図でこのあたりを見ると、
湧水辺りから海岸沿いに道が出ているような記載がされていて、層のある崖の真下まで続いています。

そう。
実は、一昔前までは、船に乗らずとも
砂糠崎の黒曜石層の真下まで歩いて、いや車で行けた
のです!
なんでも、昔砂糠崎の頂上の峰沿いに養蚕場があって、そこから生産した生糸の運び出しや物資のやり取りのために道が敷かれてたんだとか。
しかし、三宅島の噴火の際に起きた地震で、天上山の多幸湾側が大崩落し、道路がほとんど埋もれてしまったとのこと。
しかも、そのあと道路を直そうとしても、火山灰質の崖から継続的な崩落が続いて道路を埋めなおしてしまうため、遂には放置せざるを得なくなったそうです。

そんな常に落石崖崩れが起きる場所なので、当たり前だが現在は立ち入り禁止の看板が立てられています。

実は、この看板が立つ前に、何度かこの道を通ったことがあります。
目的はもちろん砂糠崎の黒曜石!!
・・・・・ですが、ええ。これがまたひっどい道でして。

地面は火山灰な砂地で安定しないし、自分よりも大きな石が今にも転がってきそうな場所に落ちてるし、見えない穴が開いてて足踏み外しそうになるしで、生きた心地がしませんでした・・・。上の写真のように、道路だったところに大型の石が我が物顔で鎮座している様を見ると、人は自然の猛威の前には無力なんだな・・・、と、しみじみ感じました。

話は変わって。
ここの黒曜石は、神津島エリアの中では恩馳島の次点で質が良いですが、ヒビと白い点々が多く入っていてあまり石器には向いてません。


崖から剥がれて周囲に散乱している。それが積みあがっているところもあって、マニア垂涎のポイントである。

昔の人たちもそれは分かっていたようで、旧石器から縄文時代までの間、ここの黒曜石はほとんど利用されていませんでした。
ただし、弥生時代辺りになってくると、伊豆諸島や伊豆半島南部に限定して大量に砂糠崎の黒曜石が確認されるようになります。
ただ、言った通り石器としては適していない石で、実際遺跡から見つかるものもほとんどが石器としての体をなしていないものばかり。
なので、一説として、これらの石は実用的な道具としてではなく、
祭祀目的で利用されていた可能性がある
と言われてたりします。



・・・もし、神津の黒曜石が、太古の昔に信仰の対象であったとするならば、
今この島が「神々が集う島」といわれている理由、その原点がこの石にあるのではないか


・・・・・そう考えたくなる今日この頃です。


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (saiun090320)
2020-06-25 12:28:44
教室自然いろいろブログのおいちゃみと申します。
天然の鉱物の中でも黒曜石がご専門とは(^o^)
日本画の岩絵の具で時々触れていますが黒曜石は明るい灰色で半透明。。
原石も美しいのですね。
採集されているのを興味深く拝見しました。
これからも楽しみにしております☆
Unknown (kouzuobsidianlabo)
2020-06-27 06:40:04
はじめまして!コメントありがとうございます!
興味持っていただけて何よりです。
黒曜石にも種類があって、茶色、赤系統やらが入るものもあります。
…そういえば、神津でもたまに暗褐色混じりの黒曜石が見つかるのですが、粉末にしたら何色になるのかはやったことないですね…。今度試してみます!
Unknown (seto masayuki)
2021-12-17 10:59:58
懐かしい場所ばかりです、写真は記憶を完全に覚ましてくれます

最後のコメント神 集う 島の命名由来仮説がおもしろいです。

黒曜石発見と輸送の初めはどうだったのでしょう

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