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『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』 佐藤 健志

 久しぶりに紙の本を読んだ。昨年買ったが読んでいなかった本だ。2020年10月、経営科学出版から発行されたが、元々2017年に刊行された本の加筆改訂版になっている。目次の第2部05の「宇宙戦艦ヤマトの昭和史」は今回新しく追加されたということだ。




 本の内容の一番のポイントは、タイトル通りで、右翼と呼ばれる人たちも口ではナショナリズムを唱えつつもグローバル化、アメリカ追従を進めようとしていて売国になっているし、左翼と呼ばれる人たちはナショナリズムを否定し、非現実的な夢想によって日本が良くなると考えていて亡国になっているということだ。

 戦後教育のせいで日本だとナショナリズムは悪いことのようなニュアンスで捉えられているが、本書によれば次のように書かれている。国民すべてを「同胞」と位置づけ、一蓮托生の存在とみなすのがナショナリズム。ナショナリズムとは、自国の歴史や文化、伝統を尊重し、大事にしようとする考え方。同じ国に生まれ、同じ国籍を持つ人間と、そうでない人間は区別される。さもなければ愛国心など成立しようがない。

 この考え方に従えば、新自由主義的な自己責任論ではなく、コロナ対策では誰も見捨てない、職業等によらず日本国民はすべて救うということになる。「最終的には生活保護がある」 と発言した菅首相には、欠けていたと考え方だと思う。

 また、本書によれば、構造改革やグローバル化は、ナショナリズムをぶち壊すことで、さらなる繁栄をつかもうとする試みになっていて、政治的な立場を超えたナショナリズムの否定、およびそれによる自滅になっている。今は左右とも「日本否定の改革志向」になっていて、新しい翼賛体制の時代がはじまりつつある。

 うまくまとめられないが、目次を見てもらえば、本書のだいたいの感じは分かると思う。本書は第1部が主要部分で、第2部はサイドストリー的な部分になっている。著者の佐藤健志さんは戯曲で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞したりしている人なので、演劇に関しても造詣が深く、第2部では劇団四季や浅利慶太さんについても時代背景と共に論じていて興味深い

 巻末付録には65ページもある政治経済用語辞典があり、皮肉やユーモアに満ちていて政治経済版の『悪魔の辞典』のようで秀逸だ。
 例えば、改革については、本来の意味の(1)次に以下の記述がある。
(2) 既得権益を排して、未得権益に置き換えること。この際に生じる反応を痛みと呼ぶ。
(3) 日本を否定すこと。


 私は、政治的な活動とかは行わず、せいぜい選挙で投票するぐらいだ。しかし、たまには政治的な本も読んで、政治について新しい視点を得たり、理解を深めておくのも悪くはないと思っている。マスコミやワイドショーレベルで留まる人が減り、自分で多少なりとも学習する人が増えて行けば、政治家の選出や世論を通して日本の政治も少しずつよくなっていくと思う


 先日、自民党の総裁選があり、新しく岸田総裁が誕生した。私は会社員の頃、半強制で自民党友だったこともある。20年くらいそうだった気がするが、一度も総裁選の投票をした覚えがない。フルセットの総裁選がなかったからかな。あるいは、同じく半強制で参加させられていた会社関連の政治団体の方に投票用紙が送られて、勝手に投票されたりしていたのかな。今回、フルセットという話が出ていたので思い出してしまった。

 岸田総裁は、候補者の中では左右から見て中庸だったし、経験値も含めて一番無難な選択だっただろう。高市さんの立候補、主張で少し右に引きずられたのもよかった。岸田さんは、総裁選に際して「小泉改革以降の新自由主義的な政策を転換する」と述べているので、一部の政策では右の売国から抜け出してくれるかもしれない。ただ、アメリカとの連携強化も言っているので、アメリカ追従部分は不変で、根本部分は変われないだろうとも思う。


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