時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

医は仁術ではなかったのか?

2021年08月23日 | 時のつれづれ・葉月 

多摩爺の「時のつれづれ(葉月の24)」
医は仁術ではなかったのか?

先週木曜の会見で、医師会の幹部は、
「リスクの高い中等症患者が、自宅療養を余儀なくされている。」としたうえで、
大規模イベント会場などを、中等症の患者向けの臨時の医療施設として活用することを提案した。

いわゆる、入院できない患者が急増し、俄に話題となってきた野戦病院の設置構想だが、
大変申し訳ないが・・・  決定的な一言が、とっても大事な一言が、スッポリと抜け落ちている。

政府や自治体が、急いでハード(野戦病院)を作ってくれたら、
そこで仕事をするソフト(医師と看護師)は、我々が必ず手配すると、なぜ言わなかったのだろうか?

野戦病院に必要な、医師と看護師を手配するのは、
為政者や官僚の仕事ではなく・・・ 医師会と看護協会の仕事である。
医師会と看護協会の幹部は「あとは私たちに任せてくれ。」と、なぜ言わないのだ。

個人的には、医師会や看護協会などの、医療従事者を批判することは本意ではない。
とはいえ・・・ その一言がないということは、
医療崩壊が現実のものとなりつつある状況を踏まえれば、
批判の矛先が、自分たちの方に向いてこないように、
政府と自治体を、スケープゴートに祀りあげようと、狡いコメントを発したよう見えてくる。

また、毎日のようにメディアに出ている割には、国民に注意喚起を呼びかけることは少なく、
自分の意にそぐわないと思えば、ひたすらに政策の批判を繰り返す医療従事者もいる。

あなた方が、献身的に頑張ってくれていることには頭が下がるし、感謝しているが、
あなた方が属する組織は、この1年半の間に、いったいなにをどうしてくれたのか、
まずそれを言ってくれ。

そして、あなた方は・・・ その組織に、どのように働きかけ、
なにがどうなったのか、それを先に言ってくれ。

国民がワンチームにならなきゃいけない緊急事態に、
医療の専門知識を持って喋ってることは良いとして、自分の意にそぐわないからといって、
連日のようにメディアに露出して、ワンチームの足を引っ張るのは、
目障り極まりなく、不愉快になるときすらある。

コロナ患者向けの病床数が増えないことについて・・・ 総理は未だに明確な理由を述べていない。
そりやそうだろう。
この期に及んで、医師会に属する多くの町医者の先生方が、協力してくれないなんて言ったら、
ワクチンは打ってくれるが、感染患者は診てくれないと、
正直に言ったら・・・ 大混乱になってしまうだろう。

それを察して、状況を解説するのがメディアであり、メディアによく出ている医療従事者だと思うが、
野党とともに、総理を問い詰めることに終始し、
事態が改善しないことを、楽しんでいるように見える。

野党は政治休戦するので、コロナ対策を話し合うために、国会を開けという。
いかにも正論のように思えるが・・・ いまごろになって政治休戦を提案するということは、
いままではコロナ対策を政局に絡めて、真剣に向き合ってこなかった、
足を引っ張っていたと、いうことであって、
ワンチームじゃなかったと暴露したも同然で、総選挙を見据えたパフォーマンスとしか思えない。

そして・・・ 悲劇が起こった。
千葉では感染して自宅療養中の妊婦さんが体調を崩しても、受け入れてくれる病院がなく、
自宅で出産せざる得なくなり、生まれてきた赤ちゃんが亡くなるという、痛ましい事故が起こった。

メディアは、その事実を淡々と伝え、自治体の責任者が頭を下げる様子を放映するが、
「医師会は、なにをしてるんだ!」と叱責するような声は・・・ ほとんど聞こえてこない。

さらに、先週末には、大阪府のトップが新たな病床確保を、府内の80の病院に要請していたが、
その要請に応じてくれた病院はなかったと・・・ ショッキングな情報を公開している。

これが・・・ 現実である。
「いくら野戦病院を作れ!」と声を張り上げたって、
手を上げて、助けてくれる医師や看護師が集まらないのである。

もし、なにかできるとすれば、患者と接することがない、オンライン診療が関の山なのである。
この現実を問題視せずに、いくら批判を繰り返しても・・・ 事態は進展しないのではなかろうか?

さらには・・・ 欧州のように公立病院が7~8割なら、
人的リソースをコントロールすることも可能だろうが、
個人経営の町医者に対して、医師会が指示を出すことができないし、
要請しても言うことを聞いてくれないことを、為政者が口にすればすぐに責任転嫁だとして批判する。

メディアが、本来あるべき公平で中立の立場で、その役割を担って声を上げれば、
町医者も動かざる得なくなると思うがどうだろう?

献身的に取り組んでいただき、最前線で奮闘されている医療従事者の方々には大変申し訳ないが、
医師会のトップも、一部の医療従事者も、野党の幹部も・・・ それを知ってるにも拘わらず、
その根源には突っ込みをいれないんだから、本当に狡いし、狡すぎる。

法律を変えなきゃ、事の次第を静観している、町のお医者さんは助けてくれないのだろうか?
医師会の幹部も、一部の医療従事者も、野党の幹部も・・・ なぜ、そこんとこに声を上げないのだ。
それは・・・政府と同様に、医療従事者を悪者にできないからであって、
メディアにでて、こういった事態に歯切れ良く指摘できるコメンテーターはごくわずかしかいない。

あえて問いたい。
医は・・・ 仁術ではなかったのか?

江戸の儒学者・貝原益軒は「養生訓(健康法)」において、
「医は仁術なり、人を救ふを以て志とすべし。」と著し、
「仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし、わが身の利養を専ら志すべからず。」
「天地の産み育て給える人を救い助け、萬民の生死をつかさどる術なれば、
 医を民の司命という、極めて大事の職分なり。」と・・・ 医者の心構えを説いている。

だからといって、いままで町内の健康を守ってくれていた、町医者の気持ちも分らんわけではない。
自らのクリニックや医院で、新型コロナウイルス患者の診療を始めたら、
その噂は、たちまち町内から近隣の町まで広がり、
そのクリニックや医院に通う患者は激減するだろうし、経営難に陥ってしまうだろう。

だから通常の病気と、新型コロナウイルスの対応を、切り分けて対応していると医師会は力説する。
それもまた正論ではあるが、医者にかかることができず、
生死をさまよう人が、たくさんいることに、医師として・・・ 心は痛まないのだろうか?

心が痛まないとすれば・・・ それはもはや、仁術(医師の本分)ではなく、
算術(損得勘定)で、時が過ぎゆくまで様子を見ていると言わざる得ない。

そういった事情に対し、政府は補助金をだして対処すると言ってる。
まさか・・・ 補助金を貰っているにも拘わらず、患者を拒否してるのではあるまい?
もし、それをやっていたなら、頼らざる得ない立場にある人々が、
補助金詐欺を働いていることになってしまう。
よもやだが・・・ それだけはないと信じたい。

政策に批判的な一部の医療従事者や、野党の幹部がメディアや、国会で追求しなきゃならないのは、
政策を悪用しようとする者たちや、だんまりを決め込む者たちの実態であって、
政策そのものではないと思うが・・・ どうだろうか?

法律を変えて、有事(非常時)における医療体制を、変更すれば良いのかもしれないが、
常日頃から町内の人々に感謝され、敬われている我が町のお医者さんたちは、
そこまでしなきゃ、本当に汗を掻いてくれないのだろうか?
もし、そうだとしたら・・・ あまりにも悲しすぎる。

町のお医者さんのなかには、現代医学の進歩から少し距離があり、
昔取ったキネヅカで頑張ってらっしゃる「おじいちゃん先生」も多い。
総動員だからといって、技術や知識に不安がある医師や看護師まで、動員しろというのではない。

志があり、事態を憂う町の医師からは、
感染防止法の2類から、5類に引き下げるべきとの声も出始めた。

5類になればインフルエンザと同じだから、
どんなに拒否してもコロナ患者は町医者に集まってくるだろう。

本当に、本当に・・・ それで良いんだろうか?
あまいかもしれないが、個人的には治療のために服用する薬が、
薬局に出回るまでは2類で良いのかなと思っている。

患者を分担して受け持ってると言えば・・・ 確かに聞こえが良く、だれも反論できない。
しかしそれでは、医は仁術ではなく、算術になってしまう難題と、向きあうことができないのだ。

さて、どうする?
前段で述べたとおり・・・ 個人的には、医師会や医療従事者を批判することは本意ではないが、
この危機を乗り切るための、次の一手は、
政府ではなく、医師会が握ってると考えるのは・・・ 私だけではあるまい。

医は仁術なり、人を救ふを以て志とすべし。
いまさらかもしれないが・・・ いましばらく、その言葉に賭けてみたい。

入院しなきゃならない人が、たくさん居るというのに、
その方々の生殺与奪を、一番信頼していたはずの、町のお医者さんたちが握っているなんて、
あまりにも辛すぎる。

追伸
コロナ禍が落ち着いてからでしか時間がないので、それで良いと思っているが、
この国の、有事における医療体制のあるべき姿について、
政局にすることなく、オープンな議論をしてほしいと願っている。

健全な野党が育たない限り、この国はよくならないことを改めて痛感したし、
また、メディアも、報道が持つ力と、その役割を・・・ 政局に結びつけない努力をしない限り、
自由と我が儘を履き違える国民が、いなくならないことも良く分った。

また、オリンピックをやったことや、パラリンピックをやろうとしていることと結びつけて、
国が全体主義に向かっているかのようなことを言われる方も・・・ SNSに出てきた。

冷静に考えてみたら分ることだが、政権を批判することも自由だから構わないし、
そういった意見を、否定するものでもないが、
いまの政権が、自由に対して寛容だったからこそ、いまのような事態を招いたのである。
にも拘わらず、それが全体主義に向かってるというのは・・・ 論点がズレているとしか思えない。

[参考]全体主義とは、個人の自由を認めず、個人の生活や思想は、国家全体の利害と一致するよう
    統制されなければならないとする、思想や政治体制であり、その対義語は民主主義である。

自由を制限する法律改正や、全体主義を目指しているのなら、
それができる議席数をもっているんだから、すでに法律を作り替え強攻策を取っていただろう。
自由を選ぶのも、不自由を選ぶのも、それもまた自由なのが・・・ いまの、この国であり、
それ以上でも、それ以下でもないと思うがどうだろう?

また、私もその一人なんだろうと自覚しているが、
自分の思い通りにならないからといって、非難や批判を繰り返していても虚しいだけだと思っている。
1日も早く、コロナ禍が落ち着く日がくることを願ってやまない。


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2 コメント

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Unknown (しゃちくん)
2021-08-23 08:16:37
伝染病2類に指定してほんの一握りの医療機関しかコロナ患者を受け入れてませんよねぇ。
町医者はワクチン接種で大忙しで経営的には黒字なので黙して語らず。
それを理解しない野党とマスコミが政権批判を繰り返すので世論はパニックに陥るのでしょう。
Unknown (多摩爺)
2021-08-23 11:05:02
しゃちくんさん、こんにちは

仰るとおりです。
この国で、いま入院ができない患者がたくさんいるというのに、その方々の生殺与奪を、
一番信頼していた町のお医者さんが握っているとは・・・ 皮肉にも程があると思います。

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