タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ 給 餌 台 ≫

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 最近、野性の生き物への給餌による自然の生態系の変化を危惧する声が大きくなっている。たとえば、知床国立公園内の国道にキタキツネが出没し、観光客になれなれしく餌をねだる光景は珍しくないという。日本で最強の野性獣であるヒグマでさえ、給餌ではないにしても、人間の食物の味を覚え、人里近くに姿を見せるようになった。
 釧路湿原では、明治時代に乱獲で絶滅したと思われていたタンチョウが、1920年代に十数羽生存していることが確認され、その後、篤志家たちの給餌活動によって数が増え、最近ではサロベツ原野でも目撃されている。タンチョウの場合は、人間の手による給餌の成功例であるが、今後、生息環境の変化と過密な生息数が、保護のあり方に影響を及ぼす可能性もないではない。
 わが家のささやかな給餌台では、餌の不足する降雪期から春の繁殖期まで、主にスズメを対象にアワ・ヒエ・キビ・カナリヤシードを与えるが、今冬は、珍しいことにアトリが多数飛来し、スズメと仲良く餌をついばんでいる。ツグミも一時現れたが、ヒヨドリに追われていつの間にか姿を見せなくなった。ヒヨドリが台に入るとアトリとスズメは地面に降り、こぼれた餌を拾うしかないので、つい仏心を出して地面にも少しばかり撒いてやっている。
 この程度の給餌が自然の生態系を破壊するとは思えないので、これからも続けるつもりである。スズメの場合、雛が巣立ってから降雪の時期まで中止するし、アトリはやがて北へ飛び立ち、自然の中に戻るから、問題はないだろう。

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