タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪ 切 り 株 の 椅 子 ≫

P1000131

 網走・釧路・根室管内の冬山造材で、伐木に、昔ながらの手鋸に替わってチエンソーが導入されたのは昭和30年頃である。造材作業の手順全体が大きく変化し、伐採量の飛躍的増大と皆抜方式の採用によって、無尽蔵といわれた多くの針葉樹林帯は、たちまち無惨な破壊の爪痕をさらした。その後、伐採地には造林計画に沿って、生長の早いカラマツを中心に、逐次、トドマツアやアカエゾマツが植樹された。
 写真の切り株の椅子は、平成5年の春に、冬山造材の土場跡地に放置されていた、長さ二尺五寸、樹齢50年のトドマツの切り株を持ち帰り、2年間自然乾燥させてから制作した。根元の形状と立ち上がり部分が不自然なため、伐木手は、まず根際一尺に三角形の「受け口」を切り、反対側の「追い口」にチエンソーを入れて伐採し、体積の積算が可能な二尺五寸あたりで玉切りを行ったと思われる。
 制作にあたって、できるだけ「自然のまま」を心がけた。まず、元口から二寸を手鋸で切り落とし、次に、八寸五分ごとに2か所に鋸を入れる、それだけで原形つまり完成品ができ上がった。トドマツは乾燥すると樹皮が自然にはがれるので、400番のサンドペーパーを表面にかけただけで、塗装は省き、木口も加工を加えなかった。

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