武弘・Takehiroの部屋

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“愛のコールサイン” は駄目よ!

2024年05月03日 14時35分04秒 | フジテレビ関係

<2016年2月に書いた以下の記事を復刻します>

会社に就職すると、たいてい新人研修というものが行われる。私の場合も某テレビ局に入社した直後、新人研修を受けた。50年以上も前のことだが、その中で今でも忘れられない“逸話”がある。それは、ある若い男子アナウンサーが懲戒解雇になった話である。
新人研修で、人事部や総務部の話ほど面白くないものはない。会社の組織がどうのとか、就業規則がどうのとかいう話だから、聞いていて眠くなってくる。そんなものより、テレビ局では制作現場で、美人女優や有名タレントを間近に見ながら受ける“実習”が一番楽しかったし思い出に残っている。ところが、今では何もかも忘れた人事部だかの研修で、ある“懲戒解雇”の話を聞いたのは決して忘れられない。

テレビ局には「コールサイン」というものがある。無線局に割り当てられた識別信号だが(昔は“呼出し符号”と言った)、例えば、NHK総合テレビ(東京第一放送)だと「JOAK-TV」であり、フジテレビだと「JOCX-TV」となる。ラジオでよく聞く文化放送の「JOQR」と思えば良い。
電波の難しい話は別として、私たちより少し先輩の男のアナウンサーがこのコールサインに関係して、やってはならないことをしたのだ。
テレビ放送は一日の放送が終わる時、映像周波数がどうの出力がどうのとか言って、必ずこの「コールサイン」を伝える。実はこの若い男子アナは、コールサインを利用して自宅の新妻に帰宅時間が早いか遅いかを伝えたのである。
どういうことかと言うと、コールサインを読む時に、帰宅が早いか遅いかで“アクセント”を変えたのである。考えてみれば、実に頭の良い伝達方法だと思うが、これは公共の電波を完全に私事に使った悪質な行為である。公私混同もはなはだしいのだ。

深夜の遅い時間や未明の早い時間に、コールサインを伝えるのは新人アナの仕事である。彼はそれを悪用し、自宅にいる新妻に帰宅が早いか遅いかを伝えていたのだ。なぜそれが発覚したかは聞かなかったが、上司のアナが“アクセント”の変更を不審に思って問い詰めたか、あるいは本人が少し得意になって同僚に漏らしたのかもしれない。
若い男子アナはシャレたことをしたつもりだったろう。新妻への“愛のコールサイン”と思っていたに違いない。しかし、悪事がばれて彼はクビになったのだ。

私はこの話を新人研修で聞いた時、実は少し驚いた。若い頃の私は、人に対して比較的優しくて甘い方だったかもしれない。だから、若い男子アナの“出来心”でやったことが、懲戒解雇に値するのだろうかと疑問に思った。クビでは可哀そうだから、せめて何カ月かの停職処分で良いのではと思ったりした。
しかし、今から考えると、テレビ放送が始まって間もない頃だからこそ、公私のケジメを付けること、公私混同を絶対に許さないという姿勢は当然だったかもしれない。電波は国家・国民のもの、公共のものであるから、決して「私事」のために使われてはならないのだ。
あれから何十年も経ったが、コールサインと若い男子アナの話だけは忘れられない。(2016年2月27日)


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