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田中正明と松井石根の「陣中日記」-1

 南京事件に関する重要な史料の一つに松井石根による「陣中日記」があるが、ここではそれを取り上げてみたい。  

 その理由は、南京事件否定派の著書やネット上での記述を見ると、明らかに史料を自分で見てないであろうものが目立つ。また、改竄された史料の引用なども目立つ。実は、これらの問題の根源の一つとして田中正明の著書があるのである。

 田中は当時、自衛隊板妻駐屯地資料館に収蔵されていた松井石根の日記を使い一冊の本を書き上げた。それが『松井石根大将の陣中日誌』(芙蓉書房 1985年)である。この著書で田中は南京大虐殺はなかったと結論づけたのである。

 しかしこの著書は、ウソ・いつわり・捏造・改竄に満ちたものであることがすぐにバレた。それがバレたのが板倉義明(虐殺数は一万人~二万人と主張している人物)による「松井石根大将「陣中日記」改竄の怪 日中戦争研究の第一級史料の活字本は、かくも原史料と異なっている-近現代史研究者への警告」(『歴史と人物』 1985年冬号)によってであった。

 板倉は収蔵されている松井石根の日記と田中の著書を比較してみたのである。それによれば、田中の著書は、脱落や書き換え、書き加えなど本来ならあり得ないような事まで行なわれている。書き加えについては、「しかもそれらはすべて「南京虐殺事件否定」の方向で行なわれている。これは明らかに編者・田中氏の意図的行為であると断ぜざるを得ない」(前掲319頁)と指摘している。

 板倉によれば、原史料と田中の著書との違いは、単純な誤字脱字も含めると「その異同はおよそ九百ヵ所以上に及んでいる」(前掲322頁)としている。

 それにより田中の著書は大きな波紋を呼び問題となった。そのためか、『松井石根大将の陣中日誌』はその後絶版となった。現在では、図書館か古書で入手するしかない(私は以前図書館で借りて読んだ)。

 では、松井石根の日記には南京事件に関することが書かれていないのか。今日では、財団法人偕行社による『南京戦史資料集2』(1993年)に松井石根の日記である「陣中日記」と東京裁判前に書かれた「支那事変日誌抜粋」とが収録されており、私たちも読むことが出来る。今回は「陣中日記」と「支那事変日誌抜粋」の中にある南京事件に関する部分を抜き出してみたいと思う。

 もし興味を持った方は自分自身の目で読んでほしい。このことは、ブログには以前から書いていることだが、物事は自分の目で確認することが重要である。孫引きやコピペでは何の解決にもならない。批判あるいは批評するのであれば、その史料や著書をしっかりと読む、そこに書かれている主旨をしっかりと把握する、という作業は絶対に必要だからである。まともに読みもしない、主旨も把握していない、自分で調べもしていないで批判・批評するのは明らかに愚かであり失礼である。
 
 次回から重要な点についてのみ、田中の著書と松井の「日記」とを比較していく。
 
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