地域医療が重視されている背景には「年々増加している医療費と税金による負担」があります。地域医療自体は「病床数の効率化」や「高齢化社会に向けて、地域でも質の高い医療サービスが受けられるシステム作り」を目的としていますが、それによって起きるのが「医療費増加の抑制」でもあるのです。
日本の国民医療費は1980年代から2010年代間でおよそ2倍の数値である40兆円を超え、特に年々増え続ける後期高齢者の医療費は、国民医療費の35.4%を占めています。これを支えているのが、先進国の中でも突出している「日本の病床数」です。病床数が埋まるほど医療費が発生し、社会保険料などの負担が増していく悪循環を変えるべく国が考えたのが、「病床のダウンサウジング(削減)」でした。
この頃考えられていた問題では、症状が軽く手厚い医療を必要としない患者が、「病床が余っているから」という理由で病床を利用する=必要な医療費が増えているというものでした。地域医療や自宅医療の制度を整え、病院の役割分担や機能性を明確化していくことで、多くの地域で不要な病床を2~3割削減でき、その分に現状足りていない分野の病床を増やせる、という試算です。
しかしこうした病床削減が推進されていた中で起きたコロナ禍において、削減したことで足りなくなった病床数は一転して大きな問題になりました。一度減らしてしまった病床数は「必要になったから」では増やせません。コロナ禍を経て、地域医療構想は具体的な「不測の事態」を踏まえたシステムへの変更が急務となっています。