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富士の恋 - 時を超えて

2025-02-01 01:45:00 | マイクロストーリー

 

富士山の麓の小さな村で、三郎と舞子は兄妹のように育った。二人の秘密の場所は、雲海が広がる丘の上。そこから望む雄大な富士の姿は、幼い二人の心を捉えて離さなかった。三郎はいつも古いカメラを手に、舞子はスケッチブックを抱え、刻々と表情を変える富士をそれぞれの方法で記録していた。

高校を卒業し、三郎は写真家を目指し、舞子はデザインの道へ進むため、二人は別々の街へと旅立った。それでも、年に一度、必ずあの丘で再会し、互いの成長を喜び合った。ある年の再会の日、三郎は手作りのペンダントを舞子に贈った。「これは僕と富士を繋ぐ石なんだ。いつも一緒にいると思っていてくれ」と。舞子は涙を浮かべながら、「必ず戻ってくる」と約束した。

十年後、三郎は世界的な写真家として名を馳せていた。彼の写真は見る者の心を揺さぶり、数々の賞を受賞していた。しかし、華やかな成功の裏で、彼は故郷の風景と舞子の面影を深く胸に秘め、孤独を感じていた。一方、舞子も都会で一流デザイナーとして活躍していたが、忙しい日々の合間に、故郷の丘で見た富士の雄大さを思い出すことが度々あった。

ある日、三郎はライバル写真家の策略により、大規模な写真展を台無しにされてしまう。世間からの激しい非難を浴び、彼は深い挫折を味わった。失意の中、彼は全てを投げ出し、故郷へと帰ってきた。しかし、懐かしい風景も、彼の心の傷を癒すことはなかった。

故郷に戻って数ヶ月後、舞子も仕事のプレッシャーから逃れるように、ふと故郷の丘を訪れた。夕焼けに染まる空の下、懐かしい場所でカメラを構える三郎の姿を見つけた。しかし、以前のように屈託なく話しかけることができない。二人の間には、見えない壁ができていた。

その夕焼けの中で、三郎は意を決して、幼い頃に舞子を傷つけてしまった出来事を打ち明けた。些細なことで舞子を突き飛ばしてしまい、泣かせてしまったのだ。子供心に深く後悔し、ずっと心の奥底に封印していた出来事だった。舞子は驚きながらも、優しく微笑んだ。「覚えていないわ。でも、あなたがずっと気にしていたのなら、話してくれてよかった」と。

その言葉で、三郎の心に長年蟠っていたものが溶け出した。その時、丘の下から村の古老が通りかかり、二人に優しく語りかけた。「富士は古来より、人々の心を見守り、癒してきた。その雄大な姿は、過去の傷を包み込み、未来への希望を与えてくれる。大切なのは、過去に囚われるのではなく、今を見つめ、未来を信じることじゃ」と。

古老の言葉に導かれるように、二人は再び富士を見つめた。夕焼けに照らされた富士は、荘厳な美しさを放っていた。その時、三郎は幼い頃、舞子と見た雲海の中に浮かぶ富士の姿を思い出した。そして、その情景を写真に収めたいという衝動に駆られた。舞子もまた、その風景をスケッチブックに描き始めた。

夕焼けが終わり、あたりが薄暗くなっても、二人は黙々とそれぞれの作業を続けていた。その静かな時間の中で、二人の心の距離は縮まっていった。作業を終え、丘を下りる途中、三郎は舞子に言った。「君と出会えたこと、そして今、こうしてまた一緒に富士を見ることができていること。それが僕にとって、何よりも大切なことなんだ」と。舞子は優しく微笑み、三郎の手を握った。

それから、二人は再びそれぞれの道を歩みながらも、互いを支え合うようになった。三郎は再びカメラを手に、舞子はデザインを通して、富士の恵みと、そこから生まれた二人の絆を表現し続けた。二人の心は、富士の麓に咲く花のように、時を超えて美しく咲き誇っていた。


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