ロシアのメドベージェフ前大統領は5日、先進7か国(G7)が検討している露産石油を巡る新たな対露制裁に反発し、「日本はロシアから石油もガスも得られなくなる」とSNSに投稿した。露極東サハリンの石油・天然ガス事業「サハリン2」での日本企業排除を示唆したもので、日本の資源調達は一段と不透明になっている。
■「石油ガス得られなくなる」
■揺さぶり
G7は、露産石油の取引価格に上限を設定することを検討している。岸田首相は3日、上限設定で現在の「半分程度の価格」となる見通しを示していた。これに対し、メドベージェフ氏は「市場の石油は大幅に減り、価格もはるかに高くなるだろう」と反論した。
メドベージェフ氏は、ロシアの安全保障会議副議長を務め、ウクライナ侵略を巡って対外的に過激な発言を強めている。ガソリン価格高騰や電力供給の問題が広がる日本を威嚇し、揺さぶりを強める思惑もありそうだ。
タス通信によると、露国営ガス会社ガスプロム幹部は4日、下院のエネルギー委員会で、日本を含めた「非友好国」にロシア産の液化天然ガス(LNG)の購入をロシア通貨ルーブルで支払わせることを提案した。日本はサハリン2からLNGを輸入しており、筆頭株主でもあるガスプロムの提案通りとなれば日本への影響は大きい。
ロシアはこの1週間、日本への圧力を強めてきた。プーチン大統領は6月30日、サハリン2の運営会社の資産を、新会社に無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。外国企業は新会社設立から1か月以内に、ロシア政府が提示する条件に基づき、新会社の株式取得に同意するかどうかを通知する必要がある。
■権益
サハリン2には三井物産が12・5%、三菱商事が10%出資している。日本が調達するLNGの約9%がロシア産で、ほとんどをサハリン2が占めている。露産LNGを失えば、電気やガスの供給に支障が出る恐れがある。このため、日本は米欧と協調してロシア産の石炭や原油の禁輸や段階的禁止を表明する一方、天然ガスへの制裁は見送り、サハリン2の権益を維持する方針を示してきた。
しかし、権益が維持されるかは予断を許さない状況になってきた。大手商社内には「日本社会や経済への影響を考えると簡単には手を引けない」とあくまで権益維持が必要との声も上がる。ただ、日本側が新会社の株式取得を求めても、ロシア政府が同意するかどうかは不透明だ。
サハリン2からのLNGの供給先は、運営会社「サハリン・エナジー・インベストメント」が買い手と交渉して決めている。新会社に日本企業が出資しなくなれば、日本側の意見が採り入れられなくなる公算が大きい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員は「(権益の維持は)極めて難しい。日本は自国の権益であると主張し、圧力をかけ続けるしかない」と指摘する。
■困難な代替
露産LNGの代替は容易ではない。一部のエネルギー企業が代替手段と考えていた米テキサス州にあるLNG輸出拠点「フリーポート」は、火災で稼働を停止しており、部分的な操業再開は10月上旬となる見込みだ。
電気・ガス会社は、需給に応じて取引する「スポット市場」からの購入を迫られる。ただ、スポット価格は長期契約価格の2・5倍で推移しており、「LNG船1隻(約7万トン)をスポットに切り替えると、100億円収支が悪化する」(エネルギー企業幹部)という。
調達費用の増加は電気・ガス代の上昇に直結する。すでに1年前より1~3割上昇しているが、一層の値上がりにつながれば家計を圧迫し、日本経済に影響が及ぶ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「(スポットで3倍の価格で購入した場合)日本の輸入費は年間で1兆円程度増加し、名目国内総生産(GDP)を0・2%程度押し下げる」と分析している
yomiuri.onlineより
■「石油ガス得られなくなる」
■揺さぶり
G7は、露産石油の取引価格に上限を設定することを検討している。岸田首相は3日、上限設定で現在の「半分程度の価格」となる見通しを示していた。これに対し、メドベージェフ氏は「市場の石油は大幅に減り、価格もはるかに高くなるだろう」と反論した。
メドベージェフ氏は、ロシアの安全保障会議副議長を務め、ウクライナ侵略を巡って対外的に過激な発言を強めている。ガソリン価格高騰や電力供給の問題が広がる日本を威嚇し、揺さぶりを強める思惑もありそうだ。
タス通信によると、露国営ガス会社ガスプロム幹部は4日、下院のエネルギー委員会で、日本を含めた「非友好国」にロシア産の液化天然ガス(LNG)の購入をロシア通貨ルーブルで支払わせることを提案した。日本はサハリン2からLNGを輸入しており、筆頭株主でもあるガスプロムの提案通りとなれば日本への影響は大きい。
ロシアはこの1週間、日本への圧力を強めてきた。プーチン大統領は6月30日、サハリン2の運営会社の資産を、新会社に無償譲渡するよう命じる大統領令に署名した。外国企業は新会社設立から1か月以内に、ロシア政府が提示する条件に基づき、新会社の株式取得に同意するかどうかを通知する必要がある。
■権益
サハリン2には三井物産が12・5%、三菱商事が10%出資している。日本が調達するLNGの約9%がロシア産で、ほとんどをサハリン2が占めている。露産LNGを失えば、電気やガスの供給に支障が出る恐れがある。このため、日本は米欧と協調してロシア産の石炭や原油の禁輸や段階的禁止を表明する一方、天然ガスへの制裁は見送り、サハリン2の権益を維持する方針を示してきた。
しかし、権益が維持されるかは予断を許さない状況になってきた。大手商社内には「日本社会や経済への影響を考えると簡単には手を引けない」とあくまで権益維持が必要との声も上がる。ただ、日本側が新会社の株式取得を求めても、ロシア政府が同意するかどうかは不透明だ。
サハリン2からのLNGの供給先は、運営会社「サハリン・エナジー・インベストメント」が買い手と交渉して決めている。新会社に日本企業が出資しなくなれば、日本側の意見が採り入れられなくなる公算が大きい。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介副主任研究員は「(権益の維持は)極めて難しい。日本は自国の権益であると主張し、圧力をかけ続けるしかない」と指摘する。
■困難な代替
露産LNGの代替は容易ではない。一部のエネルギー企業が代替手段と考えていた米テキサス州にあるLNG輸出拠点「フリーポート」は、火災で稼働を停止しており、部分的な操業再開は10月上旬となる見込みだ。
電気・ガス会社は、需給に応じて取引する「スポット市場」からの購入を迫られる。ただ、スポット価格は長期契約価格の2・5倍で推移しており、「LNG船1隻(約7万トン)をスポットに切り替えると、100億円収支が悪化する」(エネルギー企業幹部)という。
調達費用の増加は電気・ガス代の上昇に直結する。すでに1年前より1~3割上昇しているが、一層の値上がりにつながれば家計を圧迫し、日本経済に影響が及ぶ。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「(スポットで3倍の価格で購入した場合)日本の輸入費は年間で1兆円程度増加し、名目国内総生産(GDP)を0・2%程度押し下げる」と分析している
yomiuri.onlineより