*イタリア政治を変えたお笑い芸人が来日 「日本人は働きすぎ」「ネットで連携せよ」と毒舌発揮
2019/04/20 10:30
イタリアの政治を変えた「五つ星運動」をご存じだろうか。政党とは言わず「運動」と称して改革を訴え、国会議員を大量に当選させた。昨年には第一党となり、連立政権を樹立した。
この政党を2009年に創設した一人が、毒舌のお笑い芸人ジョゼッペ・グリッロ(70)。ベッペの愛称で呼ばれるこの芸人は、既成政党への批判を繰り返し、政治運動に火をつけた。
今回、ベッペは市民団体「デモクラシー未来財団」の招きで来日。都内で4月15日に講演し、こう訴えた。
「デジタル社会は人々が連帯できる道具を用意した。プロの政治家でなく、普通の市民が声を上げることで革命は可能となった」
日本の政治改革が進まないことについては、「日本人は勤勉だが働きすぎでもの考えるゆとりまで失っているのではないか」、とユーモア交じりに一刺し。
「ストレスを打ち払うには笑うこと。笑いは力になる。どうしたら人は幸せになれるか。そこを起点に考えることが市民革命の出発点だ」
革命の突破口となる政策として、基礎的な所得を誰もが得られる「ベーシックインカム」を挙げた。
イタリアでは誰もが知り世界的にも影響力があるベッペだが、五つ星運動を躍進させるまでの道のりは波瀾万丈(はらんばんじょう)だった。
もともとは、社会風刺をネタに一人語りするのが得意で、レギュラー番組を持つ人気コメディアンだった。辛辣(しんらつ)な政権批判が放送局の上層部から危険視され、1990年代にTV・ラジオから追放された。そこで活躍の場を劇場に移す。
「干されたことが逆に私の価値を高めた。劇場でしか聞けない話に人々は足を運んでくれた。聴衆の反応を受け止めながら演ずると、皆が何に怒っているのか手に取るように分かった。怒りは笑いに昇華されると、すさまじいパワーが生まれると気付いた」
ベッペの話芸には、失業、汚職、環境、都市問題といった身の回りの問題がちりばめられている。ゲラゲラ笑いながら、聴衆は深刻な問題に目を向ける。あちこちから声が掛かり、集会がイタリア各地で開かれるようになった。
芸人から大衆運動家に変身するきっかけは、ITエンジニアで政治運動に取り組むジャンロベルト・カザレッジョとの出会いだった。カザレッジョは、ベッペの毒舌をインターネットで公開した。コメントが書き込まれ、主張は爆発的に拡散。ネット空間とリアルな劇場がつながり、運動はイタリア全土に広がった。
「ムハマド・ユヌスやジョセフ・スティグリッツら、ノーベル賞級の専門家がコメントを書き込んでくれるようになった。ブログや集会を通じて政策をまとめ100万人を超える署名と共に首相に提出したが、無視された。だったら自分たちの代表を議会に送り込むしかないと考えた」
職業政治家を信用しないベッペは、政党を名乗らず「運動」とした。09年10月、イタリアの守護聖人・聖フランチェスコの記念日に五つ星運動を立ち上げた。五つ星とは(1)発展(2)水資源(3)持続可能な都市交通(4)環境保全(5)インターネット社会を表す。候補者はネットを通じ公募し、党内の意見交換や投票は、独自に開発したソフトを通じて行う。
五つ星運動は、まずは身の回りの問題と関わりの深い地方議会で勝利した。13年には国政に挑戦し、いきなり第二党に躍進。ベルルスコーニ元首相に代表される政治の腐敗を苦々しく思っていた民衆の支持を得た。
18年3月の総選挙では公約として「市民所得」を掲げた。年金所得を含め、貧困ライン以下の人たちに月に最大780ユーロ(約10万円)を支給するというものだ。
第一党となり連立政権を樹立した今年1月、「市民所得」を盛り込んだ予算案が議会で可決された。全ての国民に一定額を保証する制度にはまだなっていないが、ベーシックインカムの第一段階と位置付けられている。
今回の講演で、「五つ星運動にとって譲れない政策は何か」と問われた
ベッペはこう語った。
「ベーシックインカムだ。導入されれば働き方や職業観が変わる。仕事と個人の生活の関係や、消費や財政などに革命的な変化をもたらす」
財政の悪化が心配されているが、失業に苦しむ若者らの消費が活気づいて経済は拡大すると五つ星は主張している。
ベーシックインカムと並んで目指しているのは直接民主主義だ。政治家は選挙の時だけ有権者に顔を向けるが、当選すると民意を無視しがちだ。代議制は有権者の意思が正しく反映されないとして、ネットなどを通じて重要課題は国民に判断を委ねる直接民主制こそが究極の姿だ、という。
五つ星運動ではネット投票で候補者を選び、当選しても任期は二期まで。議員の報酬は平均賃金の水準ににとどめる。余分に支給された歳費は、マイクロクレジット(庶民向け少額融資)の資金などに回される。
組閣にあたって直接民主主義担当大臣を設けた。担当相になったリカルド・フラカーロ議員は、以前こう指摘している。
「政治は素人に無理という人がいるが、イタリアの政治を腐敗させたのはプロの政治家だ。これほどまで誤りをつづけてきたのだから、市民に政治を返してもらおう。市民も判断を誤ることはある。しかし、反省し自己修正する力もある。市民の声に従い、経験を積みながら前進する。それが直接民主主義だ」
ベッペも今回の講演で、「市民には問題を解決する力がある。生活に関わる全ては政治と無縁ではない。身の回りの課題を考え、語り合うことから政治は始まる」と訴えた。
「日本では政治を語ることをはばかる空気がある」という質問が出ると、ベッペは手の持った飲料ボトルを示した。
「ペットボトルの水はガソリンより高価だ。なぜだ。地下からくみ上げて精製し、時には戦争まで起こして手に入れる石油より、ペットボトルの水が高いのはなぜだろう」
高価な水を買わず水道水が飲めればいいが、そうならないのはなぜか。生活に不可欠な水について、行政はどう取り組んでいるのか。そんな風に思いを巡らせれば政治は身近な話題になる、と語った。
(ジャーナリスト 山田厚史)
※週刊朝日オンライン限定記事
この政党を2009年に創設した一人が、毒舌のお笑い芸人ジョゼッペ・グリッロ(70)。ベッペの愛称で呼ばれるこの芸人は、既成政党への批判を繰り返し、政治運動に火をつけた。
今回、ベッペは市民団体「デモクラシー未来財団」の招きで来日。都内で4月15日に講演し、こう訴えた。
「デジタル社会は人々が連帯できる道具を用意した。プロの政治家でなく、普通の市民が声を上げることで革命は可能となった」
日本の政治改革が進まないことについては、「日本人は勤勉だが働きすぎでもの考えるゆとりまで失っているのではないか」、とユーモア交じりに一刺し。
「ストレスを打ち払うには笑うこと。笑いは力になる。どうしたら人は幸せになれるか。そこを起点に考えることが市民革命の出発点だ」
革命の突破口となる政策として、基礎的な所得を誰もが得られる「ベーシックインカム」を挙げた。
イタリアでは誰もが知り世界的にも影響力があるベッペだが、五つ星運動を躍進させるまでの道のりは波瀾万丈(はらんばんじょう)だった。
もともとは、社会風刺をネタに一人語りするのが得意で、レギュラー番組を持つ人気コメディアンだった。辛辣(しんらつ)な政権批判が放送局の上層部から危険視され、1990年代にTV・ラジオから追放された。そこで活躍の場を劇場に移す。
「干されたことが逆に私の価値を高めた。劇場でしか聞けない話に人々は足を運んでくれた。聴衆の反応を受け止めながら演ずると、皆が何に怒っているのか手に取るように分かった。怒りは笑いに昇華されると、すさまじいパワーが生まれると気付いた」
ベッペの話芸には、失業、汚職、環境、都市問題といった身の回りの問題がちりばめられている。ゲラゲラ笑いながら、聴衆は深刻な問題に目を向ける。あちこちから声が掛かり、集会がイタリア各地で開かれるようになった。
芸人から大衆運動家に変身するきっかけは、ITエンジニアで政治運動に取り組むジャンロベルト・カザレッジョとの出会いだった。カザレッジョは、ベッペの毒舌をインターネットで公開した。コメントが書き込まれ、主張は爆発的に拡散。ネット空間とリアルな劇場がつながり、運動はイタリア全土に広がった。
「ムハマド・ユヌスやジョセフ・スティグリッツら、ノーベル賞級の専門家がコメントを書き込んでくれるようになった。ブログや集会を通じて政策をまとめ100万人を超える署名と共に首相に提出したが、無視された。だったら自分たちの代表を議会に送り込むしかないと考えた」
職業政治家を信用しないベッペは、政党を名乗らず「運動」とした。09年10月、イタリアの守護聖人・聖フランチェスコの記念日に五つ星運動を立ち上げた。五つ星とは(1)発展(2)水資源(3)持続可能な都市交通(4)環境保全(5)インターネット社会を表す。候補者はネットを通じ公募し、党内の意見交換や投票は、独自に開発したソフトを通じて行う。
五つ星運動は、まずは身の回りの問題と関わりの深い地方議会で勝利した。13年には国政に挑戦し、いきなり第二党に躍進。ベルルスコーニ元首相に代表される政治の腐敗を苦々しく思っていた民衆の支持を得た。
18年3月の総選挙では公約として「市民所得」を掲げた。年金所得を含め、貧困ライン以下の人たちに月に最大780ユーロ(約10万円)を支給するというものだ。
第一党となり連立政権を樹立した今年1月、「市民所得」を盛り込んだ予算案が議会で可決された。全ての国民に一定額を保証する制度にはまだなっていないが、ベーシックインカムの第一段階と位置付けられている。
今回の講演で、「五つ星運動にとって譲れない政策は何か」と問われた
ベッペはこう語った。
「ベーシックインカムだ。導入されれば働き方や職業観が変わる。仕事と個人の生活の関係や、消費や財政などに革命的な変化をもたらす」
財政の悪化が心配されているが、失業に苦しむ若者らの消費が活気づいて経済は拡大すると五つ星は主張している。
ベーシックインカムと並んで目指しているのは直接民主主義だ。政治家は選挙の時だけ有権者に顔を向けるが、当選すると民意を無視しがちだ。代議制は有権者の意思が正しく反映されないとして、ネットなどを通じて重要課題は国民に判断を委ねる直接民主制こそが究極の姿だ、という。
五つ星運動ではネット投票で候補者を選び、当選しても任期は二期まで。議員の報酬は平均賃金の水準ににとどめる。余分に支給された歳費は、マイクロクレジット(庶民向け少額融資)の資金などに回される。
組閣にあたって直接民主主義担当大臣を設けた。担当相になったリカルド・フラカーロ議員は、以前こう指摘している。
「政治は素人に無理という人がいるが、イタリアの政治を腐敗させたのはプロの政治家だ。これほどまで誤りをつづけてきたのだから、市民に政治を返してもらおう。市民も判断を誤ることはある。しかし、反省し自己修正する力もある。市民の声に従い、経験を積みながら前進する。それが直接民主主義だ」
ベッペも今回の講演で、「市民には問題を解決する力がある。生活に関わる全ては政治と無縁ではない。身の回りの課題を考え、語り合うことから政治は始まる」と訴えた。
「日本では政治を語ることをはばかる空気がある」という質問が出ると、ベッペは手の持った飲料ボトルを示した。
「ペットボトルの水はガソリンより高価だ。なぜだ。地下からくみ上げて精製し、時には戦争まで起こして手に入れる石油より、ペットボトルの水が高いのはなぜだろう」
高価な水を買わず水道水が飲めればいいが、そうならないのはなぜか。生活に不可欠な水について、行政はどう取り組んでいるのか。そんな風に思いを巡らせれば政治は身近な話題になる、と語った。
(ジャーナリスト 山田厚史)
※週刊朝日オンライン限定記事
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イタリアのベーシックインカム導入の火付け役は人気コメディアンだったのだそうです。頼もしい本物の芸人さんですね。
テレビで政治を批判すると干されるのはどの国も同じようですね(笑)マスコミと政治と闇勢力(DS)が癒着している証拠です。
当ブログでは、イタリアのベーシックインカムについて導入まで記事をご紹介して参りました。それは、その記事を読んだ瞬間に直観が導くままに書いたものです。
ベーシックインカムが経済を活性化させるトリガーになることも。
さて五つ星では直接民主主義にも取り組んでいることも伝えてくれました。
『五つ星運動ではネット投票で候補者を選び、当選しても任期は二期まで。議員の報酬は平均賃金の水準ににとどめる。余分に支給された歳費は、マイクロクレジット(庶民向け少額融資)の資金などに回される。』
のだそうです。
議員報酬が平均賃金の水準ですよ(笑)
これって当たり前のことだと思います。
議員報酬が、報酬となる税金を払っている国民の平均賃金よりも高い。というのはまともな文明社会ではないですね。
私たちの社会のモラルがいかに低下しているかが分かります。
イタリアの五つ星運動は、わたしたちの狂った社会を正常に戻してくれるモデルになるでしょう。
ベッペさんは
『日本の政治改革が進まないことについては、「日本人は勤勉だが働きすぎでもの考えるゆとりまで失っているのではないか」、とユーモア交じりに一刺し。』
とあります。
最近気づいたのですが、日本人は考えるゆとりが欲しくないから忙しく働いている傾向が強いようです。
会社や企業の中枢にいる世代はゆとりは要らず、働いていないと不安なんです。だから政治改革が進まず、逆に政治に悪用され、一般庶民は低賃金で雇われ、益々働くことを余儀なくされるネガティブスパイラルに陥ってしまっている。
世界各国でグローバルベーシックインカムが試験的に導入され、いずれ日本でもこのシステムがもっと理解されるようになるでしょう。
ここで誤解がないように付け加えます。管理人はしばしば政権を批判するようなことを書きますが、それは批判ではなく、世界の政治が闇勢力であるイルミ=DSと癒着しているという真実を述べています。
その現実とどう向き合い修正していくか、それが地球という惑星に暮らす地球人として一人一人の課題を提供していると受け取っていただければ有り難いです。
さて、イルミのメンバーが不正に溜め込んだ富が分配はいつになるのでしょうか。この富の分配とベーシックインカム導入で、更に経済は活性化され相乗効果を発揮するでしょう。
ベッペさんの来日で、日本に新しい風が吹いてくれることを願って。
あるがままで