神 芳子の籐AMIKUMI

籐は自然素材のつる植物です。「軽さ」「柔らかさ」「強さ」
と、しなやかな籐はさまざまな造形を作り出すことができます。

バスケタリーの造形から見えるもの

2018-07-27 | 暮らし
aaca 2018.7 no.80
発行 一般社団法人 日本建築美術工芸協会

編み組みのテクニックを原理とした、主につる植物である籐の芯と皮を用いて線で構成した造形表現を“バスケタリーの造形”として発表しております。振り返りますと、長く続けている中でいくつか思うことがあります。
 一つめですが、初心の頃はデザインを重視した立体を考えることが、とりわけ挑戦であるかのように思い込み、複雑な造形などを数多く制作発表してきました。しかし、ここ数年はテクニックの原理に素材を活かして趣を重ねたシンプルで美しい造形を心掛けています。
 それは、籐との年月の中で編み組み原理の素晴らしさを再認識したからでもあります。活かすことに重点を置いたことで無駄な線が取り払われました。引き算を繰り返し、本当に必要な線を大切にした結果、シンプルで「美しい」と感じるフォルムが出現したのです。
 しかし、体内に温存された個性は表われる、また動かすこと。私は作品にはこの個性を表現することが最も大切と考えます。
 ここで二点の作品をご覧下さい。タイトル「起動」「守護shin」は生物を感じる動きのある大きな造形としました。編みのテクニックを素材の性格の中に活かすべく、編む方向なども自然の流れのままに委ねた作品です。
 二つめとして思うことは、六角形の不思議です。六角形をベースにした六つ目という組み方の特徴ですが、フォルムを小さくする時は角の数を減らします。六角形→五角形→四角形、或いは六角形→四角形というように。また、フォルムを大きくする時は、六角形→七角形にしたりと角の数を増やします。このように角の数を増減させることにより、全体のフォルムや一部が変化し、造形が出来上がります。
 写真「空気物」は、六角形をベースにこのようにして制作しました。
この作品は全体にアモルファスなデザインで不安定な感じもしますが、驚いたことに中心を2本の指で支えただけで、形が崩れることなくしっかりと自立しました。このことにより、10年程前から私の中で漠然としていた感じがはっきりとしたものになりました。
 「六角形は強い!」。実は、自然は巧みにこの構造を利用しています。
 「蜂の巣=ハニカム構造」などがそうです。また、人々の生活の中でも昔からの言い伝えや風習として、六角形で作られたかごを軒先に吊るすと魔除けになるとされていました。
長く制作を続けていますと、今回のように偶然「空気物」を制作したことにより、昔感じていた思いが蘇り、疑問が解消されたりすることがあります。改めて六角形と自然界の因果関係の不思議に魅了されています。そして、どうしてずっと心に引っかかっていたのかも自分の中で不思議でしたが、六つ目と歩んでいく自分の定めとも感じとりました。
 バスケタリーとは、かご作りのことです。一本の線から立体を繊維素材を用いて作り上げます。可塑性を持つものと異なり、元に戻ろうとする力があり、編み組むことにより柔らかな質感も鋭さも自在に生み出すことができます。また水を通し、風、空気を通す軽やかさを見ることができます。かご作りはテクニック・フォルム構造の面白さがあります。
 生活に役立つ機能性も兼ね備えています。歴史もとても古く、かつて農業が盛んだった日本に於いても、多くの編まれたかご、民具が活躍していました。
 私は自然素材にこだわって制作していますが、作家の価値観のままに、かご作りはどんな素材を使っても良いと思っています。世界中にかごの愛好家は多く、私もかごに魅了された、そんな一人でもあります。


守護Shin


起動





















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