あぽまに@らんだむ

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秘めない恋心(審神者&蜻蛉切)

2020年07月15日 | 刀剣乱舞関係

 

 

これは、審神者、東雲千尋(しののめちひろ)と蜻蛉切のお話です。

腐的要素が有りますので閲覧には充分注意してご覧下さい。

大丈夫な方のみ、下へスクロールしてご覧下さい。

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<秘めない恋心>


今回の近侍、平野藤四郎は主人である審神者、東雲千尋に目を遣った。
これで何度目の溜息であろう。
此処は、とある本丸の審神者の執務室。
千尋が書類の整理をすると言い出したので、保留中の案件を束にして作業机に先程置いた。
しかし、その書類は目を通される事無く、そのままになっている。
千尋の目は虚ろで、とろんと何処か遠くを観て心此処に非ずと言ったかのようだ。
ふぅと千尋はまた溜息を吐く。
「主様、何か悩み事でしょうか。手が止まっていらっしゃいます」
「えっ!あっ!いや、ううん、違うんだ。でもごめん、平野くん。・・書類そのままだね」
「はい、ご心配な事があれば、何なりと仰って下さい。僕で宜しければ承ります」
「有難う。でも、これは僕の問題だから・・・」
心許ない顔で千尋はふにゃりと笑ってみせた。
其処で平野は今日の遠征表を観た。
一番遠くの遠征部隊に蜻蛉切が入っている。これでは、帰還するのは明日の早朝だろう。
だからこその溜息なのだろう。これでは仕事になるまいと平野は天を仰いだ。
「主様、息抜きに庭でも散策に出られては如何でしょう。
考えても仕方の無い事ならば、気晴らしに身体を動かすのも手段の一つですよ」
平野には全てお見通しだったかと千尋は頬を朱に染める。人差し指同士を突き頷く。
「うん、そうしてみる。有難う、平野くん」


翌朝。
騒がしい音で千尋は審神者の居室で目を覚ました。
階下が何やら騒がしい。
そしてある事を思い出し、布団を跳ね除ける。
早朝と言えば、蜻蛉切達、第3部隊が遠征から戻って来る時間なのである。
誰か負傷したのでは無いか。それが蜻蛉切じゃ無いのか。
千尋は身を硬くした。
中傷、重傷は誰であってもおおごとである。
確かめたい。
蜻蛉切でないと願ってしまう自分の浅ましさを嫌悪しながらも、階下に降りて行く。
其処へ近侍である平野藤四郎が通り掛かる。沢山の札が抱えられているのに戦慄する。
「主様、今お知らせに伺おうと思っていた処です。
今回の遠征は苦戦を強いられ、部隊長のソハヤノツルキさんが中傷です。
短刀の小夜さんを護ってしんがりを務めた蜻蛉切さんも中傷です。
その他軽傷も数人居りまして、手入部屋が手一杯な処なんです」
「僕も手伝います」
「それには及びません。主。平野殿、私は後で大丈夫です。
小夜殿や次郎太刀殿を先に手入部屋へ入れてやって下さい」
「でも、蜻蛉切さんも中傷ですよ。折れないにしても傷は浅くはないでしょう」
千尋の後ろから傷だらけの身体をのっそりと出した蜻蛉切は平野に叱責される。
平野は現在近侍なのである。
刀剣男士を一振りも折らせない心情で任務に当たっている。
その為、物言いもいつもよりきつめになっているのだ。
千尋もそれに追随する。
「蜻蛉切さん。中傷なら手当を受けて下さい。中傷の刀剣の方が先で良い筈です」
「主、ご安心下さい。この蜻蛉切、中傷如きで参りはしません」
「それは分かって居ますが・・・」
「主様も押し切られないで下さい。
でも、蜻蛉切さんがそう仰るなら、小夜さんと次郎太刀さんを先に入って貰います。
後で必ず手入部屋に行って下さいね。約束ですよ」
「承知した」
「主様は此処で蜻蛉切さんが逃げないか見張っておいて下さい。
後の処理は僕が行いますので、ご安心下さい。では」
平野は軽く一礼すると、さっさと手入部屋の方へ戻って行ってしまった。
それを千尋と蜻蛉切は廊下で見送る。
暫くすると、千尋はその場に座り込んだ。慌てたのは蜻蛉切である。
「主!どうされたのですか。腹でも痛めましたか」
「良かった・・・」
「は」
「蜻蛉切さんが無事で良かった・・・」
「ふふ、中傷で帰還するなど、面目ない。お恥ずかしい限りです」
へにゃりと座り込んだ千尋の手を取り、蜻蛉切が微苦笑する。
「君はすぐ無茶をするから。でも、こうやって戻って来てくれて嬉しい」
「主。少し、中庭に出て話しませんか」
蜻蛉切は先に中庭に降りると主である千尋を導いた。


本丸には日本庭園風の中庭がある。
池には鯉も居て、当番で餌もやっている。誰かが本丸を大きくする際に希望したのだ。
その池には大きな石の橋が架かっていて、遠くから水の音が聞こえて来る。
蜻蛉切は未だ武装を解いては居なかったが、大きな兜を外し、その太い腕に抱えている。
しかし、徐に千尋は立ち止まる。池に架かる橋の前だった。
蜻蛉切はその時が来た事をそして知る。
「今回は無事で済んだけど、僕はこうやって毎回気を揉むんだろうな」
「蜻蛉切は刀剣男士です。それが務めです。許して下され」
千尋は泣きそうな表情で頷いた。そして蜻蛉切の方に向き直ると重い口を開いた。
「僕は君が好きだ。でも、皆と贔屓する訳にもいかない。
寧ろこれからも危険な時代に行けと命じるだろう。それは君を信頼しているからこそだ」
「分かっております」
「でも、もし君が折れてしまったら・・・」
「はい」
「そう思うと怖くて仕方無いんだ」
「主、いえ、千尋殿。あなた様を苦しめる事ですが、お伝えします。
私は槍です。闘う武器にございます。あなた様を護る為、歴史を護る為、顕現しました」
「はい」
「それでも、あなた様は私を好きと仰った」
「はい」
千尋の色の違う両目から涙が溢れ、色素の薄い頬に一筋零れる。夢のような情景だった。
「私とて永遠に存在するものではございません。
人が生き、死ぬように、私も折れる可能性が無い訳ではございません。
その覚悟をお互いに出来ないと私達は永遠に想い合う事は出来ませぬ」
「そうですね・・・。ごめんなさい。蜻蛉切さん。僕は浅はかでした」
「千尋殿、謝らないで下さい」
蜻蛉切の大きな掌が伸び、千尋の頬の涙を拭う。温かい指。これで本当に槍なのだろうか。
刀剣男士達は刀剣の付喪神、人として肉体を持ち、この世に顕現したのだ。
人として生き、想い、恋をして何が悪いと言うのだろうか。
覚悟をしていないからと言って恋をしていけないのだろうか。
「浅はかだと叱ってくれてもいい。それでも僕は君を、蜻蛉切さんを好きなんだ。
迷惑だと分かっている。困らせてるって分かってる。でも、好きでいさせて欲しい」
「千尋殿・・・」
蜻蛉切は一瞬絶句するが、視線を逸らし俯くと、胸に手を遣った。
「千尋殿にに告白を受ける度、好きだと言われる度、私の此処が温かくなるのです。
教えて下され、千尋殿。これが恋というものなのでしょうか」
「え・・・」
「この蜻蛉切。千尋殿に愛され、戸惑いはするものの、嬉しく無かった筈がございません」
千尋は涙に塗れた顔を上げる。蜻蛉切は微苦笑しつつ、ゆっくりと頷いた。
「後悔しても、もう遅いですぞ。千尋殿。
この蜻蛉切、最後の最後まで千尋殿のものでございます」
「ほ・・・本当に・・・?」
「はい。その代わり、千尋殿もこの蜻蛉切のものにございます。ご覚悟を」
千尋は両目の涙を力強く拭うと目許を真っ赤にしながら、こっくりと頷いた。
「はい。不束者ですが、宜しくお願い致します」
千尋は深々と頭を下げた。蜻蛉切はきょとんとそれを見遣る。
「・・・それは、嫁の挨拶ではないのですか」
「あ」
二人の笑い声が日本庭園に響き渡る。
それは二人が初めて心を繋いだ朝だった。


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その後、蜻蛉切は手入部屋へ直行させられ、千尋は執務室に缶詰にされましたとさ。
実際、蜻蛉切はずっと千尋を好きだったのだと思いますが、優しいので言えなかっただけ。
もし、自分が折れてしまったらと思うと言えなかったんですね。
此処から呼び方が、「千尋殿」「蜻蛉」と変わったので、すぐに皆にバレる。

 

 

 


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