どこからか「あなたのふる里はどこですか」とテレサ・テンの曲が流れている。
私の生まれ育った城下町は、今でも古い町並み、道路がそのまま残っている。
既に祖父母、父母、兄も鬼籍に入ってるが、帰郷し見覚えのある街角を目にすると
懐かしい時間が蘇り、思いがけない一瞬に出会える。
終の棲家と定めて、この地に三十数年、血縁者が無いことにも、目にする町名にも
慣れてきたが、まだまだ生まれ育った風景とは隔たりがある。
子供らの心に残るふる里はどのように見えるのだろうか。
私のふる里の心象と、子供らのふる里の風景とは違うんだ、と思い至った時、
少しずつ記憶から消え去っていく私のふる里! 私にとってのふる里が
この上も無く愛おしく思われた。