若い頃、当時所属していた劇団の長期海外公演が終わり、帰国する途中にトランジットで寄ったカイロ国際空港でのこと。
空港内のベンチに座って待機していると、近くに佇んでいる1人の女性の姿がふと目に入った。
ブランケットのようなもので頭から体全体をすっぽり覆っている。
それから数時間、ワタシは空港内を歩き回ったり、食事をしたりして過ごした。
ときおり同じ場所に戻ると、相変わらずその女性は同じ体勢でじっと佇んでいる。
寝ているのか起きているのかピクリともしない。
空港内のスピーカーから大音量でコーラン(アザーン?)が流れると、ほとんどの人が地べたに平伏してお祈りをするが、その女性は微動だにしない ・・・。
結局、飛行機のトラブル(?)で、その日のフライトはなくなった。
航空会社が用意したバスに乗せられて、カイロ市内のホテルに一泊。
翌日は半日観光(ピラミッドやスフィンクスなど)をさせられて(笑)空港へ。
前日と同じ空港ロビーに行くと、なんとそこにはまだ彼女の姿が⁉️
察するところ、24時間以上はこのままの状態ということのようだ。
それからまた数時間。
彼女が動いた姿を見たのは、バーカウンターに行ってオレンジジュースを買ってきて、飲んだときの1度だけ。
どうにも気になったので、近くに座っていたエジプト人風のおじさんに聞くと、彼女は戦場に行っている夫の帰りをずっと待っているというのだ。
ワタシは帰りの飛行機の中で涙が止まらなかった。。。
いま起きているロシアのウクライナへの軍事侵攻。
ロシア軍はウクライナの軍事施設だけでなく、一般人の住む街にもミサイル攻撃を加えている。
そのため難を逃れるために、国境を越え隣国へと退避する多くの人々。
だが、祖国を守るために徹底抗戦を決めたウクライナ政府は、18歳から60歳の男性市民に対してウクライナからの出国を全面的に禁止している。軍に招集するためと思われる。
このニュースを見て、かつての記憶がよみがえったというわけだ。
今回のロシアの軍事行動によって、失われるものはあっても、果たして得るものはあるのだろうか???