
入山日 2012年8月19日 晴、曇り 単独 (縦走路、あと1時間以内の所から見える錫ケ岳)
菅沼から錫ケ岳への往復の工程は非常に長いものである。先人のネット記録などを見ても避難小屋から白檜山へ直登するショートカットルートを使っても12時間から13時間かかっているが、多くのかたは日帰りをされているようだ、今までの自分の山に対する常識で考えれば、何の先入観もなしで錫ヶ岳に行けと言われたら、避難小屋泊かテント幕営をすると思う。よって、この日1日で錫ケ岳をやるのにあたっては、かなり大きな不安があった。歩きとおせるか。(こんな長い工程を1日というのはかつてないような気がする)戻りの白檜山への登りなどでへばったらどうしよう。朝4時にスタートしたとしても戻りは日没近い。
夏休み中幸いなことに隔日で山に行っている、体調は万全、登山に順化している、登るだけなら苦にならないだろう。とにかく戻りの時間が遅くなるのは避けたかったので、歩き始めをAM2時ごろとすることに決める。前日午後8時ころ就寝、3時間半の睡眠をとり出発した。
2:20 菅沼駐車場をスタート、自分以外の車は2台ほどあった。真っ暗な中、歩行開始、このルート、五色避難小屋まではかつて10回以上歩いている。ヘデンを点け歩くが、やはり昼間とは勝手が違う、ルートがわかりずらくなる。3方向を確認しながら進むので明るい時の歩行よりかなり遅くなる。気温は15度ほど歩いていないと寒い、空は漆黒、満点の星空が輝いている。迷うようで怖い、テープの目印が本当に助けになった。弥陀ヶ池まで暗闇の中の歩行でコースタイムが想定より25分はオーバーしている。知らないルートでは絶対夜間歩行は無理だと思った。弥陀ケ池あたりで空が白みだす、弥陀ケ池、五色山分岐の乗り越しを経て下り五色沼へ。五色沼周辺では鹿の鳴き声が飛び交う、ピイーという声が5秒10秒間隔で続く、そのうち右側でも左でも後方でも鹿の声が、囲まれている感じだった。避難小屋から白根山方面に向かい登り始め前の広場から一般ルートと別れ、左に折れる。砂礫のくぼ地2箇所を2段階緩やかに下り2つめのくぼ地から西の県境尾根鞍部に乗る。 (写真下) くぼ地を県境尾根鞍部辺りから振り返る、急激にガスが巻いてきた。
(写真下) 県境尾根鞍部から南、白檜山方面、この斜面の上部がまず目指す白檜山。最上部はガスで見えない。・・・
尾根鞍部から、急登開始。最初一番登りやすそうな笹の沢状の斜面に取り付くが、傾斜がきつくなかなか進めない。少しの間がんばるが沢状部分での登りをあきらめる、左側の尾根状部分に避難、しばらく上に進もうとするが、鹿道が微妙、それと登れる感覚などがしっくり来ない。沢状部分の右側の尾根状箇所にトラバース、こちらの尾根状はしっくり来る。急なのは変わらないが、何とか登れる感がある、こちらのルートで進んでみる。鹿道がわりと明瞭、幾重にもあるそれの最適なものを幹をつかみよじ登りながら追っていく。 (写真下)白檜山への急な登り・・・
(写真下) 白檜山への登り、急騰が終わると比較的なだらかな笹交じりのヤブとなる。ただし、今度はシャクナゲが行く手を塞ぎだす。ルーファンしながら高みを目指す。シャクナゲやぶが一番ひどくなった頃、シャクナゲやぶを強行突破、ひょっこり白檜山頂上らしき部分へ飛び出す、GPSもそれを示していた。避難小屋から1時間35分のやぶルート、しかも急登のおまけ付き、通常であれば、これで白根隠山でも周回して下山でも十分なルートの気がした。しかし今回ここは単なる通過点にすぎない。白檜までで4時間超、暗闇での2時間歩行で時間がかかったが、まず想定以内の時間経過だ。そこからは南西に笹の尾根を辿る。
(写真下) 白檜山頂からの白根山・・・
(写真下) 白檜山周辺の稜線、白檜山から南、南西方向に続くのは最初は笹の尾根だ・・・
(写真下) 白檜山から1時間経過あたりでの北東にそびえる白根山・・・
(写真下) 白檜山から1時間30分経過したあたりからの錫ヶ岳・・・
白檜山から錫ヶ岳の稜線は長い、途中おおまかに見ると4個のピークを超えて行く、その都度の上り下り。最初のピークの下りくらいまでは笹の尾根をなだらかに下りがメインの感じ、笹原は最初明瞭だが、次第に薄くなり、遂には鹿道の程度の悪いものになってしまった。どこかで最適ルートを踏み外したか、当初、ショートカットルート意外は、道不明瞭のやぶ道ルーファンは想定していなかった為、少々面食らう。尾根を忠実に辿りながら、明瞭なルートに復帰。こんな事が2度ほど。
最初のピークを過ぎると笹原は少なくなり、樹林帯のルートとなる、シャクナゲとコメツガ?などの混合ヤブだ。2つめ、3つめのピークを過ぎるたびぐんぐん下る、進むのは嬉しいことだが、このルート下るという事は復路では登りになる事が頭によぎる。樹林帯のルートになり、道は明瞭になったり、樹林のプチ激ヤブ(どうしようもないほどではない)になったり。マークが多い為救われるが、錫への往路で進路を失い右往左往は2,3度。やぶ道ルーファンや道迷い連発はさほど想定していなかった為、ここにきてかなり面食らいだす。帰りも同じくらい道探しで悩むのかな、憂鬱になる、復路での道迷いが一番怖い、精神的にきつい状態の一歩手前くらいか。とにかく尾根を忠実に辿る、尾根が不明瞭部分はマークをよく探して進む、とにかく一番明瞭な踏跡をどんなシャクナゲやぶでも進む事、などがポイントとして判りだす。 (写真下)白檜山から2時間25分経過の登り、樹林間の急登・・・
(写真下) ヤブのひどい場所、この中央を真っすぐ進むのがルート・・・
(写真下)錫、山頂直下の笹の急斜面、踏跡はうっすらだがよく判る・・・
(写真下)急登を終え頂上かと思えばまだ先に高みが・・・、あそこも頂上でなかったら泣いちゃうね、とか思いながら歩いた。
(写真下) 上写真の”あそこ”がピークだった、道がなだらかになりふいに山名板の脇にたどり着く。下の絵の向こうから登って来た。白檜山から2時間45分、歩き出しから7時間もかかった。高薙、燕巣山と今年の目標をやってきて今回の錫ヶ岳も登頂、予想より早い時期に登れた。ここまでの工程が長かったので嬉しい、一人ガッツポーズはでなかったと思うが、大きい歓声をあげたと思う。今体が登山に順化しているので、登り自体への疲労はあまりない。常時17度以下だったのも幸いだった。
だれもいない錫ヶ岳頂上、ここまで誰にも会わない。鹿は何群れか見た。まず、靴の中の水をかき出し、靴下を絞る、びっしょり、白檜周辺からの笹の露でズボンと靴中がびしょぬれになっている。頂上で20分ほど休んでいると自分と同じ方向から男性単独のおじさんが登ってこられた。高崎から来たとの事、コースタイムなどを聞くと自分よりつわものだった。この先復路も長いので30分いた頂上と高崎さんに別れを告げ復路開始、9:50 (写真下) 頂上から中禅寺湖・・・
(写真下) 錫直下からの白檜山、その先にちょっとみえるのは白根隠山か。あんな遠くまで登って行くのかと思う。我ながらよく来たなというのがその時の実感。
心配だった下りのルーファンは問題なし、錫頂上直下で1度道をはずして2分くらいロスした程度。白檜山のかなり手前で高崎さんに追いつかれる、そこからは私としては珍しく単独ではなく、菅沼までゆっくり高崎さんと歩いた。白檜山から来たショートカットを行こうとも思ったが、下りで午後の時間帯に道迷いも気持ち悪いと思い、高崎さんと白根隠への安全ルートを選択。これが大正解、白根隠山は一度頂上を踏んでいるが白檜方面の尾根は始めて。今回の休み行けなかったアルプスの代役を見事果たしてくれているではないか。(写真下)白檜山、白根隠山間の稜線から白根隠山を望む、すごく特異な山容だ・・・
白檜を過ぎたあたりの笹の稜線で前を行く高崎さんが熊を発見、自分も見た。30メートルほど先に真っ黒のこぐまが私達の方を一瞬振り返り稜線の下方に逃げていった。その為すぐ見えなくなってしまったが・・・ぬいぐるみのようにかわいいこぐま、やせて漆黒、目だけ白だった。写真は撮れず、残念・・・(母ぐまは稜線の下方にいたのか、出くわさずに幸いだった)
その後白根隠山を経て、五色沼避難小屋へ(長休止して)菅沼に下った。弥陀ケ池から菅沼までの下りは完全にガス欠状態、ヘロヘロになりながら必死にもう少しにもう少しと言い聞かせ下る。昨日の睡眠3時間のみが効いてきたか。高崎さんもかなり疲労しているようだ。100名山はあと筑波を残すのみ(わざと残しているらしい)、今日の錫をやって群馬100名山も景鶴山を残すのみとなったと言っていた。自分より一回り以上上の先輩、自分もそのように元気でやり続けられるであろうか。菅沼駐車場にたどり着く、残っている車は2、3台。もう午後4時を過ぎている、休憩全て含め14時間経過している。終わったーという感じ、疲れすぎて感情がわいてこない。明日以降、いろいろな感情がわいてくるだろう。今回はまだ感情の整理がつかない気がするが、とにかくこの山は今の自分にとってやらなければ済まない山であったのは確かであった気がした。
(写真下) 白根隠山直下、白根隠への稜線を行く高崎さん・・・
コース 菅沼p 2:20・・・ 五色沼避難小屋 5:03・・・ 白檜山 6:35 ・・・ 錫ヶ岳 9:18~9:50 ・・・ 白檜山(20分程エネ補給) ・・・ 白根隠山 13:00~13:15・・・五色避難小屋 14:00(15分休み)・・・ 五色沼 ・・・弥陀ケ池 14:50 ・・・ 菅沼p 16:05
毎回、感じますが、何か壮絶な歩きをされているようで、今回は特に極めつけと申しますか……。
ヘッデン歩きもさることながら、避難小屋からの最初の歩きにつまづかれたようですね。ショートカットしようとすると、どうしても、どこかに無理が出てくるものです。
同じコースを6年前の真夏に歩きましたが、確かに長かったことだけは覚えています。そしてジリジリと暑かった。あの時は、4時半に歩きだし、15痔半に戻ってきましたが、ショーツカットもせず、往復ともに同じ道を辿りました。そんな体力はもうありません。また歩けと言われたら、きっとお断わりするでしょうね。
先日のお歩きの記事とともに感じたのは、日中の暑さがさほど高温に至らないようだということです。やはり、日光の山も秋の気配なのですね。安心しました。久しぶりに長距離歩きをしてみたくなりましたよ。
湖上山など新たな強敵も出現してきましたし、少し体を休めまた地形図でも眺めていきたいと思っています。たそがれさんも是非日光の山でロングウォークしてください。お互い秋に向けがんばりましょう。
後でまたゆっくりと拝見しコメントさせて頂きます。
記事もアップされたところで登頂の感慨が湧いてきたのではないでしょうか。
自分らも錫ヶ岳登頂時は大きな満足感が有りました。
記事を読んでいて当時の事が思い出されて自分たちが登っているかのような気持ちで読ませていただきました。
復路の白檜への登り返しで太陽に照らされバテバテになったつらい思い出があります。
最後の弥陀ケ池から菅沼までの下りのつらさはほんとよくわかりますよ。
お疲れ様でした。
私の山のレポなど、間抜けなドタバタ劇のようですが、今後も無理せず続けるつもりですので時折ご訪問ください。やおきさんの山行の近況なども教えていただきたいですね。また、山中でお会いしたいです。
それにしても、あの長い工程とうるさいヤブ、しかも白檜へのショートカットヤブ急登までこなしてしまうおK3さんは凄いですね。女性であれをこなすというのは驚きです。私などは、2日後の今も足に疲労感が残っています。(苦笑)
目下、彼のPCの調子が悪いようで代わりに私がブログを覗いて彼にコピーしてあげようとしています。
私は登山初心者でして、7月の末に4つ目の100名山として彼に奥白根山を案内して貰ったところです。
「高崎さん」はタフマンで次の日も元気でテニスの練習に来られていました。
お互い元気に登山を続けられ、またどこかの山でお会いできれば楽しいですね・・お疲れさまでした。
高崎さんですが、翌日テニスの練習ですか?すごいシニアですね、とても真似できません。「高崎さんの友」さんもこれからも元気に山に挑戦してください。どこかの山でお会いしたら本当に楽しいでしょうね。時々、このブログも覗いてやってください。
また、ちがった姿の錫ケ岳を見れるのでしょうか、楽しみが増えました。