https://www.youtube.com/watch?v=NkXwmb2TE4w
(2012年に作製して使っていなかったので、今使います)
3月8日、その男は相棒と共に海を渡った。
朝六時半に自宅をでて、坂出駅に到着したのは9時前。
自称“さぬきニスト”≒うどんだけではないうどん県のナビゲーター、と形容しておこう。
今回もうどんメイン? -
『まぁ、半分はそうですね(笑)。去年はマラソン、トレラン、自転車、登山と盛り沢山でしたが、今年は一つだけに絞ります。』
南へ進路をとって、サイクルコンピューターが65kmを上回る直前、最初の一杯にありついた。
まんのう町に位置する、のれんも看板もない「三嶋製麺所」。凡人が頼んだのは冷たいの(小)
『釜玉のような生醤油のような、どちらとも判別できませんね。ただ、味はハッキリしてる。シンプルに美味い!!』
コシと太さのバランスが絶妙だと彼は¥120を支払ってお店を後にした。
2軒目についたのは、それから30分後。彼の高度計が340mを示した時だった。時計の針は11時を回っている。
『やっとこれました‘谷川米穀店’。4天王の一軒で、噂にきく味にまだありつけていなかったので楽しみですね♪』
ニストらしからぬ、温かい(大)!?をオーダー。凡人の顔が引きつった。
(大)を受け取って醤油をかけたつもりが、酢をかけてしまったらしい。凡人の箸が止まった。。。
『!!!!、これは、新たな発見です!酢を入れるとよりうどんの味が引き締まって、喉ごしがいい』
「土曜は蕎麦も注文できるよ。」と自分の前に並んだ同じロード乗りの男性が教えてくれた。
『蕎麦好きの人は頼まない方がいいですね。』と言葉を濁す凡人の顔はやっぱり苦笑いがにじみ出た。
地元のローダーさんとうどんと自転車の情報交換。こんな些細な出会いがうれしいのだと、凡人は言う。
徳島との県境へ東南東へと高度を上げていく凡人と相棒。そんなところにうどん屋はないだろう、と。
『こっからメインイベント、腹が減ってはヒルクライムはできず!!でしょ。』
600mを越えてからも点在する集落に驚きながら、青い空に映える鉄塔を見つめた。あそこがゴールらしい、まだ400mもあるが彼の顔は生気に満ちている。
800mを越えて凍結した雪が進路を遮ったところで立ちこけ。
『脚はまだ売り切れてないですが、凍結した路面に乗っかるつもりはないです。今日はドローですね』
と、ビンディングを装着せず、降りたり乗ったりしながら峠を目指した。
自転車のゴールに着いたら、靴を履き替え、ピークを目指す。
1000m越える竜王峠は流石に寒い、14時現在の気温は2℃。太陽光が当たらなければ雪上と変わらない。
ピークの位置を勘違いしてたらしく、ガリガリの舗装路に鞭打ちのトラウマを感じつつ、再び相棒と奥にある展望台を目指した。
『南の空は白く濁って、お目当ての仮装登山(笑)の山みえませんね。ですが、目的は‘どれだけ脚が仕上がっているか’のチャレンジだったので悪くはないですよ。四国山地ライドの前哨戦、それにつきます。』
『北の空は青いのにな・・・』と呟く凡人は上々の脚の仕上がりよりも、無念の感が大きかったようだ。
竜王山を後にして、北北西の進路の先にあるのは3軒目。
『ここは雑誌にもテレビにも載らないお店なんです、基本取材お断りのお店。だけど、WEB上にはあがってるんですが。。。』
『気難しい大将が作る麺とダシとてんぷらは三位一体の完成度です。3つの素材の化学反応が舌をうならせる、ガチでおいしい!!』
三度目の再訪に興奮と満足を味わいながら、凡人はこの日の宿に向かった。
善通寺に在するゲストハウス「ミカサスカサ」
http://www.micasasucasa.jp/
去年の坂出天狗マラソンの時に続いて2回目だという凡人は、
『ゲストハウスで出会う旅人とオーナーさんとうどんの話をするのが好きなんですよ』と。だが、リトル凡人に聞いてみると
“ここの女性オーナーさんは凡人のタイプだと思うよ”、、どうやらさぬきニストには色んな想いがあるようだ。
その日の宿泊者は凡人と東京から来た27、8歳の青年と二人だけ。彼は12月からお遍路巡りをしているという。
前日は雲辺寺の700mのところでテントを張ってビバークした青年は、東京から北海道までGIOSのロードバイクで旅をしたこともあり、凡人が親近感を持ったのは言うまでもない。
『明日は?』と凡人が聞くと、「7:40の電車で金比羅宮に行きます」と、『自分も早朝、ご来光を見にいくよ』と返すと、少しばかり会話を楽しんだら布団に入った。その日のサイクルコンピューターに刻まれた126kmのDISTANCEは心地良い安眠を誘った。
9日、5:00。携帯のアラームが鳴ったが、凡人はすぐに目を覚ませなかった。どうやら思った以上に体は疲れているようだった。
凡人の体内時計が目を覚ましたのは、8時過ぎ。まだ、青年も起きたばかりのようだ。「旅人はみな休息に飢えているのか?」それは彼ら自身にしかわからない。
9時前、オーナーさんに挨拶できなく、チェックアウトする凡人になにか寂しさのようなものを感じた。
金比羅の方向とは真逆の方向に少しだけペダルを進めると、着いたのは知る人ぞ知る「長田 in 香の香」。
『朝うどんは香の香の十八番。ダシもうどんも言うことありません!気温の上がる昼に食べるより、この季節だと朝に訪れるのが賢明ですよ。』と何かに勝ち誇ったように、開店30分後の行列を横目でちらりと視線を向けて店をでた。
1368段に臨む腹ごしらえは整ったようだ。琴平駅に自転車を置いて登り始めて、御本宮を越えた時、青年に会った。
『やっぱり、会うと思ったよ。これから帰るの?』
「はい、宿に荷物をとりに行っていくつか寄って帰ります。お元気で。」
『気をつけて、旅の安全を祈るよ。』
前日、「これで東京に一旦帰る」と言っていた青年の旅の目的を凡人が聞いてみたら、『返答に困っていた』と言う。人それぞれ、色んな事情があって旅をするのか、それは本人のみ知るところでしょう。
ただ、それだけの会話。一生のうちのたった少しの時間。
『70歳まで生きるとして(自分は30代半ば)、こんな清清しい時を後いくつ経験できるのかと考えると、“一期一会”の意味を感じます。』
感慨深い感情を1386段、奥の院まで持ってあがった凡人。空はPM2.5の影響で白く濁っていた。
昨年に3回膝を捻挫して‘山の脚力’劣化を懸念していた凡人だが、それは心配ではなかったようだ。
『ここまで来れたという脚力の回復という想いはまったくありません。ここに来た理由は一つ、金比羅宮が海上交通の神様だからです!カヤックで海をフィールドとするものは山と同じく、自然の力を甘く見ていません!!自分は少しでも神に縋る気持ちを持つことが小さな不安を取り除けるじゃないかっていう‘小心者’ですからね。』
今回の旅の目的を2つ達成した凡人には、“もううどんのことしか頭になかった。”
2軒目はタイプの(?)女性オーナーさんに教えてもらった「とみや」という洒落てもなく、年季が入っているわけでもない普通のセルフ店。
『げっ!?、思ってた以上におろしぶっかけ上手いがな♪安定感のない山下うどんのぶっかけよりいいです。』
とみやを足早に出た凡人は、閉店間際の3軒目「喰うかい」へ丸亀港までやってきた。
鶏天ぶっかけ(小)をオーダーした凡人の次のお客でうどん玉切れ。それも陽の感情が増幅させたのか、
『麺はうまい、ダシは大味。それを補うのはこのジューシーな鶏天!!店構えもいい意味で汚らしく、一般店やセルフ店、製麺所には出せん良さがあります。それにこのボリュームで¥380ってのが財布に優しい。鶏天は中々うどん県以外では食べることができないので、ここに来ると求めてしまいますね。』
『まだ行ける』という凡人は宇多津にやってきた、もちろん4軒目へ行くために。
時間は14時前「香川にはゴールデンタイムは二つある、一つはテレビの、もう一つはうどんの。後者は11時から15時」だと凡人は自負している。そのゴールデンタイムに仕事をできないニストは偽者だと、凡人は言った。
行列のできるうどん店「岡泉」を写真に収めて、行列を高見の見物のように見渡し、すぐ近くの神社へ入っていった。
『ここが4軒目です、神社の神主さんがうどんを打つ「うぶしな」。ちなみに先ほどの行列の店で修行された腕は一点の曇りもありません。自分のランキング第3位です。岡泉も確かにうまい、でもこの情報を知っているとこちらに足を運びたくなります(笑)。』
ひやかけをオーダーした凡人の目は、舌は、感情は感無量に満ちていた。
『されど、うどん。これぞ、うどん県。この地で研鑽された粉とダシと水で作るシンプル且つ、奥の深い主菜。また、今回も勉強させてもらいました。』
電車の時間まで少しあるそうだ。海を見に行ってみる。
凡人がいつも見慣れたさざなみが変速のリズムでかわいくコンクリートに打ち付ける。
『雪が解けたら、こいつと太平洋に行きます、瀬戸内海から。』
https://www.youtube.com/watch?v=d3yhp-dZDdI
(※去年作製したものなので、内容違いますが)
凡人の視線は南を見ていた。
石鎚山系の春は凡人に試練をもたらすのか、試練をもたらすのか。
寒風山だけが知っている
※長文読んでいただきご苦労様でした。