ケアプラン...

あなたはいったい何を見ているの？
あなたが私を見ているとき、あなたは頭を働かせているのかしら・・・。
気難しい年老いたおばあさん。
それほど賢くもなく、とりえがあるわけでもない。
老眼で食べ物はポタポタ落とし、あなたが大声で
「もっときれいに食べなさい」と言っても、そのようにできないし、
あなたのすることも気づかずに、
靴や靴下をなくしてしまうのは、いつものこと。
食事も入浴も私が好き嫌いかは関係なく
あなたの意のままに、長い一日を過ごしている。

あなたはそんなふうに私のことを考えているのではないですか？
私をそんな風に見ているのではないですか。
そうだとしたら、
あなたは私を見ていないのです。
もっとよく、目を開いて、ここにだまって座り、
あなたの言いつけどおりに、あなたの意のままに食べてる私がだれだか、教えてあげましょう。

十歳のとき、両親や兄弟姉妹に愛情いっぱいに注がれながら暮らしてる少女です。
十六歳のとき、愛するひとにめぐり合えることを夢見ています。
二十歳花嫁になり、
二十五歳、安らぎと楽しい家庭を必要とする赤ちゃんが生まれました。
四十歳、子供たちは大きくなり、巣立っていきます。
　しかし、夫が私のかたわらについて見守ってくれるので、悲しくはありません。
六十歳、小さな赤ん坊たちが、私のひざの上で遊んでいます。
夫と私は子どもたちと過ごした楽しかった日々を味わっています。
そして夫の死、
希望のない日々が続きます。

将来のことを考えると、恐ろしさでふるえおののきます。
私の子供たちは自分たちのことで忙しく、私はたった一人で、過ぎ去った日々の楽しかった思い出や、
　愛に包まれていたときのことを思い起しています。
私はもう年をとりました。
自然は残酷です・・・。
老いたものは役たたずと、あざ笑い、からかっているようです。
体はボロボロになり、栄光も気力もなく、以前の暖かい心は、まるで石のようになってしまいました。

でもね、この老いたしかばねの奥にも
まだ小さな少女がすんでいるのんです。
そして、このうちひしがれた私の心もときめくことがあるのです。
楽しかったことを思い起こし・・・・・・
愛することのできる人生を
生きているのです。

人生は本当に短い、
ほんとうに早く過ぎ去ります。
そして今、
私は永遠に続くものはない、というありのままの真実を、受け入れてます。

ですから、
もっとよく目を開いて、私のことをよく見てください。
気難しい年老いたおばあさんではなく、
もっとよく心を寄せて
この私をみてください。


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これは、とある外国のナーシングホームで逝去された方の
デスクから見つかった手紙です
老健は在宅復帰にばかり目を向けることのではなく
個々の人生にもう少し目を向けても良いのかも知れません


ちゃんと見ていますか？